財務戦略 - Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア https://www.creabiz.co.jp 説明 Wed, 24 Jan 2024 06:28:09 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.3 No229.【パターン別】法人化で税金が安くなる「利益」の目安をシミュレーション https://www.creabiz.co.jp/zaimu/%e5%80%8b%e4%ba%ba%e4%ba%8b%e6%a5%ad%e4%b8%bb%e3%81%8c%e6%b3%95%e4%ba%ba%e5%8c%96%e3%82%92%e8%80%83%e3%81%88%e3%82%8b%e3%80%8c%e5%88%a9%e7%9b%8a%e3%80%8d%e3%81%ae%e7%9b%ae%e5%ae%89.html/ Fri, 17 Jul 2020 04:40:12 +0000 https://www.creabiz.co.jp/?p=11441     個人で事業をされていて、ある程度の規模になると、「法人化」を検討する機会もあると思います。 信用力の強化や、許認可・営業の関係、節税目的など、背景はさまざまだと思います。   今回は […]

The post No229.【パターン別】法人化で税金が安くなる「利益」の目安をシミュレーション first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
GD096
 

 

個人で事業をされていて、ある程度の規模になると、「法人化」を検討する機会もあると思います。
信用力の強化や、許認可・営業の関係、節税目的など、背景はさまざまだと思います。
 
今回は、「個人と法人では税金はどちらが安いのか?」という観点で、個人事業主が法人化を考える「利益水準」の目安を探ります。

 

1. 税率の比較

 

(1) 法人税率(2020年10月以降開始する事業年度)

中小企業の法人税等の「法定実効税率」は、年間所得800万円までは、一律約21%程度です
(年間所得800万円を超える金額は、一律32%程度)。
 
「法定実効税率」とは、課税所得に対する法人税等(法人税・住民税、事業税)の割合のことです。

 

(2) 所得税率

所得税等の税率は、課税所得に応じた「累進課税」となっています。
参考に、課税所得に対する所得税等(所得税・住民税)の割合を「一番右」に記載しています。
 

(所得+住民税+復特所得税率。事業税は除く)

所得税 住民税 参考
(所得+住民税率)
実効税率
課税所得 税率 控除額
(円)
税率
以下
0円 195万円 5% 0 10% 15.1%
195万円 330万円 10% 97,500 10% 15.1%~17.2%
330万円 695万円 20% 427,500 10% 17.2%~24.1%
695万円 900万円 23% 636,000 10% 24.1%~26.3%
900万円 1,800万円 33% 1,536,000 10% 26.3%~35.0%
1,800万円 4,000万円 40% 2,796,000 10% 35.0%~43.7%
4,000万円 45% 4,796,000 10% 43.7%~
  • 事業税(※)は、算定方法が異なるため「上記表」には含まれていない。
  • (※)個人事業税の計算(事業所得 – 290万)× 5%(業種によって%は異なる)

 

(3) 結論

法人税の「実効税率」は、概ね一定であるのに対し、所得税等の税率は、所得が多くなれば高くなる(累進課税)ため、ある程度の所得(=利益)以上になれば、法人化することにより、法人税の方が安くなります。


 

2. 単純な「税率表比較」では結論は出ない!

実は・・個人から法人化を考える「利益水準」の目安は、上記の税率比較だけでは答えはでません。
なぜなら、以下の影響があるためです。

 

(1) 給与支払による所得分散効果

法人の場合は、自分自身に給与を支払うことが可能です。
法人から個人に給与を支払えば、法人側の利益圧縮を通じて、法人税を引き下げることができますが、一方で個人側には所得税が発生します。
ただし、個人所得税は、「所得が低い」時期は、税率が低いため、法人から個人への給与支払により「法人税」と「個人所得税」を合算したトータルの税金は、引き下がる可能性があります。

 

(2) 給与所得控除の存在

また、給与受取側の個人には、「給与所得控除」というものがあり、税率比較だけでは把握できない節税効果が生じます。給与所得控除については、後ほど説明します。

 

(3) 結論

個人と法人の税金を比較する際は、給料を支払った結果、支払側で節約できる税金と、受取側で発生する税金を合計して、トータルで安くなるか?という観点で検討します。
つまり「給与支払後の支払側+受取側合算の税額で比較」すれば、個人と法人の税金はどちらが安いか?法人化を考える「利益水準」の目安が見えてきます。

 

3. 給与所得控除とは?

