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「資本金」を、そのまま配当することできませんが、「資本金や資本準備金」を取り崩し、「その他資本剰余金」に振り替えた後は、配当ができます。(もちろん、剰余金の分配可能額の範囲内です)
 
今回は、「その他資本剰余金を配当する場合の会計処理・税務処理」をまとめます。
(非上場会社を前提とします)。



 

1. 法的な取り扱い(会社法)

「その他資本剰余金」の配当については、会社法上、①「形式減資」と②「剰余金の配当」の2つが組み合わさったものとして、規定されています。

 

形式減資 資本金を減少させ、「その他資本剰余金」に振り替える行為
→株主総会特別決議(会社法447条)
剰余金の配当 「その他資本剰余金」を配当する行為
→株主総会普通決議(会社法454条)



 

2. 例題

  • 簿価純資産額100,000(うち、資本金15,000、資本準備金15,000)の会社が、資本金2,500及び資本準備金2,500を取り崩し、「その他資本剰余金」5,000に振り替えた上、株主に5,000の配当を行った。
  • 配当前の法人税上の「資本金等の額」は、30,000。
    (→会計上の資本金15,000 + 資本準備金15,000と一致している)

 

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3. 会計処理

(会計仕訳)

借方 貸方
形式減資 資本金
資本準備金
2,500
2,500
その他資本剰余金 5,000
剰余金の配当 その他資本剰余金 5,000 現金
預り金(源泉所得税)
4,285
715
  • まず、「資本金」及び「資本準備金」を減少させ、「その他資本剰余金」に振替えます(形式減資)。
  • 次に、「その他の資本剰余金」から配当を行った処理を行います(剰余金の配当)。
    なお、貸方の「預り金」は、税務上、配当とみなされる部分(みなし配当)に対応する「源泉所得税」です。この金額については、「4.税務処理」の所で解説します。

 

4. 税務処理

(1) 税務仕訳

借方 貸方
形式減資 仕訳なし
剰余金の配当 資本金等の額
利益積立金
1,500
3,500
現金
預り金
4,285
715
  • その他資本剰余金への振替は、単に「純資産の部」内での振替にすぎませんので、税務上の仕訳はありません無償減資の場合と同様です)。
  • 剰余金の配当は、株主への払戻となりますので、税務上「資本取引」となります。
  • 税法上、配当で支払った金銭は「当初払い込んだ資本金等部分の払戻し」と「利益の分配部分」の2種類で構成されていると考えます。
    前者は「資本金等の額の減少」、後者は「利益積立金の減少」として取り扱います。
    この「利益積立金の減少」部分は、「みなし配当」と呼ばれます。(法人税法24条1)
    (考え方は「有償減資」や「自己株式の取得」と同様です)。



 

(2) みなし配当額(利益積立金の減少部分)の算定方法

株主に支払った金銭のうち、まず①「資本金等の額」の減少部分を求め、②差引で「利益積立金」の減少部分(みなし配当)を算定します(法施令8条1項)。
 
みなし配当額 = 株主等への支払金銭等 - 左記のうち「資本金等の額」対応部分 (※)
 
(※) 「資本金等の額」対応部分の求め方
 
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「資本金等の額」は、法人税別表5(1)Ⅱの金額です。
この「資本金等の額」を超える部分は「利益積立金」の減少(みなし配当)と取り扱われます。
 
上記の式の意味ですが、株主に支払った金銭には、出資額を「払い戻す部分」も含まれているから、元々出資された金額(資本金等の額)部分は「資本金等の額」から減少させてね!という意味です。
税務上は、株主に支払った金銭のうち、上記金額を超えた部分だけが「利益積立金」の減少 = 「配当」をしたとみなされるんですね。



 

(3) 事例へのあてはめ

5,000 ( 交付金銭 ) - 30,000 × ( 5,000 / 100,000 ) = 3,500 ( みなし配当額 )
 
