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100%グループ法人内での寄付金は、「寄付金修正」が必要になります。
一方、連結納税制度下では、「投資簿価修正」という制度があります。
では、「連結納税制度」を採用している場合の「寄付金修正」はどうなるでしょうか?  ニッチな論点なんですけど・・(笑)。

結論は、不要となります。
以下、連結納税を採用していない場合と、連結納税の場合を比較した「例題」を用いて解説します。



 

1. 例題

  • 親会社クレアビズ社は、A社・B社をそれぞれ100で出資設立(100%子会社)
  • A社からB社に、100寄附を行った(A・B社設立後の取引は、これのみ)。
  • 親会社は、上記寄付の後、現金ゼロとなったA社を、外部に売却した。
  • クレアビズ社・A社・B社間は「グループ法人税制」の適用があるものとする。

(イメージ図)

 

4-1

 

2. 連結納税を採用していない場合

(1) 設立時と寄付後の各社の純資産の比較

設立時の各社純資産 寄付後の各社純資産
A社 100 0
B社 100 200

寄付後のA社の純資産はゼロ(現金ゼロ)となります。
この時点で、A社株式の市場価値は、理論的にはゼロとなるはずです。
もし、寄附後に、親会社がA社株式を市場価値どおりゼロで売却した場合、親会社の仕訳は以下となります。

 

借方 貸方
会計仕訳 現金
株式売却損
0
100
A社株式 100

親会社が、意図的に赤字を出す目的でA社を設立して、A社⇒B社に寄付をさせれば、上記のように売却損を計上する「利益操作」ができてしまいます。
そこで、グループ法人税制では、「寄付金調整」という制度があり、申告書上、下記の調整を行います。



 

(2) 寄付金調整

グループ法人税制では、親会社は以下の「寄付金調整仕訳」を行います。

 

借方 貸方
寄付金税務調整仕訳 B社株式 100 A社株式 100
申告調整後の売却益 現金
株式売却損(※)
0
0
A社株式(※) 0

(※)寄付金税務調整後の「A社税務簿価」はゼロとなり、売却損益も「ゼロ」になります。

 

3. 連結納税制度を採用する場合

(1) 各社の個別所得

連結個別所得は以下となります。
 

A社(※) 0
B社(※) 0

(※)連結納税下でもグループ法人税制は強制適用です。
A・B社とも、グループ法人税制の適用により、寄付金損金・益金不算入⇒個別所得は「ゼロ」となります。



 

(2) 各社の申告書

ここでは、寄附を行ったA社の申告書で解説します

(A社の別表4)~寄付をした方~

区分 総額 処分
留保 社外流出
当期利益 △100 △100
加算 ・・・ ・・・ ・・・
減算 ・・・ ・・・ ・・・
仮計 △100 △100
寄付金の損金不算入額(加算) 100 100
最終所得 0 △100 100

A社(寄付をした方)の「別表4」での最終所得は「ゼロ」となります。
同様にB社もゼロとなります。
 

(A社の別表5)~寄付をした方~

区分 期首 当期中の増減 差引
利益準備金
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
繰越損益金 △100 △100

A社(寄付をした方)の別表4では、「所得ゼロ」となりますが、寄付金損金不算入は、「社外流出」のため、別表5では調整がでてきません。
一方で、会計上は寄付金100だけ損失が生じているため、「繰越損益金」の欄は△100が残ります
(逆に、B社では、繰越損益金+100となっているはず)

つまり、A社では、「所得ゼロ」となりますが、別表5の利益積立金は、△100で残ります。
(B社も、A社同様「所得ゼロ」となり、別表5の利益積立金は+100で残ります)



 

(3) 親会社クレアビズ社の投資簿価修正

連結納税の親会社クレアビズ社は、A社・B社の別表5をみながら、以下の投資簿価修正を行います。

 

借方 貸方
申告調整(※) B社株式 100 A社株式 100

(※)A社・B社それぞれの別表5 利益積立金△100、100に対応



 

(4) 結論

連結納税下では、売却時に行われる「投資簿価修正」の制度により、グループ法人税制の「寄付金簿価調整」と同じことが行われますので、
連結納税下での寄付金調整仕訳は不要となります。

なお、繰り返しになりますが、グループ法人税制は強制適用であり、連結納税制度の上位の制度ですので、
連結法人間での寄付が行われた場合も、寄付金の損金不算入・受贈益の益金不算入という点は変わりません

 

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