No14.デットエクイティスワップ(DES)とは?
1.DESとは?
デット・エクイティ・スワップとは、借入金(DEBT)と資本(EQUITY)を交換(SWAP)する、つまり債務を株式化することです。会社は、債権者への借入金を返済するかわりに、株式を発行して株主になってもらいます。
通常、過剰債務を保有する会社の「再建手段」として利用されるケースが多いです。
2.方法
実務上は、債権者が(債務者への貸付金を)現物出資する「現物出資方式」が一般的です。
この「現物出資方式」では、原則として検査役の調査は不要です。
3.メリットとデメリット
立場 | メリット | デメリット |
---|---|---|
債務者 |
|
|
債権者 |
|
|
経営者 |
|
|
4.税務処理
立場 | 税務処理 |
---|---|
債務者 |
|
債権者 |
|
(※)非適格現物出資の規制
- 増加資本金等の額・・債権の時価相当額
⇒債権の時価相当額が、「消滅債務簿価」を下回る場合は、債務消滅益が計上されます。
5.会計処理
債権の券面額を、資本金等に振替えます(新株発行同様、払込金額の2分の1まで準備金に計上可)。
したがって、会計と税務処理に差が生じるため、債務消滅益を認識する場合は、申告調整を行います。
6.期限切れ欠損金の損金算入
非適格DESを前提にすると、債務超過の会社では、時価ゼロと判断される結果、債務消滅益が計上される(=税金がかかる)可能性があります(債務超過の場合に、必ず時価がゼロというわけではありません)。
企業再生の場合は、これがかなり負担になることも多いです。
そこで、税務上は、法的整理等の一環でのDES債務消滅益は、「期限切れ欠損金」の利用が可能とされています。
ただし、私的整理は対象外ですので(経営者個人の単独DES等)、十分ご留意ください。
7.相続税対策としてDESのリスク
オーナーが保有する、「自分の会社に対する貸付金」は、原則的には券面額で評価され、相続税も課税されます。
(たとえその会社が債務超過であっても)
そこで、相続税対策として、貸付金を「DES」により「株式」に変えることで、評価を下げる手法があります。
(債務超過会社では、「株式」の方が評価が下がるため)
しかし、こういった相続対策目的のDESは、同族会社の行為否認のリスクがある点、注意です
(相続税法64条1項)。
DESを実行するにあたっては、相続対策ではなく、その他の理由、例えば将来株価が上がる計画があるなど、合理的な理由が必要です。
なお、法的整理でなくても、「業績不振や重大な損失を受けたため、事業を廃止 or 6か月以上休業」の場合は、貸付金の評価引き下げが可能です(財産基本通達205)。
むしろ、相続対策では「こちらの規定の適用」を検討することも考えられます。
8.DDS(デッドデッドスワップ)とは?
借入金を、資本金に振替えるわけではなく、既存借入金を、劣後借入金として「借り換える」手法です。
劣後借入金とは、弁済順位が他の債務より「劣る」借入金のことです。
(会社倒産の場合も、他の債務者への返済が優先され、その後、残額がある場合のみ返済を受けられるもの)
中小企業で「金融機関等主体の再生」の場合は、DDSが多いです。
新株発行が必要なDESと比べて、手続面では容易ですので。
また、一定要件を満たす「資本的劣後ローン」は、資本とみなされるため、債務者区分がよくなる場合もあります。
<< 前の記事「減資の方法」次の記事「ROE・ROA・FLとは?」 >>