 

(1) 給与所得控除

「給与所得控除」とは、受け取った給与につき、領収書がなくても「額面金額」に応じて最初から認められる経費です。給与にかかる所得税は、以下の式で計算します。

(給与 – 給与所得控除 – 各種控除)× 税率

 
給料を支払う場合、この「給与所得控除」の存在により、支払側と受取側を合計した税額は、税率差以上に引き下がります。

仮に「給与所得控除」がない場合、①支払側は支払額が「経費」②受取側は同額が「収入」となり、両者合わせると±ゼロです(=節税効果は税率差のみ)。
しかし、実際は、給与受取側に「給与所得控除」が認められ、所得税が課税されない部分が生じます。
したがって、給与を支払うことで、支払側+受取側合算の税額は、「給与所得控除」の分だけ課税対象が少なくなる!ということになります。
 

(給料支払側+受取側合算で考える)

200716creabiz2
給料支払側+受取側全体で考えると、①-②=ゼロだが、給与受取側は、給与所得控除が差し引かれた③が課税対象となるため、「給与所得控除」の分だけお得!

 

(2) 給与所得控除の金額(令和2年以降)

以下の通りです。
結構な額の「給与所得控除」が認められていますね。
 

(給与所得控除の率)令和2年以降

給与の額 給与所得控除の額
以下
55万円 55万円
55万円 180万円 収入 × 40% – 10万円
180万円 360万円 収入 × 30% + 8万円
360万円 660万円 収入 × 20% + 44万円
660万円 850万円 収入 × 10% + 110万円
850万円 195万円(上限)

 
上記をもとに、具体例で、「個人事業主が法人化を考える利益水準の目安」を探ります。

 

4. 具体例(1人社長の場合)

  • 事業利益は100万~400万のパターン(青色申告特別控除・給与控除前)。
  • 個人事業主の場合、青色申告特別控除65万、その他の所得控除は50万円とする。
  • 法人化した場合、利益は全額給与で消し、最終利益ゼロにする
  • 個人住民税率は、簡便的に課税所得 × 10%とし、個人事業税は無視する。
  • 法人にかかる均等割は7万円とする。

 

(1) 個人事業主(所得税)の場合

例えば、事業利益200万円の場合、所得税等は約13万円となります。
事業利益ごとの所得税等概算金額は、以下の通りとなります(表の見方は、以下同様)。

(記載税額は概算金額)
事業利益 100万 200万 300万 400万
所得税 0万円 13万円 28万円 47万円
  • 個人事業主の場合、ご自身に給与を支払うことは認められませんので、ダイレクトに「事業利益」に対して、所得税が課税されます。

 

(2) 法人化した場合

(記載税額は概算金額)
事業利益 100万 200万 300万 400万
法人税 7万円 7万円 7万円 7万円
所得税 0万円 12万円 23万円 35万円
合 計 7万円 19万円 30万円 42万円
  • 法人化した場合、法人から個人(自分自身)へ給与支払が可能です。
    給与支払により、法人の事業利益をゼロにすれば、法人税等は均等割のみの負担になります。
  • 一方、個人側は、給与所得につき所得税が課税されますが、「給与所得控除」の分だけ、所得税額は低く収まります。

 

(3) 結論

1人社長の場合、事業利益が300万円を超えたあたりで、法人化した方がトータルの税金総額は安くなる、という結論になりました。
青色申告でない場合は、さらに低い利益水準でも法人化した方がお得ともいえますね。

 

5. 消費税の観点

上記と別の観点として、「消費税納税義務の発生時期」で「法人化の目安」を考える場合もあります。
消費税は「課税売上高」が1,000万円を超えた2年後から納税義務が発生します。

例えば、個人事業主が「消費税納税義務者」となった際に、新たに法人を設立すれば、法人と個人は別人格のため、法人設立後、2年間は原則として消費税納税義務が生じません。
 
この観点から、法人化の目安として、消費税納税義務が生じる「課税売上が1,000万円を超えた2年後」という選択肢もあります。

 

6. 留意事項

今回は、「税金の観点」で「法人化の目安」をまとめましたが、現実的には、法人化して「給与」を支払う場合は、給料金額に応じた「社会保険料の負担」が発生します。
したがって、厳密に比較する場合は、税金の観点だけではなく、社会保険へのインパクトも考慮する必要があります。

 

