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法人の場合は、原則として「社会保険加入義務」がありますので、法人設立と同時に、社会保険加入手続きを行うことになります。
しかし、例えば1人社長の場合、設立当初は資金繰りを考えて「自分の役員報酬ゼロ」でスタートする場合もあります。
 
また、既存の会社でも、業績不振等を背景に、受け取っていた役員報酬を、一旦「ゼロ」や「低い水準」に抑えることもあります。
こういった「給料ゼロ」や「給与水準が低い」場合にも、社会保険を負担する必要があるのでしょうか?

 

1. 設立当初の役員報酬をゼロにした場合は?

例えば、設立当初の「役員報酬をゼロ」に設定した場合はどうでしょうか?
 
この点、「社会保険料率表」の「最低限の従業員負担額」は、月額12,000円程度に設定されていますので、仮に、給与額面金額が12,000円より低い場合は、「従業員負担の社会保険料」の天引きが「完全にはできない」ことになります。
 
このように「給与額面」が「最低限の従業員負担額」よりも低い場合は、社会保険への加入自体ができない
⇒社会保険料の支払も発生しません。

 
なお、社会保険に加入できない場合は、「国民健康保険」と「国民年金」に加入する必要があります。


 

2. 支払っていた役員報酬を「ゼロ」や「金額を引き下げた」場合は?

例えば、業績不振等を背景に、既に支払っていた役員報酬を、一時的に「ゼロ」ないし「金額を引き下げた」場合はどうでしょうか?
 
この場合は、当該役員の状況を「総合的に勘案」して、「社会保険被保険者の資格」を喪失するような状況であれば、その後の社会保険支払義務は生じないことになります。
 

日本年金機構 疑義照会回答 抜粋

「役員については・・経営状況に応じて、給料を下げる例は多く・・今後支払われる見込みがあり、一時的であると考えられるため、低報酬金額をもって資格喪失されることは妥当ではない」ことから、総合的な判断が必要・・・

 
「被保険者」の資格喪失の有無は、報酬引き下げが一時的なものなのか?
会社清算を前提としたものなのか?など、
引き下げに至った背景、役員の業務内容などを総合的に勘案して判定されます。



 

3. 休職等の場合は?

従業員が休職する場合など、一時的に給料支給が「ゼロ」になる場合、社会保険「支払義務」や「金額」に影響はあるのでしょうか?
 
結論ですが、休職による「社会保険支払義務」や「金額」への影響はありません。
社会保険は、毎年4月~6月分の平均給与より算定した「標準報酬月額」をもとに、1年間の社会保険料が決まります。
 
したがって、たとえ休職の場合でも

  • 既に決定された「標準報酬月額」に基づく毎月の社会保険支払義務は継続します。
  • また、「標準報酬月額」を引き下げる「月額変更届」提出の要件にもあてはまりませんので、金額への影響もありません。
  • 受給者側も、休職によって「社会保険の受給資格」がなくなるわけではありません。
    退職や解雇等、雇用形態の変更があった場合のみ、受給資格を喪失します。
  • 休職中の「給料がゼロ」の場合、雇用保険や所得税はかかりません。

 
なお、休職中に「給料」が支給されない場合、「休職期間の社会保険従業員負担部分」は、給与明細から天引きできなくなります。
こういった場合は、一般的に、会社が年金事務所に立替払のうえ、休職復帰後の給料から天引きする等の処理が行われます。

 

4. ご参考 社会保険資格喪失時の手続・支払停止時期

(1) 提出資料

年金事務所に、以下の書類を提出します(事実発生から5日以内)

  • 健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届
  • 報酬月額変更届(「給料なし」等の記載)

 
添付書類は特にありませんが、役員の場合は「役員報酬変更議事録」を提出します。
なお、会社を廃業する場合は、合わせて「全喪届」を提出します。



 

(2) 支払停止時期

社会保険料は、毎月、前月分を支払っていますので、「資格喪失届」を提出した翌月から、社会保険の支払いはストップします。



 

(3) 社会保険資格喪失後

国民健康保険、国民年金への加入が必要となります。

 

5.YouTube

 
YouTubeで分かる給与ゼロの場合の社会保険
 

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