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「1円ストック・オプション」って聞いたことありませんか?
「株式報酬型ストック・オプション」の一つとして、よく利用される手法です。


 

1. どんなもの?

「権利行使価額」が1円に設定されたストック・オプションです。
発行価額は、一般的に「無償」で行います。
税法上は「非適格」となり、権利行使時に課税されます。

 

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2. メリット・デメリット

1円ストックオプションは、「税制非適格」で、権利行使時に課税されてしまうのに・・なんでわざわざ利用するの?っという疑問の声もあるかもしれません。
それは、法人・従業員とも、以下のメリットがあるからです。
特に法人側では、給与を損金にできるメリットが大きいです。

 

法人側 従業員側
メリット
  • 従業員がストックオプション行使時に「給与」として損金算入ができる
    (法 第54条1項)(※)
  • 株価上昇が給料に直結するため、従業員に対して、業績向上のインセンティブを与えることができる。
  • 「1円」で株式取得が可能であるため、ほぼ無料で「株式価値全額」を取得できる。
    また、株式の「含み損」を保有するリスクは少ない。
  • 退職所得に該当すると、低い所得税率で、報酬を手に入れることができる。
デメリット
  • 行使価格が1円のため、行使価格が設定されているストックオプションと比べると、そこまでのインセンティブは働かない(従業員が損する可能性は元々低いため)。
  • 株式を、報酬として毎月支給する場合、低い株価の時点で支給される株式数は、結果的に多くなる。逆に、退職後に株価が上がれば、多くの利益が得られることになるため、逆インセンティブになる可能性がある。
  • 取得した株式を売却する取引は、「インサイダー取引」の適用対象となるため、株式を取得しても、適時に「現金化できない」可能性がある。

 

(※)給与総額は、ストック・オプション付与時の時価とほぼ同額


 

3. どういうケースで利用?

従業員の「退職金代わり」として活用するケースが多いです。
最近では、役員退職慰労金を廃止して「1円ストックオプション」を導入するケースも多くなっています。
「退職所得」に該当すれば、役員側は、安い税率で利益を得ることが可能です。
退職所得に該当するためには、「退職に基因して権利行使が可能」と認められなければなりません
事例として、「権利行使期間を退職から10日間に限定」し、退職時に行使した所得につき、「退職所得」と認められている事例があります(㈱伊藤園)。

 

(ご参考~個人側の所得税の課税区分)

給与所得 下記以外
退職所得 退職に起因して権利行使が可能な場合
雑所得 退職後、長期間経過後に行使した場合など、主として「職務の遂行に関連しない利益」が供与されていると認められる場合


 

4. 税法上の取扱い


(1) 適格・非適格?

「1円ストックオプション」は、税法上の適格要件である「権利行使価格が付与時の時価以上」という要件を満たさず、「非適格」となります。
非適格ストック・オプションは、「権利行使時」に、法人側は損金算入され、従業員側は課税されます。
(詳しくは、ストックオプションと会計処理方法を参照ください)

 

法人側 従業員側
付与時 損金 × 課税されない
行使時 損金 ○ 給与所得・退職所得
譲渡時 損金 × 譲渡所得


 

(2) 付与対象者が役員の場合

ストック・オプションの付与対象が「役員」の場合、「役員報酬の損金算入」の規定に留意です。
税制改正により、ストック・オプションは「役員給与税制」の対象となり、他の金銭報酬同様の取扱いとなります。

この結果、ストック・オプションは、「事前確定届出給与」か「一定の業績連動給与」に該当する場合に「損金算入」が認められることになります。(退職金として支払う場合は、従来通り、原則損金算入可)

 

(ご参考~事前確定届出給与に該当するための要件~)

  • 市場価格のある株式が交付される新株予約権
    (適格新株予約権・法34条1項2号ハ)

なお、将来の役務の提供に係るものとして「政令で定める要件」を満たす場合は、税務署への「事前届出」自体が不要になります。(法34条1項2号イ)

 

(事前届出不要の要件)

  • 職務執行開始日(株主総会)から1 カ月以内に、取締役会等で「所定の時期に確定した数の新株予約権を交付する」旨を決議
  • 上記決議から1 カ月以内に、新株予約権を給与として交付


 

5. 参照URL

(権利行使期間が退職から10日間に限定の所得区分)
https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/bunshokaito/gensen/07/02.htm
(法人税法第54条 新株予約権を対価とする費用の帰属事業年度の特例等)
http://www.houko.com/00/01/S40/034.HTM#s2.1.1.4.7-2

 

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