グループ内寄付金がある場合の申告調整2~親⇒子会社への寄付~
目次
グループ法人税制では・・
グループ内の寄付金は、寄付を行った法人は「全額損金不算入」となり、受領した法人は「全額益金不算入」となります。
しかし、寄附を行った法人の株主は、寄附金相当額のうち「持分割合に相当する金額」につき「利益積立金額」を調整(株式簿価修正)する必要があります
(法令9①七、119の3⑥)。
前回は、「100%子会社間での寄付金の申告書の記載方法」をまとめましたが、
今回は、「親⇒子への寄付の場合の申告書」の記載方法をまとめます。
1.例題
2.子会社(寄付を受ける側・ビズ社)
(1)仕訳
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
会計 | 借入金 | 100 | 債務免除益 | 100 |
税務 | 借入金 | 100 | 受取寄付金 | 100 |
申告調整(※) | 債務免除益 | 100 | 受取寄付金 | 100 |
(※)ビズ社では、会計上は「債務免除益」を計上しますが、税務上は「寄付金」認定されるため、申告調整仕訳が出てきます。
ただし、損益的なインパクトはないため、別表4では、寄付金として処理した場合に生じる「受贈益の益金不算入額処理(社外流出)」だけを調整すればよいことになります。
(2)別表の記載
①別表4の記載
(所得の金額の計算に関する明細書)
区分 | 総額 | 処分 | ||
---|---|---|---|---|
保留 | 社外流出 | |||
当期利益 | ||||
加算 | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
・ | ||||
減算 | 受贈益の益金不算入額(※) | 100 | 100 | |
・ |
(※)別表4 16欄で減算します(社外流出)。
①別表5の記載
特に記載ありません。
3.親会社(寄付を行う側&寄付された子会社の株主・クレア社)
クレア社は、寄付を行った立場だけではなく、寄付された子会社の「株主」でもあります。
したがって、「株主としての税務簿価修正」も行わなければならない点、が注意事項です。
(1)仕訳
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
会計 | 債権免除損 | 100 | 貸付金 | 100 |
税務 | 寄付金 | 100 | 貸付金 | 100 |
子会社株式 | 100 | 利益積立金 | 100 | |
申告調整 | 寄付金(※1) | 100 | 債権免除損(※1) | 100 |
子会社株式(※2) | 100 | 利益積立金(※2) | 100 |
(※1)親会社では、会計上は「債権免除損」を計上しますが、税務上は「寄付金」認定されるため、申告調整(科目修正)が出てきます。
ただし、損益的なインパクトはないため、別表4では、寄付金として処理した場合に生じる「寄付金の損金不算入額処理(社外流出)」だけを調整すればよいことになります。
(※2)税務上は、寄付金部分につき子会社株式の「簿価修正」仕訳を行います。
寄付の分、各子会社の純資産が増減している点を反映し、子会社株式の「税務簿価」を修正するイメージです。
詳しくは、グループ法人内取引の取扱いをご参照ください。
(2)別表の記載
①別表4の記載
(所得の金額の計算に関する明細書)
区分 | 総額 | 処分 | ||
---|---|---|---|---|
留保 | 社外流出 | |||
当期利益 | ||||
・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | |
仮計 | ||||
寄付金の損金不算入額(加算)(※1) | 100 | 100 |
(※1)別表4 26欄で加算します(社外流出)
②別表5の記載
(利益積立金の計算に関する明細書)
区分 | 期首 | 当期中の増減 | 差引 | |
---|---|---|---|---|
減 | 増 | |||
利益準備金 | ||||
・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
子会社株式(※2) | 100 | 100 | ||
繰越損益金(※3) | △100 | △100 |
(※2)子会社株式の純資産増減に対応して、子会社株式の簿価調整(利益積立金)を行います。この簿価修正は、「税効果会計」の対象となります。
なお、この簿価修正は、別表4とは連動していないので、別表5に直接入力する必要があります。
(※3) この欄は、申告調整ではなく、元々計上済の「会計上の繰越利益」を表示しています(申告調整と区別するために、斜体で表示)。
(資本金等の額の明細書)
特に記載ありません。
(3)ご参考
参考に、親会社の別表4の記載方法を、もう一つ記載しておきます。
「別表5との整合性を重視した記載方法」です。この方法では、別表4と別表5が連動しますので、別表5に直接入力する必要がなくなります。
(所得の金額の計算に関する明細書)
区分 | 総額 | 処分 | ||
---|---|---|---|---|
保留 | 社外流出 | |||
当期利益 | ||||
加算 | ・・・ | ・・・ | ・・・ | |
債権免除損(※1) | 100 | 100 | ||
減算 | 寄付金(※1) | 100 | 100 | |
・ | ||||
仮計 | △100 | |||
寄付金の損金不算入額(加算)(※2) | 100 | 100 |
(※1)会計上の仕訳を「債権免除損」から「寄付金」に振り替える調整です。
この調整を入れることにより、加算欄の「債権免除損」100は、別表5に自動入力されます。
一方、減算欄の「寄付金」100は社外流出で入力しますので、別表5には転記されません。
(※2)別表4 26欄で加算します(社外流出)
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