自己株式を取得した場合は、「会計処理」と「税務処理」が異なるので、申告調整が生じます。
ここでは、「非上場」の自己株式を前提に、取得時の会計処理と税務処理をまとめます
(「上場自己株式」の場合は、「みなし配当」が生じませんので、利益積立金の仕訳が異なります)

jf044


1.会計処理

会計上、自己株式の取得は「資本取引」となり、取得価額で「株主資本」から控除します。


2.税務処理

税務上も、会計同様「資本取引」となりますが、
「資本金等の額」と「利益積立金額」を直接減額する点、異なります。

3.会計処理と税務処理の違い

資本取引であり、「株主資本」からマイナスする点、「会計処理」と「税務処理」は共通します。

ただし、会計処理は、「純資産の部」の末尾で間接控除されるだけで、自己株式の「取得価額」は存在しているのに対し、税務処理は、直接「資本金等の額」から控除するため(減資の扱い)、自己株式の「取得価額」はゼロとなる点、異なります。
会計処理は、取得時点では減資ではなく、消却した時点で、初めて減資となるイメージでよいと思います。

また、税務上は、「資本金等の額」の減少額が決められており、それを超えた部分は、「利益積立金額」の減少と取り扱われ、この部分は「みなし配当」と取り扱われます。

税務上の考え方は、自己株式取得により支払う金銭は、「当初払い込んだ資本部分の払戻し」と「利益の分配部分」の2種類で構成されていて、前者は「資本金等の額の減少」、後者は「配当を支払った」とみなされるんですね。

まとめると以下の通り。

会計 税務
共通 資本取引
相違1 処理 純資産の部の末尾から間接控除 資本金等の額」「利益積立金額」から直接減額
相違2 取得価額 支払った額 ゼロ
相違3 支出額の内訳 支払額全額が自己株式の取得価額。 「資本金等の額」の減少額が決められている。(超えた部分は利益積立金の減少⇒配当とみなされる)


4.税務上減少させる「資本金等の額」の算定方法

自己株式を取得した場合、税務上は、支出額のうち「資本金等の額」から減少させる金額が決められています
では、税務上減少させる「資本金等の額」はどうやって算定するのでしょうか?

税務上、「資本金等の額」から減少させる金額は、以下の式となります。
この額を超えた分は「利益積立金」の減少(みなし配当)とみなされます。

15-1%e8%87%aa%e5%b7%b1%e6%a0%aa%e5%8f%96%e5%be%97-1

式だけ見てもイメージわきにくいかもしれません。
自己株式の取得というのは、いわば「資本の払戻」です。つまり、当初の出資取引と正反対の行為です。

15-2%e8%87%aa%e5%b7%b1%e6%a0%aa%e5%8f%96%e5%be%97-2

つまり、上記の式の意味は、自己株式の取得は、出資額を「一部払い戻す行為」だから、自己株式の取得価額がいくらであるにせよ、「資本金等の額」から減少させる金額は、元々出資された金額(資本金等の額)が限度だよ!ということです。

取得価額のうち、上記金額を超えた部分は、税務上は、「利益積立金」の減少となり、株主に対して「資本の払い戻し」ではなく「配当」をしたとみなされるんですね。

同じ「資本取引」とはいえ、会計処理と税務処理が異なってきますので、別表調整が必要となります。


5.例題

  • クレアビズ社(未上場) 資本金400万円、発行済株式 普通株式8,000株(1株500円)。
  • クレアビズ社は、特定の株主から自己株式を2,000株、122万円で取得(一株610円)。
  • 売り手(株主)の簿価は140万円(2,000株×700円)とします。


(1)会計処理

会計仕訳は以下となります。
会計処理のポイントは、「自己株式」の取得価額が「支出額122万」となる点です。
(「資本金」を直接減少させるわけではなく、間接控除のため、取得価額が残っている点)。

借方 貸方
自己株式 1,220,000(※1) 現金
預り金(※2)
1,175,076
44,924

(※1) 610円×2,000株=1,220,000円(取得価額で計上)
(※2)税務上、配当とみなされる部分に関する源泉所得税です。
この金額については、後ほど「3.税務処理」のところで記載します。


(2)税務処理

税務仕訳は以下となります。税務処理のポイントは、
「自己株式」の取得額はゼロ、「資本金等」「利益積立金」を直接減額する点です。

借方 貸方
資本金等(※1)
利益積立金(※2)
1,000,000
220,000
現金
預り金(※3)
1,175,076
44,924

(※1)400万円(資本金)÷8,000株(発行済株式)×2,000株=1,000,000円
(※2)1,220,000(支出額)-1,000,000(※1 資本金等)=220,000円
⇒みなし配当額に対応
(※3)220,000円×20.42%(源泉所得税率)=44,924円。
税務上、(※2)の部分は「配当」とみなされるため、「配当」額に対応する源泉所得税額(税率20.42%)を差し引いて支払います。

16


(3)別表の記載

会計処理と税務処理が異なるため、申告調整が必要となります。
税務上は「資本金等の額」と「利益積立金」を減少させる必要があるため、会計と税務を一致させる別表5の申告調整(振替調整)を行います。

①税務修正仕訳

借方
貸方
資本金等
利益積立金
1,000,000
220,000
自己株式 1,220,000
  • 税務上の仕訳に修正するための、修正仕訳となります。
  • 会計上の「利益」と税務上の「所得」に金額の差は生じません

②別表5

(利益積立金の計算に関する明細書)

区分 期首 当期中の増減 差引
利益準備金
・・・
利益積立金 220,000 △220,000
  • 税務上、「資本金等の額」の額を超えた部分は、「利益積立金」のマイナスとなります。

(資本金等の額の明細書)

区分 期首 当期中の増減 差引
資本金 4,000,000 4,000,000
・・・
自己株式 1,000,000 △1,000,000
  • 税務上、「資本金等の額」の減少部分となります。

③別表4

(所得の金額の計算に関する明細書)
「会計上の利益」と「税務上の所得」の差異はありませんが、
所得に影響させないようにするために、別表4での調整が必要となります。

区分 総額 処分
留保 社外流出
当期利益 ・・・
加算 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
自己株式 220,000(※2) 220,000(※2)
減算 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
自己株式 220,000(※1) 220,000(※1)

(※1)別表5と対応して、利益積立金の減少部分を記載します(留保)。
(※2)みなし配当部分です。税務上は、配当をしたとみなされるためです。この意味は、(※1)を記載することにより、このままだと所得が減少してしまうので、最終所得に影響がない形にするため、同時に、(※1)の減算部分に対応する加算を行うという意味です(配当なので社外流出)。
この処理により、所得への影響±ゼロとなります。

<< 前の記事「自己株式償却・売却の手続は?」次の記事「自己株式を売却した株主側の会計処理/税務処理」 >>