7. ご参考~配偶者に給与を支払う場合~

個人事業主の場合、税務署に事前届出すれば、配偶者に給与支給が可能です(専従者給与)。
所得税は、所得が多くなれば税率は高くなるため(累進課税)、所得はできるだけ分散させる方が税金は安く収まります(所得分散効果)
個人事業主が、配偶者に給与を支払う場合は、所得税圧縮インパクトが高くなるため、上記4(具体例)の結論よりも、法人化すべき「利益水準」の目安は、若干上がります。
 

  • 事業利益は400万~700万のパターン(青色申告特別控除・給与控除前)。
  • 個人事業主の場合、青色申告特別控除65万、その他の所得控除は50万円とする。
  • 個人事業主の場合、上記利益の半分は、配偶者に専従者給与として支払うものとする。
  • 法人化した場合、利益は全額給与(社長配偶者折半)で消し、最終利益ゼロにする。
  • 配偶者の所得控除は50万円とし、配偶者には給与以外の所得はないものとする。
  • 個人住民税率は、簡便的に課税所得 × 10%とし、個人事業税は無視する。
  • 法人にかかる均等割は7万円とする。

 

(1) 個人事業主(所得税)の場合

(記載税額は概算金額)
事業利益 400万 500万 600万 700万
所得税(本人) 13万円 20万円 28万円 37万円
所得税(配偶者) 12万円 18万円 23万円 28万円
合 計 25万円 38万円 51万円 65万円
  • 個人事業主の場合、配偶者に給与を支払えば、ご自身+配偶者トータルでの所得税総額は安くなります(所得分散効果)。

 

(2) 法人化した場合

(記載税額は概算金額)
事業利益 400万 500万 600万 700万
法人税 7万円 7万円 7万円 7万円
所得税(本人) 12万円 18万円 23万円 28万円
所得税(配偶者) 12万円 18万円 23万円 28万円
合 計 31万円 43万円 53万円 63万円
  • 法人化した場合、法人から個人(ご自身+配偶者)への給与支払が可能です。
    給与支払により、法人の事業利益をゼロにすれば、法人税等は均等割のみの負担になります。
  • 一方、個人側は、給与所得につき所得税が課税されますが、「給与所得控除」の分だけ、所得税額は安くなります。

 

(3) 結論

配偶者に給与を支払う場合は、事業利益が700万円程度になれば、法人化した方がトータルの税金総額は安くなる、という結論になりました。
 
上記4「具体例(1人社長の場合)」と比べると、法人化した方が、税金が安くなる「利益水準」は高くなりました。これは、個人事業主において「配偶者に給与を支払う」ことによる「所得税圧縮効果」が結構ある、ということを示しています。

 

8. YouTube

 
YouTubeで分かる「法人化する利益の目安」
 

【関連記事】





The post No229.【パターン別】法人化で税金が安くなる「利益」の目安をシミュレーション first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
No227.【役員報酬】税金が安くなる役員報酬の決定方法 https://www.creabiz.co.jp/zaimu/%e7%a8%8e%e9%87%91%e3%81%8c%e5%ae%89%e3%81%8f%e3%81%aa%e3%82%8b%e5%bd%b9%e5%93%a1%e5%a0%b1%e9%85%ac%e3%81%ae%e9%87%91%e9%a1%8d.html/ Fri, 12 Jun 2020 05:00:07 +0000 https://www.creabiz.co.jp/?p=11304     前回の続きになります。 経営者の方なら、一度は「自分の役員報酬をいくらにすればよいか?」を考えたことがあると思います。 役員報酬を高く設定すれば、法人税は安くなる一方、個人所得税と社会保険料は […]

The post No227.【役員報酬】税金が安くなる役員報酬の決定方法 first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
GD095
 

 

前回の続きになります。
経営者の方なら、一度は「自分の役員報酬をいくらにすればよいか?」を考えたことがあると思います。
役員報酬を高く設定すれば、法人税は安くなる一方、個人所得税と社会保険料は高くなります。
コストが一番安くなる「役員報酬」の額を設定したい!というのは、経営者として当然の検討事項だと思います。
 
しかし、この論点は、①社会保険と②税金へのインパクトという「2ファクター」を考慮する必要があるため・・なかなか難しい論点になります。
前回、①社会保険への影響についてお伝えしましたので、今回は②税金へのインパクト(「所得税率」と「法人税率」の比較)という観点で、役員報酬の適正価額を探ります。
 
今回のテーマは、あくまで方向性を示すことが趣旨ですので、その点ご了承ください。


 

1. 法人税率(2020年10月以降開始する事業年度)

