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非居住者外国法人は、日本で発生した「国内源泉所得」に対してのみ課税されます。

そこで今回は、非居住者・外国法人(以下、「非居住者等」といいます)の「国内源泉所得」の範囲につき解説します。

 

1. 非居住者の課税方法・国内源泉所得の範囲

 

(1) 非居住者の課税方法は3つ

非居住者の課税方法は、所得税申告だけではなく、源泉徴収されるケースがあります。課税方法をまとめると、以下の3つとなります。

申告納税 所得税申告書で総合課税
源泉徴収+申告納税 源泉徴収されたうえで、所得税申告書で総合課税
源泉分離課税 源泉徴収のみで課税関係が完了

 

(2) 非居住者の国内源泉所得とは?

非居住者における「国内源泉所得」は、以下の 17種類となります(所161条、164条)。そのうち、非居住者に支払う際に源泉徴収すべき取引は、所得税法212条に明記されています。
まとめると以下の通りです。(国税庁 源泉徴収のあらまし)
 

種類 内容 PEあり PEなし 源泉有無
1号 PE帰属所得(事業所得) 申告(※1) 不要
2号 国内資産の運用又は保有による所得 申告(※1)
3号 国内資産の譲渡による所得(※3)
4号 組合事業から生ずる利益の配分 源泉+申告(※2) 対象外 20.42%
5号 国内にある土地等又は建物等の譲渡による所得 源泉+申告(※2) 10.21%
6号 国内での人的役務の提供事業の所得 20.42%
7号 国内不動産の貸付による所得 20.42%
8号 債権、預貯金等の利子等の所得 源泉 15.315%
9号 配当等の所得 20.42%
10号 貸付金利子等の所得 20.42%
11号 使用料等の所得 20.42%
12号 給与・報酬・年金・退職金等の所得 20.42%
13号 事業の広告宣伝の賞金の所得 20.42%
14号 生命保険契約に基づく年金等の所得 20.42%
15号 定期積金等の給付補填金等 15.315%
16号 匿名組合契約に基づく利益の分配金 20.42%
17号 その他の国内源泉所得 申告 申告 不要

(※1)所得税の申告納税(総合課税)の対象(源泉徴収なし)
(※2)源泉徴収+所得税申告納税(総合課税)の対象
(※3)PE帰属所得以外は、令第281条第1項第1号~8に記載された資産譲渡に限定(国内土地、建物等、事業譲渡類似の株式等)
 

 
単純に、所得税法上、源泉徴収が必要な所得に該当するものは、源泉徴収が必要となりますが、PEがある場合は、原則として申告が必要となります。
 

2.  外国法人の課税方法・国内源泉所得の範囲

 

(1)  外国法人の課税方法は3つ

外国法人の課税方法は、法人税申告だけではなく、源泉徴収されるケースがあります。課税方法をまとめると、以下の3つとなります。

申告納税 法人税申告書で課税
源泉徴収+申告納税 源泉徴収されたうえで、法人税申告書で課税
源泉分離課税 源泉徴収のみで課税関係が完了

 

(2) 外国法人は、法人税の規定と所得税の規定が適用

外国法人の場合、上記の申告納税(及び源泉徴収+申告納税)の対象となる取引は法人税上規定され、源泉分離課税の対象となる取引は、所得税の規定に従います。
 

(3) 外国法人の国内源泉所得とは?(法138条・法141条)

外国法人における「国内源泉所得」は、以下の 14種類となります。法人税法上規定されている国内源泉所得は、法人税法138条の1号~6号の「6つ」となります。上記の6つの他、所得税法上規定される源泉徴収取引が「8つ」あります(所161⑧~⑪、⑬~⑯)((7)~(12))(所212条)。
したがって、外国法人に課税される所得は、合計14種類となります。まとめると以下の通りです。(国税庁 源泉徴収のあらまし)

 

種類 内容 条文 PEあり PEなし 源泉有無
1号 PE帰属所得(事業所得) 法138条Ⅰ①~⑥ 申告(※1) 不要
2号 国内資産の運用又は保有による所得 申告(※1)
3号 国内資産の譲渡による所得(※4)
4号 国内での人的役務の提供事業の所得(※5) 源泉+申告(※2) 20.42%
5号 国内不動産の貸付による所得 20.42%
6号 その他の国内源泉所得 申告(※1) 不要
(7) 債権、預貯金等の利子等の所得 所161⑧ 申告(※3) 源泉 15.315%
(8) 配当等の所得 所161⑨ 20.42%
(9) 貸付金利子等の所得 所161⑩ 20.42%
(10) 使用料等の所得 所161⑪ 20.42%
(11) 事業の広告宣伝の賞金の所得 所161⑬ 20.42%
(12) 生命保険契約に基づく年金等の所得 所161⑭ 20.42%
(13) 定期積金等の給付補填金等 所161⑮ 15.315%
(14) 匿名組合契約に基づく利益の分配金 所161⑯ 20.42%

(※1)法人税の申告納税の対象(源泉徴収なし)
(※2)源泉徴収+法人税申告納税の対象
(※3)PEに帰属しない場合は、源泉徴収で完了
(※4)PE帰属所得以外は、令第281条第1項第1号~8に記載された資産譲渡に限定(国内土地、建物等、事業譲渡類似の株式等)
(※5)外国法人が役務提供の契約に基づき取得する所得。派遣される非居住者である個人が取得する所得は「給与所得」となるため(所161⑫)、ここには含まれない。

 

3. 源泉徴収が必要な取引

 

(1)  源泉徴収制度

特定の所得につき、その所得支払の際に、支払者が所得税を徴収して納付する制度。源泉徴収は、個人・法人問わず「課税対象となる一定の所得の支払」が行われる場合に必要となります。
 

(2) 源泉徴収される取引

源泉徴収制度の対象となる所得は、所得の受領者の区分ごとに、対象となる所得の種類が定められています。受領者区分ごとにまとめると、以下の3つとなります。
受領者には外国法人も含まれ、源泉徴収の対象は、個人か法人かは問いませんのでご留意ください。

受領者区分 所得の種類
居住者 ●利子・配当
●給与、賃金、賞与及びその他類似の報酬
●退職手当
●一定の専門家に対する報酬・料金等
内国法人 ●利子・配当
非居住者・外国法人 上記1・2参照

 

ただし、租税条約により、国内源泉所得につき免税とされる国もありますので、最終的に各国との租税条約を確認する必要があります。

 

(法第164条《非居住者に対する課税の方法》関係)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/23/01.htm

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