No211.キャリアアップ助成金 正社員化コースとは?
キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、有期・無期雇用労働者を正社員に転換した場合、などに助成される制度です。
助成により、従業員のモチベーション向上や、優秀な人材確保などの効果が期待されます。
時短正社員や、勤務地限定正社員など、「多様な正社員への転換に活用できる制度」という点も特徴的です。
1. 転換パターン&支給額
下記の「3パターン」に該当すれば、助成金の対象となります。
大きな特徴は、以下の2つです。
- 「中小企業事業主」に該当すれば、支給額が多くなる。
- 「生産性向上要件」を満たす場合には、さらに上乗せがある。
転換パターン | 助成額 (一人当たり) |
生産性向上要件満たす場合 | ||
---|---|---|---|---|
転換前 | 転換後 | |||
① | 有期雇用労働者 | 正規雇用労働者 | 57万円 (42.75万円) |
72万円 (54万円) |
② | 有期雇用労働者 | 無期雇用労働者 | 28.5万円 (21.375万円) |
36万円 (27万円) |
③ | 無期雇用労働者 | 正規雇用労働者 | 28.5万円 (21.375万円) |
36万円 (27万円) |
- カッコ書きは「大企業」の場合です。
- ①~③合計で、1年、1事業所あたり「支給申請上限20人」まで。
- 生産性向上要件以外でも、一定の要件に該当する場合には、加算額があります。
(無期雇用労働者とは)
「雇用期間の定めがない労働者」のことを指します。
例えば、勤務時間は短いが、その他の労働条件は「正規雇用労働者」と同じ方などです。
(例)勤務時間8時間の会社で、時短7時間勤務の方など
2. 中小企業事業主の要件
助成額が大きい「中小企業事業主」に該当する要件は、業種によって異なります。
業種ごとに、下記①又は②のどちらかを満たせば「中小企業事業主」となります。
(資本金等のない事業主は、「②常時雇用する労働者の数」により判定します。)
業種 | ①本金の額・出資の額 | ②常時雇用する労働者の数 |
---|---|---|
小売業(飲食業含む) | 5,000万以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億以下 | 100人以下 |
その他の業種 | 3億以下 | 300人以下 |
3. 助成金支給の要件
(1) 対象事業主の要件
細かい要件は他にもありますが、代表的な要件を記載します。
詳しくは、厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内」をご参照ください。
- 雇用保険に加入
- キャリアアップ管理者を置き、キャリアアップ計画を作成(管轄労働局長の認定)
- 「労働者名簿」や「賃金台帳」、「出勤簿」などを整備保管
- 就業規則等に、転換制度(有期 ⇒ 正規 or 無期等)を規定
- 転換後6か月以上の期間、継続雇用 & 6か月分の賃金を支給
- 転換日前日「6か月前~1年経過日」の間に、会社都合による離職がない
- 転換前6か月間賃金 × 1.05 ≦ 転換後6か月間賃金を支給
- 転換後は雇用保険 & 社会保険の被保険者として雇用を行う
- キャリアアップ管理者は、1名必要ですが、特に資格等は要求されていません。
- キャリアアップ計画は、3年~5年の計画期間を定め、事業主が最初に提出するものです。
雇用者申請ごとに提出するものではありません。
(計画変更時は「変更届」の提出。計画期間終了後も継続する場合は「計画」の再提出が必要)
(2) 対象となる労働者の要件
細かい要件は他にもありますが、代表的な要件を記載します。
詳しくは、厚生労働省「キャリアアップ助成金のご案内」をご参照ください。
- 雇用期間通算6ヵ月以上の有期契約労働者 or 雇用期間6ヵ月以上の無期雇用労働者
- 同一業務に6ヵ月以上継続して労働者派遣に従事している派遣労働者
- 「有期実習型訓練」を受講し、修了した有期契約労働者等
- 事業主 or 取締役の3親等以内の親族ではないこと
- 入社時に、正規(無期)雇用労働者 or 多様な正社員での雇用の約束がない
- 有期契約労働者からの転換の場合、転換前にその事業主での雇用期間が3年以下
4. 受給までの流れ
(※)申請期限に注意
転換した対象労働者に対し、正規( or 無期)雇用労働者としての賃金を6ヶ月分支給した日の「翌日から起算して2か月経過時点」が期限となります。
上記例の場合・・3月分給与を4月25日に支給している場合は、6月25日が期限となります。
なお、現在は、事務処理の関係で、実際受給までに半年以上かかるようです。
5. 提出書類
計画時 | キャリアアップ計画書(様式第1号) | (※1) |
---|---|---|
支給申請時 | キャリアアップ助成金支給申請書(様式第3号) | |
別添様式1-1 正社員化コース内訳(様式第3号) | ||
別添様式1-2 正社員化コース労働者詳細(様式第3号) | ||
キャリアアップ計画書(管轄労働局長認定済分) | ||
支給要件確認申立書(共通要領 様式第1号) | ||
就業規則(転換制度が規定されている必要あり) | ||
転換前および転換後の雇用契約書 | (※2) | |
対象者の賃金台帳・出勤簿(転換前後6か月分) | ||
中小企業事業主の場合、中小企業事業主を確認できる書類 | (※3) | |
「支給方法・受取人住所届」 | (※4) | |
「生産性要件算定シート(共通要領 様式第2号)」及び算定根拠書類 | (※5) |
(※1)労働局より、管轄労働局長の受付印押印済のものが返送されます
(※2)雇用から転換後6か月までの間に時給、勤務時間等の労働条件が変更された場合は、変更ごとに雇用契約書を提出する必要があります。
(※3)登記事項証明書 or 様式第4号 事業所確認票
(※4)最初の支給申請の場合のみ(2回目以降は不要)
(※5)生産性要件満たす場合のみ。根拠書類は、損益計算書、総勘定元帳、青色申告決算書などです。
6. 就業規則~転換制度の規定例~
1.転換要件、2.転換時期、3.転換手続を必ず規定する必要があります。
1.勤続xx年以上の者で、本人が希望する場合は、正規雇用に転換させることがある。
2.転換時期は、原則、毎月1日とする。
3.転換手続は、面接及び筆記試験を実施し、合格した場合について転換することとする。
第xx条(無期雇用への転換)
1.勤続xx年以上の者で、本人が希望する場合は、無期雇用に転換させることがある。
2.転換時期は、毎年原則4月1日とする。
3.転換手続は、面接及び筆記試験を実施し、合格した場合について転換することとする。
7. 生産性要件(参考)
生産性要件を満たした場合は、「助成金額」が増額加算されます。
支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、
- 3年度前に比べて6%以上伸びていること
or - 3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること(※)
(※)金融機関から一定の「事業性評価」を得ていることが必要。
「事業性評価」とは、労働局が、事業所の承諾を得た上で、事業の見立てを与信取引等のある金融機関に照会し、その回答を参考にして増額加算の判断を行うもの。
8. 参照URL
(キャリアアップ助成金のご案内)
(書式ダウンロード)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118801.html
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