中小企業の「法定実効税率」は、年間所得800万円までは約21%程度です
(年間所得800万円を超える金額は、32%程度)。


 

2. 個人の給与にかかる税額(所得税)

個人の給与にかかる税額は、以下の計算式で算定されます。

(給与 – 給与所得控除 – 各種控除)× 所得税率


 

(1) 給与所得控除

給与については、額面金額に応じた「給与所得控除」という「経費」が自動的に認められます。
 

(給与所得控除の率)令和2年以降

給与の額 給与所得控除の額
以下
55万円 55万円
55万円 180万円 収入 × 40% – 10万円
180万円 360万円 収入 × 30% + 8万円
360万円 660万円 収入 × 20% + 44万円
660万円 850万円 収入 × 10% + 110万円
850万円 195万円(上限)

 


 

(2) 所得税率

所得税等の税率は、以下の通りです。
参考に、課税所得に対する税金負担率の目安を「一番右」に記載しています。
 

(所得+住民税+復特所得税率。事業税は除く)

所得税 住民税 参考
(所得+住民税率)
実行税率
課税所得 税率 控除額
(円)
税率
以下
0円 195万円 5% 0 10% 15.1%
195万円 330万円 10% 97,500 10% 15.1%~17.2%
330万円 695万円 20% 427,500 10% 17.2%~24.1%
695万円 900万円 23% 636,000 10% 24.1%~26.3%
900万円 1,800万円 33% 1,536,000 10% 26.3%~35.0%
1,800万円 4,000万円 40% 2,796,000 10% 35.0%~43.7%
4,000万円 45% 4,796,000 10% 43.7%~
  • 事業税(※)は、算定方法が異なるため「上記表」には含まれていない。
  • (※)個人事業税の計算(事業所得 – 290万)× 5%(業種によって%は異なる)


 

3. 具体例(1人社長の場合)

オーナー社長1人のみの会社を前提に、役員報酬差引前利益パターンごとに、シミュレーションします。

(前提条件)

  • 社長個人の所得控除は、100万円あるものとする。
  • 法人税は、実効税率21%で計算する(均等割は無視)。
  • 簡便的に、住民税率は課税所得 × 10%で算定する。
  • 簡便的に、個人事業税は無視する。


 

(1) 法人利益(役員報酬差引前) 600万円の場合

例えば、法人に利益300万円を残して、個人に300万円の報酬を支払う場合は、
法人税 約63万円 + 個人所得税 約16万円 = 合計税額 約79万円になります。
配分パターンごとの税額をまとめると、以下の表のとおりとなります(以下の表、すべて同様です)。
 

(記載税額は概算金額)
法人の利益/
社長の報酬
法人300万
社長300万
法人200万
社長400万
法人100万
社長500万
法人利益0円
社長600万
法人税 63万円 42万円 21万円 0円
所得税 16万円 27万円 42万円 58万円
合 計 79万円 69万円 63万円 58万円
  • 法人利益をゼロにし、利益部分は全額報酬で支払う方が税金総額は安くなる。


 

(2) 法人利益(役員報酬差引前) 700万円の場合

(記載税額は概算金額)
法人の利益/
社長の報酬
法人300万
社長400万
法人200万
社長500万
法人100万
社長600万
法人利益0円
社長700万
法人税 63万円 42万円 21万円 0円
所得税 27万円 42万円 58万円 84万円
合 計 90万円 84万円 79万円 84万円
  • 法人利益(役員報酬差引前)が、700万円程度を超えてくると、法人に若干利益を残した方が、税金総額は安くなる。


 

(3) 法人利益(役員報酬差引前) 800万円の場合

(記載税額は概算金額)
法人の利益/
社長の報酬
法人300万
社長500万
法人200万
社長600万
法人100万
社長700万
法人利益0円
社長800万
法人税 63万円 42万円 21万円 0円
所得税 42万円 58万円 84万円 111万円
合 計 105万円 100万円 105万円 111万円
  • 同上


 

(4) 法人利益(役員報酬差引前) 1,200万円の場合

(記載税額は概算金額)
法人の利益/
社長の報酬
法人300万
社長900万
法人200万
社長1000万
法人100万
社長1100万
法人利益0円
社長1200万
法人税 63万円 42万円 21万円 0円
所得税 139万円 170万円 203万円 236万円
合 計 202万円 212万円 224万円 236万円
  • 法人に300万以上利益残した方が、税金総額は安くなる。


 

