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上場に至るまでの審査には、①主幹事証券会社による引受審査と、②証券取引所による審査があります。
取引所の審査はおおむね2~3か月かかりますが、その前の「主幹事証券会社」による引受審査も合わせると、おおむね「半年程度」はかかります。


 

1. 審査の順序

上場審査は、以下の順番で行われます。

証券会社引受部の審査 ⇒ 証券会社審査部の審査 ⇒ 証券取引所の審査

 
審査を行うにあたって、事前に、証券会社から莫大な数の「質問書」が来ます。
会社は、これらに対する回答書を作成、提出することになりますが、ここの作業は、非常に時間や手間がかかる・・とイメージしてもらえたらと思います。
 
その後、各役員などに対しての直接面談があり、ヒアリングが行われます。
ヒアリングの回数は3,4回程度です。
質問の内容は、会社の業績・予算に関するものから、関連当事者、内部管理体制に至るまで多岐にわたります。
担当者によって質問の内容に幅はありますが、これらについて、つじつまの合った説得力のある回答をしなければいけません。

 

2. 審査基準

上場するためには、証券取引所が要求する審査基準をクリアしなければいけません。
審査基準には「形式基準」と「実質基準」の2種類があります。
証券会社は、証券取引所への推薦状を提出する立場にありますので、実質的には、証券会社が審査基準をクリアしているか?を、事前に確認していくことになります。


 

(1) 形式基準

形式基準とは、上場するために最低限クリアしなければならない定量的な基準です。
数値や株数等、客観的な指標ですので、比較的イメージしやすいかもしれません。
市場ごとに、求められる数値は異なっています。
 

(日本取引所グループHP 新規上場基本情報より)

新規情報基本情報


 

(2) 実質基準

証券取引所の審査は、こちらの「実質基準」の審査が中心となります。
形式基準(定量基準)と別に、企業の安定性、健全性、コーポレートガバナンスの遵守性など、上場会社としての質的な面を満たしているか?を確認する基準となります。
具体的な内容は、各市場により若干異なりますが、おおむね似たような基準となっています。
 
「審査での重点項目」を市場別にまとめると、以下のとおりとなります。
数値等では判定できない内容ですので、審査員の心証なども影響します。

 

東証1部
東証2部
マザーズ JQ
(スタンダード)
JQ
(グロース)
企業の継続性及び収益性(※1)
事業計画の合理性 (※2)
企業の存続性 (※2)
企業の成長可能性 (※2)
企業経営の健全性・企業行動の信頼性
コーポレートガバナンス及び内部管理体制の有効性
企業内容等の開示の適正性 (※3)
その他公益又は投資者保護の観点から東証が必要と認める事項 (※4)

 
(※1)東証1部・東証2部
企業の「継続性」や安定的な「収益性」にスポットをあてて審査されます。
 
(※2)東証マザーズ・ジャスダック(スタンダード・グロース)
ベンチャーなどの新興企業が多く上場している市場です。マザーズやジャスダック(スタンダード)は、どちらかというと、企業の成熟度に応じたコーポレートガバナンスや管理体制が問われます。
上場時点でビジネスモデルが完成していない場合であっても、継続的に利益を生むことが評価されれば問題ありません。
 
(※3)企業内容の開示の適切性を担保するため、公認会計士による監査が義務付けられます。
 
(※4)その他必要と認める事項には、株式事務代行機関の設置、指定保管振替機関の取扱同意、株式の譲渡制限解除なども含まれます。

 

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