CA085

 

 
中小企業の社長様は、一度は考えたことがある「テーマ」あるかもしれません。
「役員報酬」でもらうのと、「配当」でもらうのは、どちらが得か?
 
報酬、配当どちらも、「法人から個人への資金の移動」という点は共通しています。
しかし、報酬と配当では、税務や社会保険等の観点で、それぞれ取扱いが異なります。
 
そこで今回は、中小企業を前提に、役員報酬と配当を比較してみます。



 

1. 法律・税制度上の比較

 

役員報酬 配当
原則として、年に1回しか金額変更できない「定期同額給与」の制限あり。 一定の剰余金がないと配当できない「剰余金の分配可能額」の制限あり。

 

(結論)

自由がききそうなのは「配当」の方ですね。
ただし、配当は、株式数に応じた配当が原則ですし(配当優先株式を除く)、
非上場会社では、純資産が300万円未満の場合、配当できない制限もありますので、注意が必要です。



 

2. 税額の比較

 
メリットがある方に色をつけています。(以下同様)
 

種類 役員報酬 配当(非上場株式の場合)
法人側 法人税 ・損金可能 ・損金不可
個人側 所得税 ・税率は累進課税(総合課税) ・税率は累進課税(総合課税)
・配当額の最大10%の配当控除(※)
住民税 ・税率10% ・税率10%
・配当額の最大2.8%の配当控除(※)

(※)配当控除については、下記「5.ご参考~配当控除って?~」を参照ください。
 

(結論)

法人側で経費にできる点では「役員報酬」がお得ですが、配当の場合に認められる個人側の「配当控除10%、2.8%」も捨てがたいですね。



 

3. 社会保険料の比較

 

役員報酬 配当
社会保険料がかかる
(月額報酬に応じた社会保険料率)
社会保険料はかからない

 

(結論)

社会保険料の面では「配当」の方がお得ですね。

 
なお、ここでは、社会保険支払額だけで比較しています。以下同様です。
厳密には、「厚生年金部分」は、将来「年金」として返戻されますので、単純に支払額だけで比較するのは正しくないです。



 

4. どっちが得?

 
結局どっちが得なんでしょうか?
結論は・・個人の「所得」や「法人利益」の額によって影響が異なりますので、一律の答えがあるわけではありません。
期待していた方・・すみません。
 
ただし、上記の情報をもとに、方向性は見えてきましたので、以下にまとめます。



 

(1) 税額の観点

 
法人側の法人税等の「法定実効税率」は、一般的に30~35%程度。
一方、個人側の配当控除は10%のため、単純比較では、法人側で「役員報酬」で損金にした方が、節税効果は高いと考えられる。



 

(2) 社会保険料の観点

 
「社会保険料率」は、会社・従業員負担合わせて、概ね28%程度。
配当には社会保険がかからないため、社会保険料負担という点では、明らかに「配当」の方がお得。



 

(3) 方向性

  • 法人側のインパクトと、個人側のインパクトを比較してどちらがお得か?
     
    法定実効税率(30~35%)
    VS
    配当控除(最大12.8%)+社会保険料率(28%)
     
    ⇒単純比較では、そんなに差はない。(ちょっと配当の方がお得程度)。
    ただし、中小企業者の場合、所得800万以下部分の法定実効税率は、21%~24%程度となるため、利益が少ない場合は、「役員報酬」よりも、「配当」の方がお得な場合があると考えられる。
  •  

  • 赤字の場合など、法人税がかからない状況の場合は、個人側で「配当控除」がある分「配当」の方がお得な場合があると考えられる。
  •  

  • 一方、社会保険負担額には上限がある。
    例えば、健康保険は報酬135万円程度、厚生年金は報酬62万円程度を上限に、社会保険料負担額は固定される。
    つまり、当該金額以上の役員報酬等を支払う場合は、社会保険料率が固定される分、報酬に対する社会保険負担率は低くなるため、「役員報酬」の方が、お得な場合があると考えられる。

 
例えば、法人の課税所得を800万以下に抑え、「配当と給与所得の合計額」が330万円以下(所得税率10%)程度に設定すれば、どちらのメリットも享受できるかも?
 
貴社の状況に応じて、シミュレーションしてみてください。
という・・責任感のないブログになりましたが・・



 

5. ご参考~配当控除って?~

 
配当の法的性格は「剰余金の処分」となりますので、たとえ配当を支払っても、法人側では「損金」にできません。
一方、配当を受けた個人側には、「所得税」が課税されます。(総合・累進課税)
 
この点、個人が受けた配当の原資は、「法人税課税前の利益」です。
つまり・・法人税課税前の利益に対して、個人側には「所得税」、法人側には「法人税」が課税されています。
同じ利益に対して「法人税」と「所得税」が課税される「二重課税の構造」になっていますね。
 
そこで「配当控除」という制度により、個人側(所得税)で「二重課税の排除」が行われています。
具体的には、配当額の10%の所得控除(所得税)、2.8%の所得控除(住民税)が認められています。(※)
 
(※)「課税総所得金額」が1千万円以下の場合です。
 
190319creabiz2

 

<< 前の記事「日本の年金制度の全体像・種類は?」次の記事「個人事業主・フリーランスの「住宅ローン限度額」の目安は?」 >>