(5) 結論

以下の結論となりました。

  • 1人会社の場合、法人利益(役員報酬差引前)600万円程度までは、全額役員報酬で支払う方が、税金総額は安く収まる。
  • 1人会社の場合、法人利益(役員報酬差引前)が600万円程度を超えてくると、少し法人に利益残した方が、税金総額は安くなる。
  • 所得控除の額は各人異なるため、各人の状況で利益分岐点は変動する。


 

4. 配偶者に給料を支給する場合

所得税は「累進課税」のため、所得が多くなれば「税率」は高くなります。
したがって、例えば、社長1人に600万円支払うよりも、社長300万円、配偶者300万円など「分散」して支払う方が「家族全体の所得税」は安くなります(所得分散効果)。
 
上記の例をもとに、法人利益(役員報酬差引前)を、社長と配偶者に折半で支払った場合を検討します。
結論的には、1人社長だけに役員報酬を支払う場合と比べて①税金総額は安くなり、②全額報酬で支払って税金総額が安く収まる「法人利益」の上限は上昇します。

(前提事項)

  • 1人社長以外に、奥様が役員として勤務している。
  • 所得控除は社長100万円、奥様50万円あるものとする。
  • 法人税は、実効税率21%で計算する(均等割は無視)。
  • 簡便的に、住民税率は課税所得 × 10%で算定する。
  • 簡便的に、個人事業税は無視する。


 

(1) 法人利益(役員報酬差引前) 600万円の場合

(記載税額は概算金額)
法人の利益/
社長の報酬
奥様の給与
法人300万
社長150万
奥様150万
法人200万
社長200万
奥様200万
法人100万
社長250万
奥様250万
法人利益0円
社長300万
奥様300万
法人税 63万円 42万円 21万円 0円
所得税(社長) 0円 5万円 11万円 16万円
所得税(奥様) 8万円 13万円 18万円 23万円
合 計 71万円 60万円 50万円 39万円
  • 法人利益をゼロにし、利益部分は全額報酬で支払う方が税金総額は安くなる。
  • 1人社長に全額払する場合と比べて、配偶者と折半する方が税金総額は安くなる。


 

(2) 法人利益(役員報酬差引前) 700万円の場合

(記載税額は概算金額)
法人の利益/
社長の報酬
奥様の給与
法人300万
社長200万
奥様200万
法人200万
社長250万
奥様250万
法人100万
社長300万
奥様300万
法人利益0円
社長350万
奥様350万
法人税 63万円 42万円 21万円 0円
所得税(社長) 5万円 11万円 16万円 21万円
所得税(奥様) 13万円 18万円 23万円 29万円
合 計 81万円 71万円 60万円 50万円
  • 同上


 

(3) 法人利益(役員報酬差引前) 800万円の場合

(記載税額は概算金額)
法人の利益/
社長の報酬
奥様の給与
法人300万
社長250万
奥様250万
法人200万
社長300万
奥様300万
法人100万
社長350万
奥様350万
法人利益0円
社長400万
奥様400万
法人税 63万円 42万円 21万円 0円
所得税(社長) 11万円 16万円 21万円 27万円
所得税(奥様) 18万円 23万円 29万円 36万円
合 計 92万円 81万円 71万円 63万円
  • 同上


 

(4) 法人利益(役員報酬差引前) 1,200万円の場合

(記載税額は概算金額)
法人の利益/
社長の報酬
奥様の給与
法人300万
社長450万
奥様450万
法人200万
社長500万
奥様500万
法人100万
社長550万
奥様550万
法人利益0円
社長600万
奥様600万
法人税 63万円 42万円 21万円 0円
所得税(社長) 34万円 42万円 50万円 59万円
所得税(奥様) 44万円 52万円 62万円 74万円
合 計 141万円 136万円 133万円 133万円
  • 法人利益(役員報酬差引前)が1,200万円程度を超えてくると、法人に若干利益を残した方が、税金総額は安くなる。
  • 1人社長に全額払する場合と比べて、配偶者と折半する方が税金総額は安くなる。


 

(5) 結論

配偶者に報酬を支払う場合は、1人社長に全額報酬を支払う場合と比較して、以下の結論が得られました。

  • 全額報酬で支払っても税金総額が安く収まる法人利益(役員報酬差引前)の上限は上昇する(1人社長のみの場合600万円 ⇒ 配偶者折半の場合1,200万円)。
  • 所得分散効果により、家族全体の所得税総額は安くなる。



 