この式を読み解くと・・以下となります。

  • 株主等への配当(5,000)のうち、簿価純資産額100,000にしめる(減資前)資本金等の額(30,000)の割合分(30%)⇒「減少資本金等の額」1,500
  • 株主への配当(5,000)のうち、「減少資本金等の額」1,500を超えた金額3,500
    ⇒「みなし配当額」(留保利益の払戻)



 

(4) 源泉徴収税額

みなし配当は、「配当所得」となりますので、支払法人側で「源泉徴収義務」が生じます。
3,500 ( みなし配当額 ) × 20.42% ( 源泉所得税率 ) = 715

 
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5. 申告調整(税務調整仕訳)

会計処理と税務処理が異なるため、「申告調整」が必要となります。
税務上は「資本金等の額」と「利益積立金」を減少させる処理となりますので、会計と税務を一致させるため、別表5で申告調整(振替調整)を行います。

(税務調整仕訳)

借方 貸方
資本金等の額
利益積立金
1,500
3,500
資本金
資本準備金
2,500
2,500
  • 税務上の仕訳に合わせるための、振替仕訳になります。
    (会計上の「利益」と、税務上の「所得」に差異はありません)

 

6. 別表の記載

(1) 別表4の記載

会計上の「利益」と税務上の「所得」に差異はありませんが、所得に影響させないように、別表4での調整が必要となります。
なお・・ここでの「別表4の記載」は、後述の「別表5の記載」を理解してから見た方が、わかりやすいかもしれません。

所得の金額の計算に関する明細書

区分 総額 処分
留保 社外流出
当期利益 ・・・
加算 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
みなし配当(※2) 3,500 3,500
減算 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
みなし配当(※1) 3,500 3,500

(※1)別表5と対応して、利益積立金の減少部分を記載します(留保)。
(※2)別表5との関係で、まず(※1)の「減算」を記載しました。
しかし、このままだと・・所得が減少してしまうので、最終所得に影響がないように、(※1)と同額の加算を行います。この処理により、所得への影響は±ゼロとなります。
なお、当該加算は、既に配当として流出済のため、「社外流出」となります。



 

(2) 別表5の記載

① 利益積立金の計算に関する明細書

区分 期首 当期中の増減 差引
利益準備金
・・・
みなし配当 3,500 △3,500
  • 税務上、「資本金等の額」の額を超えた部分は、利益積立金のマイナスとなります。

 

② 資本金等の額の明細書

区分 期首 当期中の増減 差引
資本金 15,000 2,500 12,500
資本準備金 15,000 2,500 12,500
その他資本剰余金 5,000 5,000 0
みなし配当 1,500 5,000 △3,500
  • 緑の数値は、会計処理を示していますので、申告調整ではありません。
    既に、その他資本剰余金への振替処理として、「資本金」「資本準備金」はそれぞれ△2,500されているはずです。
  • 上記会計処理を前提に、いったん会計処理を取り消したうえ(+5,000)、税務上の資本金等の額の減少(△1,500)を計上する申告調整を行います。



 

7. 均等割への影響

平成27年改正により、法人住民税均等割の基準は、以下に改正されました。

(地方税法52条4項)

税務上の「資本金等の額」 < 会計「資本金 + 資本準備金」の場合
→会計「資本金 + 資本準備金」の額を「均等割」の基準とする

 
その他資本剰余金から配当を行った場合、会計上の「資本金 + 資本準備金」は減少します。
一方、税務上の「資本金等の額」の減少額は、「みなし配当」の分だけ、会計上の「資本金 + 資本準備金の減少額」よりも少なくなります。
 
例えば、先ほどの例だと、会計上の「資本金 + 資本準備金」は合計5,000減少するのに対し、税務上の「資本金等の額」は1,500しか減少しません。
 
このことからわかることは・・・
「その他資本剰余金」から配当を行った場合は、最終的に、
 
税務上の「資本金等の額」の残高>会計の「資本金 + 資本準備金」
 
となるケースが多いです。
 
したがって、上記「改正」の影響は受けず、均等割の金額が減少 することが多いです。

 

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