DB078


1.無対価合併とは?

名前の通り、対価の支払を伴わない合併です。同一企業グループ内での組織再編成の場合は、無対価合併が一般的です。
 

2.無対価合併の取扱い

原則:「非適格合併」

例外:一定要件を満たす場合は、「適格合併」

 

3.無対価合併で「適格合併」となるケース

株主の支配価値に変動がない場合に、「適格」となります。次の要件を満たすケースです。

合併法人と被合併法人の間に、完全支配関係&合併後も完全支配関係が継続
合併前に、次のいずれかにあてはまる

  • 合併法人が、被合併法人株式等の全部を保有
  • 一の者が、被合併法人及び合併法人株式等の全部を保有
  • 合併法人(及び合併法人の発行済株式等全部を保有する者)が被合併法人の発行済株式等の全部を保有
  • 被合併法人(及び被合併法人の発行済株式等の全部を保有する者)が合併法人の発行済株式等の全部を保有

 

(適格合併となるケース)

例えば、以下の状況で、無対価で行われる合併は「適格合併」の要件を満たします。
合併会社を「クレア社」被合併会社を「ビズ社」とします(以下同様)

グループ③

(非適格合併となるケース)

以下の状況で、無対価で行われる合併は、「適格合併」の要件を満たしません。

グループ④
 
クレア社( 合併法人) とビズ社( 被合併法人) に、適格要件をあてはめてみます。

要件 あてはめ
合併法人が非合併法人株式等の全部を保有 クレア社( 合併法人)は、ビズ社( 被合併法人)の株式を保有していないため×
一の者が被合併法人及び合併法人株式等の全部を保有 親会社クレアビズ社は、クレア社とビズ社の株を直接は保有していないため、×
( 直接保有しているのはあくまでA、B 社)
合併法人(及びその100%親会社)が被合併法人の発行済株式等の全部を保有 クレア社やA 社は、ビズ社の株式を保有していないため×
被合併法人(及びその100%親会社)が合併法人の発行済株式等の全部を保有 ビズ社やB 社は、ビズ社の株式を保有していないため×

 
上記のとおり、クレア社とビズ社の無対価合併は、「適格要件」を満たさないことになります。
なぜ認められないかというと、
クレア社とビズ社が無対価合併を行うと、A社保有のクレア社の株式価値と、B 社保有のビズ社株式の価値が、合併により変わってしまう
( クレア社の株式価値↑ 、ビズ社の株式価値↓ ) ため
です。

なお、一定の従業員持ち株会の株式保有割合が5% 未満の場合、完全支配関係は満たしますが、「無対価合併」の要件は満たしません。
 

4.仕訳例

無対価でも、適格合併であれば、適格合併の仕訳と同様となります。
 

5.株主が個人である場合の注意

無対価合併の要件である「一の者」には、特殊の関係のある個人(親族等)は含まれません。
つまり、完全支配関係を判定する際の「一の者」とは異なる
点、注意しましょう
(株主間で株式価値の移転が生じるケースは「適格」とはならない)
 

(例)

クレア社は、ビズ社を「無対価」で吸収合併する予定であるが、当該合併は「適格合併」に該当するか?
クレア社とビズ社の状況は以下の通り。

  • クレア社は、父100%保有の会社
  • ビズ社は、父75%、息子25%(合計100%)保有の会社
  • その他の要件は満たすとする

 
グループ⑤


 

(1)完全支配関係及び「通常」の適格要件

「一の者」との間に、当事者間の完全支配関係がある法人同士ですので、完全支配関係は満たします
一の者が個人の場合は、特殊の関係のある個人も含むため)。
その他、株式以外の資産が交付されないため、通常の「適格要件」は満たします。

 

(2)無対価合併の適格要件

上記に加えて、無対価合併の場合の「適格要件」を検討します。

要件 あてはめ
合併法人が被合併法人株式等の全部を保有 クレア社は、ビズ社の株式を保有していないため×
一の者が被合併法人及び合併法人株式等の全部を保有 クレア社は、父(一の者)が100%保有していますが、ビズ社は、「一の者」に含まれない息子が25%保有しているため×
(無対価合併の要件である「一の者」には、特殊の関係のある個人(親族等)は含まれません。
合併法人(及びその100%親会社)が被合併法人の発行済株式等の全部を保有 クレア社は、ビズ社の株式を保有していないため×
被合併法人(及びその100%親会社)が合併法人の発行済株式等の全部を保有 ビズ社は、クレア社の株式を保有していないため×

 

(結論)

この例では、無対価合併の場合の「適格要件」を満たしません。
 
<< 前の記事「買収した会社の繰越欠損金は利用できるの?」次の記事「無対価会社分割とは?」 >>