HH018

 

グループ法人税制では、グループ内寄付金につき、寄付を行った法人は「全額損金不算入」となり、受領した法人は「全額益金不算入」となります。この結果、グループ法人間では、課税関係を生じさせることなく、財産価値の移転が行えることになります。

しかし、例えば、極端な話ですが、100%子会社Aが財産全部を他の100%子会社Bに寄付し、その後に、親法人が、価値が下がった子会社株式(A社株式)を売却すれば、子会社株式売却損(損金)を意図的に作ることができます。

そこで、租税回避行為を防止する観点で、グループ法人内寄付が行われた場合、株主側の親会社で一定の簿価修正が必要なケースがあります。

今回は、親会社から100%子会社への寄付につき、各会社の申告調整方法につき解説します。
なお、グループ法人内寄付に係る「損金不算入制度及び簿価修正」の詳細内容については、Q127をご参照ください。

 

1.例題

「クレア社」は、「100%子会社ビズ」に対する貸付金100の債権放棄(=債務免除)を行ったが、税務上「寄付金」として取り扱われた。

 

201704_4-1

 

2.子会社側の申告調整(寄付を受ける側)

親会社が債権放棄した金額が、税務上「寄付金扱い」される場合、グループ法人税制では、寄付を受領した法人は「全額益金不算入」となります。
 

(1)仕訳

借方 貸方
会計 借入金 100 債務免除益 100
税務 借入金 100 寄付金受贈益 100
申告調整(※) 債務免除益 100 寄付金受贈益 100

(※)税務上「寄付金」認定された債務免除益は、グループ法人税制では「全額益金不算入」となります。
別表4では、「受贈益の益金不算入額処理(減算・社外流出)」を調整します。なお、社外流出のため、子会社側で「別表5」の記載はありません
 

(2)別表4の記載(所得の金額の計算に関する明細書)

区分 総額 処分
保留 社外流出
当期利益
加算 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
 ・
減算 受贈益の益金不算入額(※) 100 100
 ・

 

3.親会社の申告調整(寄付を行う側・株主側)

グループ法人税制では、グループ内の寄付金は、寄付を行った法人は「全額損金不算入」となります。
また、親会社側は、寄付を行った立場だけではなく、寄付された子会社の「株主」でもあります。
グループ法人内で寄付金の授受があった子会社の「法人株主」(=親会社)は、親会社株主の立場として、寄附金相当額のうち「持分割合に相当する金額」につき「利益積立金額」を調整(株式簿価修正)する必要があります(法令9①七、119の3⑥)。
したがって、親会社は、寄付金の損金不算入の処理だけでなく、「株主としての税務簿価修正」も行う必要がある点、注意が必要です。

 

(1)仕訳

借方 貸方
会計 債権放棄損 100 貸付金 100
税務 寄付金 100 貸付金 100
子会社株式(ビズ社株式) 100 利益積立金 100
申告調整 寄付金(※1) 100 債権放棄損(※1) 100
子会社株式(※2) 100 利益積立金(※2) 100

(※1)税務上「寄付金」認定された「債権放棄損」は、グループ法人税制では、全額「損金不算入」となります。
別表4では、寄付金として処理した場合に生じる「寄付金の損金不算入額処理(加算・社外流出)」を調整します。当該部分は、社外流出のため別表5の記載はありません

(※2)税務上は、寄付金部分につき子会社株式の「簿価修正」仕訳を行います。
寄付の分、各子会社の純資産が増減している点を反映し、子会社株式の「税務簿価」を修正するイメージです。当該修正は、別表5のみ修正し、別表4の記載はありません
詳しくは、No127をご参照ください。

 

(2)別表の記載

①別表4の記載

(所得の金額の計算に関する明細書)

区分 総額 処分
留保 社外流出
当期利益
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
仮計
寄付金の損金不算入額(加算)(※1) 100 100

 

別表5の記載

(利益積立金の計算に関する明細書)

区分 期首 当期中の増減 差引
利益準備金
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
子会社株式(※2) 100 100
繰越損益金

(※2)子会社株式の純資産増減に対応して、子会社株式の簿価調整(利益積立金)を行います。
この簿価修正は、別表4とは連動していないため、別表5に直接入力する必要があります。

なお、当該簿価修正は、「税効果会計」の対象となります。

 

(3)ご参考

参考に、親会社の別表4の記載方法を、もう一つ記載しておきます。
「別表5との整合性を重視した記載方法」です。この方法では、別表4と5が連動しますので、別表5に直接入力する必要がなくなります。

 

(所得の金額の計算に関する明細書)

区分 総額 処分
保留 社外流出
 当期利益
加算 ・・・ ・・・ ・・・
債権免除損(※1) 100 100
減算 寄付金(※1) 100 100
仮計 △100
寄付金の損金不算入額(加算)(※2) 100 100

(※1)会計上の仕訳を「債権放棄損」から「寄付金」に振り替える調整です。
この調整を入れることにより、加算欄の「債権免除損」100は、別表5に自動入力されます。
一方、減算欄の「寄付金」100は社外流出で入力しますので、別表5には転記されません。

(※2)別表4で加算します(社外流出)
 

4.親会社(株主側)が、子会社株式を売却した場合の申告調整

税務簿価調整した子会社株式を売却した際は、税務申告上、税務上の簿価調整額の戻入処理を行います。こちらについては、Q127をご参照ください。