5. 注意点

あくまで今回は、役員報酬が与える「税金」へのインパクトの論点に絞っています。
前回お伝えした通り、役員報酬の額は、社会保険にも影響します。
 
前回、社会保険の費用対効果の観点では、「役員報酬金額は少ないほうが効果的」という結論になりましたので・・それとの比較になります。
難しいですね・・
結論的には、「高すぎず、安すぎず、生活できるレベルでそこまで高くない役員報酬の設定で、社会保険と税金を抑える」というくらいが無難ではないでしょうか。

 

<< 前の記事「個人事業主が法人化を考える「利益水準」の目安」次の記事「社会保険の費用対効果で役員報酬を決める」 >>

 

【関連記事】

The post No227.【役員報酬】税金が安くなる役員報酬の決定方法 first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
No226.社会保険の費用対効果で役員報酬を決める https://www.creabiz.co.jp/zaimu/226.html/ Tue, 09 Jun 2020 05:00:43 +0000 https://www.creabiz.co.jp/?p=11291     経営者の方なら、一度は「自分の役員報酬をいくらにすればよいか?」を考えたことがあると思います。 役員報酬を高く設定すれば、法人税は安くなる一方、個人所得税と社会保険料は高くなります。 コストが […]

The post No226.社会保険の費用対効果で役員報酬を決める first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
GD094
 

 

経営者の方なら、一度は「自分の役員報酬をいくらにすればよいか?」を考えたことがあると思います。
役員報酬を高く設定すれば、法人税は安くなる一方、個人所得税と社会保険料は高くなります。
コストが一番安くなる「役員報酬」の額を設定したい!というのは、経営者として当然の検討事項だと思います。
しかし、この論点は、①社会保険と②税金へのインパクトという「2ファクター」を考慮する必要があるため・・なかなか難しい論点になります。
 
そこで、まず今回は、①社会保険の観点、つまり「厚生年金支払額」と「将来受け取る年金」の費用対効果の観点で、「役員報酬」の適正価額を探ります(健康保険は無視します)。
次回は、②税金の観点で役員報酬の適正価額をまとめます。

 

1. 厚生年金保険の支払と受取の関係

(1) 毎月支払う厚生年金保険料の額

2020年6月時点の「厚生年金保険料率」は18.3%です。
実は、この「料率」・・どんどん上昇していっています。
保険料の負担は「法人」「従業員」の折半となりますが、オーナー社長の立場では、「法人」「個人」負担額どちらにしても、結局、自分の財布から出ていくので、あまり「両者を区別」する意味はありません。
したがって、オーナー社長の立場で「厚生年金」の費用対効果を検討する場合は、折半した「従業員負担額」ではなく、支払総額(=法人 + 従業員負担額合計)をコストとして意思決定すべきことになります。
 
例えば、2020年現在、役員報酬を10万円(標準報酬月額98,000円)に設定した場合、毎月年金事務所に支払う額は、17,934円(98,000 × 18.3%)となります(会社負担額・従業員負担 各8,967円)。
オーナー社長の場合、この金額を将来回収できるか?という観点で、意思決定を行います。


 

(2) 将来受け取る年金の額

厚生年金に加入すれば、国民年金も自動加入となり、将来的には「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の両方を受け取ることができます(10年以上支払わないと「受給権」はありません)。
 
例えば、2020年現在、役員報酬を10万円に設定した場合、1か月厚生年金を支払うごとに、毎月受け取る年金は2,173円増えていく計算になります(2003年4月以降加入の場合)。

  • 老齢基礎年金・・780千円 ÷ 480か月(12ヶ月 × 40年)= 1,625円
  • 老齢厚生年金・・100千円 ×(5.481/1,000)× 1ヶ月 = 548円

合計2,173円
(受取額の計算方法は「コチラ」をご参照ください)


 

(3) 費用対効果は?

