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海外に子会社を有する場合、技術指導・営業支援等を目的に、「海外に出張」に行くケースもありますね。

この点、海外子会社に出張に行く場合、税務上、出張旅費等の負担につき、国内親会社、海外子会社どちらが負担するのか?という論点があります。
例えば、「海外子会社を支援するため」の出張で、親会社が出張旅費を全額負担している場合、「子会社への経済的利益の供与(=寄付金)」と認定されるケースがあります。
寄付金認定されると、損金算入限度額の制限が生じます。税務調査では、よくクローズアップされる論点です。

今回は、海外子会社への出張旅費の負担につき、「寄付金認定」される場合の判断基準等につき解説します。

 

1. 税法上の考え方

 

(1) 親会社と子会社は別法人

親会社が「子会社」を支援した結果、親会社も利益を享受でき、メリットが生じるのであれば、親会社が子会社を支援するのは当然!と考えることもできます。

しかし、税法上は、たとえ「子会社」であっても、あくまで親会社とは「別法人」という考え方をします。
つまり、親会社の支援したサービスが、結果的に「子会社の経済的価値の増加」につながった場合は、本来「子会社側でお金を出して負担すべき費用」という考え方です。

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(2) 「移転価格事務運営要領」の規定

国税庁上、「移転価格事務運営要領」という規定があります。
当該規定は、国際取引を行う取引全般につき、税務調査の際に、税務調査官が「留意すべき事項」がまとめられています。
海外出張旅費の負担関係については、以下の規定が参考となります。抜粋すると以下の条文となります。
 

(企業グループ内における役務提供の取扱い) 3-10
(1) ・・法人が行う活動が国外関連者に対する役務提供に該当するかどうかは、当該活動が当該国外関連者にとって経済的又は商業的価値を有するものかどうかにより判断する。具体的には、法人が当該活動を行わなかったとした場合に、国外関連者が自ら当該活動と同様の活動を行う必要があると認められるかどうか又は非関連者が他の非関連者から法人が行う活動と内容、時期、期間その他の条件が同様である活動を受けた場合に対価を支払うかどうかにより判断する。

 
「国内法人」が国外関連者(海外子会社等)に対する「役務提供」に該当すれば、対価を請求すべき(=子会社で負担すべき)費用という趣旨の条文となります。
したがって、海外子会社に対する役務提供を目的とした「海外出張」であれば、出張旅費は、本来親会社から子会社に対価を請求すべきものであり、原則として海外子会社が負担すべき費用、ということになります。
 

(3) 経済的・商業的価値につき「対価」を支払うかどうか?

上記規定を読み解くと、ポイントは、海外出張により、海外子会社に対して何らかの「経済的・商業的価値」を提供し、「対価を支払う」ほどの価値があるか?という点となります。逆に言うと、「形式的」に海外子会社に出張したからといって、すべての旅費が否認される規定とはなっていません

「経済的・商業的価値」が提供されたかどうか?は、あくまで「事実認定」の論点となります。
 

2. 親会社負担・子会社負担の区分の例示

(1)区分の例示

国内親会社、海外子会社を前提に、それぞれの法人が負担すべき費用をまとめると、以下の通りとなります(あくまで例示です)。

 

親会社のための出張(親会社負担) 子会社のための出張(子会社負担)
●株主としての活動
(総会開催、株式発行、親会社有価証券報告書作成のための活動)
●子会社での市場調査をもとに、他国での事業展開に活かす
●新製品の開発(子会社での品質管理を調査)
●子会社が行う活動と重複する活動
●企画、技術指導(※1)
●子会社での販促、経営支援(※1)
●内部管理面の支援(※2)
●子会社の要請に応じて、随時役務の提供を行えるよう「人員や設備等を利用可能な状態に維持」するコスト

(※1)株主としての地位で行う側面もあると思われますが、「専ら株主として自らのために行うもの」とは言えないため。
(※2)親会社の子会社投資の保全を目的とする活動ですが、直接的には、「子会社等にとって経済的又は商業的価値を有するもの」と考えられます。

上記例示に基づき、子会社が負担すべき出張費用にもかかわらず親会社が負担している場合は、「寄付金」認定される可能性があります。

なお、単に業績等の理由から子会社に費用請求できない場合は、原則として「寄付金課税」の論点となりますが、損失負担等をしなければ親会社が今後より大きな損失を蒙ることになる場合など、相当な理由があると認められるときは、寄付金ではなく、「子会社支援損」として損金算入できるケースもあります。
 

(2)具体的な判断

例えば、国内親会社のノウハウを、海外子会社に「技術指導」するための出張を考えます。

内容 費用負担者 理由
海外子会社の利益のための「技術指導」 子会社 子会社は、仮に「他社」に頼んだ場合も対価を支払うと考えられるため
親会社の利益のための「技術指導」 親会社 あくまで親会社のためであり、子会社が対価を負担すべきものではないため
製造海外子会社が「自社の規格に合う製品製造」するための「技術指導」 両方 「本社製品の研究開発」という側面と、子会社の品質管理の両面を有するため

単に「技術指導」という内容だけで、海外出張旅費が一律「寄付金認定」されるわけではなく、当該出張内容、目的に応じて費用負担関係を決定します。
ポイントは、「子会社支援のための出張」か?「親会社のための出張か?」という点です。

 

3. 実務上の対策

実務上、親会社・海外子会社どちらの法人のための出張か?の「事実認定」は、非常に難しいですが、例えば、税務署への「合理的な説明」の観点で、以下の対策が考えられます。
 

社内規定等の整備 ●「海外出張旅費等」の負担に係る社内ルールを文書化
●親会社とグループ子会社全体で、当該ルールを「共通認識」。
「出張報告書」等の作成 ●「出張報告書」等に出張目的などを明確に記載
●出張期間に応じた「人件費」等の請求金額については、子会社支援でない「根拠資料」を残す。
全額を「親会社負担」にしない ●判定が難しい出張は、「親会社と子会社で折半」することも、選択肢の1つ。
⇒ 実務上は、さまざまな費用が発生し、すべての取引を文書で規定するのは現実的ではなく、海外出張費用につき、子会社が、「全く利益を得ていない」と全面主張するのも難しいため。

 

4. 会計処理/税務処理

 

 会計上の取扱い ●海外子会社への交通費等請求額は、交通費実費の立替回収ではなく、「サービス提供の対価」となり、「雑収入」等に計上するのが一般的です。
●また、海外への「役務提供の対価」については、源泉徴収の対象となるケースもあります。
申告上の取扱い ●出張旅費の請求額は、消費税は免税取引となります(海外部分)。
●出張旅費請求額については、「サービス提供の対価」となりますので、法人税上は、「国外関連者に関する明細書(別表17-4)」に記載します。
⇒ 「国外関連者との取引状況等」の「役務提供の対価」の欄に、請求額を記載します(「算定方法」の欄は「原価基準法」)。

 

5. 国内グループ会社内も同様

今回の論点は、「国際税務」でクローズアップされることが多いですが、国内グループ会社間のでも同様の論点が生じます。
どちらの法人の利益になるか?という「事実認定」で損金算入が問題になるのは、国際税務の場面だけに限られません。
したがって、海外取引に限らず、国内取引においても同様の整備をしておくことが望まれます。
ただし、グループ法人税制により、完全支配関係のある内国法人間での寄付金については、支出法人は全額損金不算入、受領法人は、全額益金不算入となります。

 

6. 参照URL

(移転価格事務運営要領の制定について(事務運営指針))

https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/010601/00.htm
 

7. Youtube

 
YouTubeで分かる「海外子会社出張旅費」