HH013

 

前回に引き続き、現物分配を活用するケースとして、「孫会社株式を子会社にする際の現物分配」を例に、会計処理・税務処理を検討します。

1. 例題

 

  • 「クレア社」の100%子会社「ビズ社」は、親会社に現物分配を行います。
  • この現物分配は、金銭ではなく、ビズ社の100%子会社である「A社株式」で行います。
  • ビズ社保有の「A社株式」簿価は100とします。
  • 現物分配の原資は、「その他資本剰余金60・その他利益剰余金40」とします。
  • 当該現物分配は「適格要件」を満たします。

 

(イメージ図)

2-1

(ビズ社の前事業年度末 BS)

2-2


2. 子会社・現物分配法人の処理(ビズ社)


(1) 仕訳(会計・税務)

「適格現物分配」に該当する場合、配当による資産の移転は、「帳簿価額」よって行われ、課税関係が生じません。
また、現物配当に関する「源泉徴収」も不要となります。

今回の現物分配は「資本剰余金の額の減少を伴う現物分配」であるため、みなし配当事由に該当します(法法24条1項3号)。
税務上は、「出資の払戻部分」と「利益の配当部分」を算定する必要があります。(法令8条1項16号、9条1項11号)。

 

借方 貸方 摘要
会計 資本金等の額
利益積立金
60
40
A社株式 100
税務 資本金等の額(※1)
利益積立金(※2)
36
64
A社株式 100 簿価譲渡のため、譲渡損益は発生しない

(※1)資本金等の額から減算する額

払戻直前資本金等の額600 × 資本の払戻により減少した資本剰余金の額60 / 前事業年度の簿価純資産額1,000

資本金等の額から払い戻す額は・・

600 × 60 / 1,000 = 36

 

今回の事例も、前回同様「適格現物分配」ではありますが、「解散による残余財産の分配」ではない点が異なります。

この場合、資本金等の額から減算する額を算定する際に用いる分子の金額は
「現物分配資産の交付直前の帳簿価額」100ではなく、「資本の払戻により減少した資本剰余金の額」60となる点
、異なります。

(※2)利益積立金から減算する額(みなし配当部分)

貸借差額 100 - 36 = 64

 


(2) 申告調整仕訳

「会計処理」と「税務処理」が異なるため、税務申告上の調整が必要となります。

 

借方 貸方
申告調整 利益積立金 24 資本金等の額 24


(3) 別表の記載

① 別表4の記載

「会計」と「税務」の相違はありませんので、別表4の税務申告上の調整はありません。

② 別表5の記載

 

(利益積立金の計算に関する明細書)

区分 期首 当期中の増減 差引
利益準備金
・・・
利益積立金(※1) 24 △24
繰越利益金(※2) 40 △40

(※1)「資本金等の額」の額を超えた部分(申告調整仕訳 借方)
(※2)これは、申告調整ではなく、元々計上済の「会計上の繰越利益」を表示しています。(申告調整と区別するため斜体で表示)。

(資本金等の額の明細書)

区分 期首 当期中の増減 差引
資本金 600 60 540
・・・
資本金等の額(※3) 24 24

(※3)税務上の「資本金等の額」に合わせます(申告調整仕訳 貸方)。


3. 親会社・被現物分配法人の処理(クレア社)


(1) 仕訳

 

借方 貸方
会計 A社株式 100 ビズ社株式(※1) 100
税務 A社株式 100 受取配当金(※2)
資本金等の額(※3)
36
64

(※1)会計上は、現物分配であっても「収益計上」しないものとされています。
孫会社株式(間接投資)から子会社株式(直接投資)に変わるだけなので、株式を交換する会計処理を行い、「交換損益」は認識しません。
(詳細は省略しますが、「実質的に引き換えられたとみなして算定された金額」で「孫会社株式」を計上します。ここでは、簿価=実質引換価額としています)。
(「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」295項)。
(※2)受取配当金(みなし配当)

現物分配法人(ビズ社)で算定した「利益積立金」部分が「受取配当金」となります。
(※3)資本金等の額

会計上は、子会社株式(ビズ社)が減少し、「譲渡損益」は認識されません。
しかし、税務上は、グループ法人税制適用により、子会社株式は帳簿価額による譲渡があったものとみなされるため、譲渡損益は計上されません。
「実質的な譲渡損益相当額」は、ビズ社の資本金等の額から加減算します。(法61の2⑯、法令8①19,20)


(2) 申告調整仕訳

「会計処理」と「税務処理」が異なるため、税務申告上の調整が必要となります。

会計上は、「ビズ社株式」が減少しているのに対し、税務上は、「みなし配当」と「資本金の増減」の取扱いとなるため、申告調整を行います。

 

借方 貸方
申告調整 ビズ社株式 100 受取配当金
資本金等の額
36
64

 


(3) 別表の記載

① 別表4の記載

(所得の金額の計算に関する明細書)

 

区分 総額 処分
留保 社外流出
当期利益
加算 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
受取配当金計上漏れ(※1) 36 36
減算 適格現物分配に係る益金不算入額(※2) 36 36

(※1)みなし配当部分を加算(留保) (申告調整仕訳 貸方)
(※2)(※1)の結果、認識された受取配当金は、「適格現物分配に係る益金不算入額」に該当するため、減算(社外流出)(法法62条の5第4項)。

② 別表5の記載

(利益積立金の計算に関する明細書)

区分 期首 当期中の増減 差引
利益準備金
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
みなし配当(※3) 36 36

(※3)別表4の(※1)に対応。

(資本金等の額の明細書)

区分 期首 当期中の増減 差引
資本金
・・・
資本金等の額(※4) 64 64

(※4)税務上の「資本金等の額」に合わせます(申告調整仕訳 貸方)。

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