上記の支払と受取をまとめると、例えば、役員報酬を10万に設定した場合、「17,934円/月の支払に対して、将来2,173円/月を受け取れる」ということになります。
もちろん、長生きすればするほど年金の「受取期間」は長くなりますので、どこかで損益分岐となる(=回収できる)時期が来るはずです。
 
具体例で計算してみます。


 

2. 回収期間の具体例(1人社長の場合)

1人会社(オーナー社長1人のみの会社)を前提にします(他の従業員はいない)。

  • 2020年4月に40歳で会社を設立し、自分の役員報酬を10万円/月と設定した。
  • 今後20年間、役員報酬10万円(増減なし)に対応する厚生年金を支払うものとする。
    (厚生年金支払額 17,934円/月、将来の年金受取額 2,173円/月(2020年現在))
  • 40歳までに支払っていた国民年金・厚生年金等は無視。

 

① 厚生年金支払総額(20年)

17,934円/月 × 240か月(20年)= 4,304千円

② 将来毎年受け取れる年金(65歳以降)

2,173円/月 × 240か月(20年)= 521千円

③ 回収期間

上記① ÷ ② ⇒ 4,304千円 ÷ 521千円 = 約8.3年

④ 結論

20年間、役員報酬10万に対応する厚生年金を支払った場合、8.3年で回収できる
(=65歳支給開始の場合は、73.3歳くらいで元が取れる)。

 
平均寿命を考えると、役員報酬10万の場合は、意外とお得かもしれませんね。


 

3. 役員報酬を2倍にした場合、受取額は2倍になる?

では、役員報酬の額を、倍の「20万円/月」に設定した場合、支払額と受取額の関係はどうなるでしょうか?
まず、役員報酬が倍になれば、毎月の年金「支払額」は、おおむね「倍」になります。
 
ということは、将来の年金受取額も「倍」の結果になれば、役員報酬10万円/月の場合と同様に、「おおむね8.3年程度」で、元が取れる計算になります。
 
検証してみます。
 

(20年間 厚生年金を支払った場合)

役員報酬金額 年金支払総額(A) 増加割合 年金受取額(B) 増加割合 回収期間(C)=(A)÷(B) 回収年齢 65歳+(C)
10万円 4,304千円 1倍 521千円 1倍 8.2年 74歳
20万円 8,784千円 2倍 653千円 1.25倍 13.5年 79歳
30万円 13,176千円 3倍 784千円 1.5倍 16.8年 82歳
40万円 18,007千円 4倍 916千円 1.75倍 19.7年 85歳
50万円 21,960千円 5倍 1,047千円 2.0倍 21.0年 86歳


 

(1) 結果

上記の表でわかるとおり、役員報酬を2倍にした場合、厚生年金支払額は概ね2倍になりますが、将来の年金受取額の増加割合は1.25倍程度にとどまっています。
つまり・・役員報酬を2倍にしても、受取額は1.25倍程度にとどまり、結論「役員報酬を倍にして厚生年金支払額が増えても、受取額で回収できる期間は従前より長くなる」・・という結果に至りました。
 
何歳まで生きるか?なんて誰もわからないですが・・回収期間が長くなるリスクを考えると、社長自身の役員報酬は、10万程度が一番無難なのかもしれませんね。


 

(2) ご参考~年金受取額の計算根拠~

役員報酬金額 受取額/月 受取額/240カ月
老齢基礎年金(固定) 老齢厚生年金 合計
100千円 1,625円 548円 2,173円 521千円
200千円 1,625円 1,096円 2,721円 653千円
300千円 1,625円 1,644円 3,269円 784千円
400千円 1,625円 2,192円 3,817円 916千円
500千円 1,625円 2,740円 4,365円 1,047千円

 
「老齢基礎年金」受取額は、役員報酬に比例しない「固定額」。
つまり、役員報酬が低い間は「老齢基礎年金」の構成割合が大きく、支払と受取額が比例しない原因となる。

 

4. 厚生年金はお得なのか?

(1) 厚生年金は相当お得

上記より、役員報酬を増額した場合、厚生保険の「費用対効果」はそこまで高まらないことがわかりました。
ただし、この結論は「厚生年金自体の加入が損」と言う結論では全くありません。
 

なぜなら、厚生年金に加入=国民年金に自動加入となる結果、「少ない支払金額で将来の年金受取額は増える」ためです。
国民年金支払額は一律16,540円/月(2020年現在)に対し、役員報酬10万の場合の厚生年金支払額は17,934円。
毎月の支払は1,000円程度多くなりますが、将来受け取る額は、国民年金だけの方と比べて、548円/月も多くなります。
 

単純に換算すると、毎年の厚生年金支払額は、「将来年金を2年弱受け取れば回収できる」(1,000円 ÷ 548円 = 1.82年)という計算になりますので、「相当お得」という結論になります。


 

(2) 配偶者がいる場合はもっとお得

また、配偶者がいる場合は、上記よりも、もっと「お得」な結論になります。
配偶者は「第3号被保険者」となり、①国民年金保険料の支払義務がなくなるにもかかわらず、②国民年金は加入している取扱いとなりますので、仮に20年間「厚生年金」に加入した場合、以下のプラスがあります。
 

