DB079
適格合併や、内国法人との間に完全支配関係がある子会社が解散した場合(以下、「適格合併等」といいます)は、
被合併法人等の「繰越欠損金」が引き継げますが、さまざまな制限があります。

今回は、この「繰越欠損金」にスポットを当ててまとめます。


1.被合併法人から引き継ぐ繰越欠損金の制限


(1)原則

適格合併等のうち、共同事業再編については、制限なく「繰越青色欠損金」の引継ぎが認められます。

一方、グループ内での適格合併等の場合は、その支配関係(※1)が生じて5 年内の場合は、一定の金額(※2)の繰越欠損金引継ぎができません。
グループ内再編は比較的容易に可能なので、無条件に引継ぎを容認すると、「税金逃れを後押し」してしまうからですね。

(※1) 支配関係とは
  • いずれか一方の法人が、他方の法人の発行済株式の総数等50%超を直接(or間接)保有する関係
  • 二つの法人が同一の者によって、各々法人の発行済株式の総数等の50%超を直接(or間接)に保有される関係。
(※2) 一定の金額とは?
  • 支配関係が生じた日の属する事業年度前に生じた欠損金額
  • 支配関係事業年度以降の欠損金額のうち、特定資産の譲渡等損失に相当する金額

なお、被合併法人の設立から継続して支配している場合や、合併法人の設立から支配している場合は、5年内の縛りはありません。


(2)例外1(みなし共同要件を満たす場合)

支配関係成立後5 年未満の場合でも、以下の要件を満たす場合は、制限なく繰越欠損金の引継ぎが可能です。
共同事業要件と近いのですが、微妙に違うので「みなし共同事業要件」と呼ばれています。

①から③、もしくは①および④を満たせばOKです。
「もしくは」なので、「規模要件」を満たさない場合でも、「特定役員引継要件」を満たせば、適用できるんですね。

事業関連性要件 被合併法人の主要事業と合併法人の従前事業の相互関連性
規模要件 被合併法人と合併法人の規模(売上額、従業者数等)が概ね5倍を超えない
規模継続要件 以下両方とも満たす場合

  • 合併事業と被合併事業が、支配関係発生時~合併の時まで継続
  • 支配関係発生時、合併時両時点での被合併事業の規模
    (売上額、従業者数等)の割合がおおむね2 倍を超えない
経営参画要件 被合併法人と合併法人の特定役員(常務取締役以上)が、合併後に合併法人の「特定役員」となることが見込まれている
各社から1 人ずつ以上)。


(3)例外2 設立から支配しているケース

「被合併法人の設立時」や、「合併法人等(被合併法人の株主)の設立時」から継続的に支配している場合は、繰越欠損金引継ぎの制限はありません。

(4)例外3(みなし共同要件を満たさなくても制限が課せられないケース)

「みなし共同事業要件」を満たしていなくても

  • 支配関係発生事業年度の前事業年度に、
  • 被合併法人の「含み益」(時価純資産-簿価純資産)が「繰越欠損金額」を上回るとき

は、「繰越欠損金全額」の引継ぎが可能です。
(逆に、「繰越欠損金額」が「含み益」を上回るときは、「含み益の範囲」で繰越欠損金額の引継ぎ可能)

なお、この適用を受けるためには、確定申告書に明細等の添付が必要です。


(5)みなし共同要件を充足するための実務的な判断基準

事業関連性要件 合併の「経済的合理性(シナジー効果等)」につき明確な説明ができれば、充足は可能です。
規模要件 売上金額、従業員数、資本金、またはこれらに準ずるものです。
どれか1つでも5 倍以内であればよいので、まずは資本金で判断するのが一般的です(他より簡単なので)。
全般 要件を満たすだけで経済的合理性がない場合は、「租税回避防止規定」が適用される可能性がありますので、注意です。

(平成28年10月21日追記)~最近の判例~

平成28年2月29日「平成27年(行ヒ第75号)」

「特定役員引継要件」を満たしていても、「特定役員」の実質を備えていない場合は、
「行為否認」の規定により、
「繰越欠損金」の引継が認められない!という最高裁の判例が、最近出ました。

この事例は、簡単にいうと・・・
組織再編全体として見た場合、繰越欠損金を引き継ぐ(=法人税の節税を図る)ために、
「特定役員」を形式的に備えたんじゃないの?ということで、否認されたんですね。
ちゃんと、実質も備えてないと、税務上も認めてもらえないので注意しましょう!


2.合併法人等の繰越欠損金の制限(元々保有の欠損金の制限)

合併法人の繰越欠損金の利用についても、「1.被合併法人~」と同様の制約が課せられます。
すなわち、グループ内での適格組織再編成等(※)の場合は、

  • その支配関係(※1)が生じて5 年超経過していないと、
  • 一定の金額(※2)の欠損金額はないものとされ、繰越控除ができません。

(共同事業再編は、何の制約なく「繰越欠損金」利用OK)

また、みなし共同事業要件を満たす場合(例外1)や、満たさない場合の含み益の規定(例外2)も、実質的に「1.被合併法人~」と同様にあります。

(※)合併法人側の規定は、適格組織再編成等(適格合併、非適格合併でグループ法人税制適用対象、適格分割、適格現物出資、適格現物分配)
の場合に適用がある点、注意です。


3.その他


(1)適格会社分割の場合は、「繰越欠損金」を引き継げるの?

原則として、「繰越欠損金」は引き継げません。
「分割事業の繰越欠損金金額」を算出することが、難しいからなんでしょうね。
(合併類似適格分割型分割の場合はOK)


(2)非適格合併の場合は?

被合併法人からの欠損金の引継 認められていません
合併法人の欠損金の制限 グループ法人税制適用対象の場合だけ、一定の制限があります。


4.例題

  • クレア社(合併会社・12 月決算)は、平成28 年4 月1 日にビズ社(被合併会社・12 月決算)を適格合併した。
  • 上記、適格合併は、みなし共同要件をみたさない。
  • ビズ社は、クレア社が平成26 年4 月1 日に全株を取得した子会社。
  • 両社の繰越欠損金の状況は以下の通り。

 

発生年度 繰越欠損金額
クレア社 平成25 年12 月期 500
平成27 年12 月期 300
ビズ社 平成25 年12 月期 100
平成26 年12 月期 200

※クレア社の、平成27 年12 月期の繰越欠損金300 は、「平成24 年12 月期に取得した土地を譲渡した結果」生じた欠損金である。

繰越欠損金の引継ぎ繰越控除の利用可否は?

グループ①

(解説)

例題の適格合併は、みなし共同要件をみたさないので、各社の繰越欠損金は、以下の制約を受けます。

ビズ社(被合併会社)の繰越欠損金の引継ぎ可否

25/12期 100 支配関係が生じた事業年度(26 年12 月期)前の欠損金額ですので、クレア社に引き継げません
26/12期 200 支配関係が生じた事業年度以降の欠損金ですのでクレア社で引継ぎ可能です

クレア社(合併会社)の繰越欠損金の利用可否

25/12期 500 支配関係が生じた事業年度(26 年12 月期)前の欠損金額のため、繰越控除ができません
27/12期 300 支配関係が生じた事業年度以降の欠損金であるが、当該欠損金は、支配関係発生日前から有していた資産(特定保有資産)譲渡により発生した欠損金ですので、特定資産の譲渡等損失の損金不算入により、繰越控除ができません。


5.繰越欠損金引継ぎのフローチャート

グループ②

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