国民年金支払義務免除によるプラス 16,540円/月(毎月支払うはずだった国民年金支払額)
将来受け取る年金増加額のプラス 19,500円/月(毎月受け取ることになる国民年金額)
合計 36,040円/月

 
厚生年金を支払うだけで、配偶者分として、毎月36,040円得をしていることになります。



 

5. 1人社長の場合の結論

以下の結論になりました。

  • 国民年金と比較すると、厚生年金加入のメリットは非常に大きい。
  • ただし、将来の回収期間を考慮すると、役員報酬は低めに抑える方がお得。

 
なお、配偶者がいる場合のプラス分は、あくまで「国民年金自動加入の恩典」ですので、「役員報酬の額」にかかわらず回収期間が「固定年数縮まる方向」であり、役員報酬額をいくらに設定するか?という意思決定には、直接的には影響ありません。



 

6. 従業員の立場の場合

上記は、あくまでオーナー社長自身の「役員報酬」にかかる厚生年金のお話ですので、従業員の立場の場合は、支払額は「個人負担部分(半分)」だけで回収の意思決定を行うことになります。
したがって、従業員の場合、「回収期間」は1人社長の場合の「約半分程度」になります。
例えば、額面30万の場合の回収期間は8年程度、額面50万の場合の回収期間は10年程度と試算されますので、だいぶお得感がありますね。
つまり・・従業員の場合は「厚生年金」を会社が半分負担してくれているので、かなりお得な恩典を受けている、ということがわかります。

 

<< 前の記事「税金が安くなる役員報酬の決定方法」次の記事「その他資本剰余金から配当を受ける場合の会計処理/税務処理/申告書の記載」 >>

 

【関連記事】


The post No226.社会保険の費用対効果で役員報酬を決める first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
No178.その他資本剰余金から配当を受ける場合の会計処理/税務処理/申告書の記載 みなし配当や譲渡損益に注意! https://www.creabiz.co.jp/zaimu/178.html/ https://www.creabiz.co.jp/zaimu/178.html/#respond Mon, 21 May 2018 04:26:41 +0000 http://www.creabiz.co.jp/?p=8959   投資している法人から配当を受ける場合、配当の原資が、投資先が獲得した「利益」ではなく、「資本」を原資として配当が行われるケースがあります。 例えば、「有償減資」による配当を実施するケースが代表例です。 こう […]

The post No178.その他資本剰余金から配当を受ける場合の会計処理/税務処理/申告書の記載 みなし配当や譲渡損益に注意! first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
GD089

 

投資している法人から配当を受ける場合、配当の原資が、投資先が獲得した「利益」ではなく、「資本」を原資として配当が行われるケースがあります。
例えば、「有償減資」による配当を実施するケースが代表例です。

こういった場合、配当金の受取金額全額が「受取配当金」になるわけではなく、実質配当部分(=みなし配当)部分のみが「受取配当金」となります。

今回は、「その他資本剰余金」から配当が行われる場合の、配当を受ける側の会計処理・税務処理・申告書の記載方法をお伝えします。

 
 

1. その他資本剰余金から配当を受けた場合の会計上及び税務上の取扱い

 

(1) 会計処理

配当受領側は、会計上は、「売買目的有価証券」である場合を除き、原則として配当受領額を有価証券の帳簿価額から減額します(適用指針第3項)。
(「売買目的有価証券」等の場合は、「受取配当金」で計上します(適用指針4項、5項))

なお、配当額が「その他利益剰余金」、「その他資本剰余金」のどちらを原資とするものなのか?不明な場合は、「受取配当金」に計上できます。(適用指針6項)
 
企業会計基準適用指針第3号 「その他資本剰余金の処分による配当を受けた株主の会計処理」
 

(2) 税務処理

その他資本剰余金から配当を受けた場合、税務上は「みなし配当」が発生します。
税務上は、受取金額のうち、利益積立金額の減少部分は受取配当金(みなし配当)、資本金等の額の減少部分は、当初払込資本金等の払戻し(株式の譲渡対価)と考えます
完全支配関係がない場合を前提とします)。

なお、その他資本剰余金から配当する側の会計処理については、No155ご参照ください。
 

(3)申告調整

会計処理と税務処理が異なるため、申告調整が必要となります。
 
 

2. 例題

● A社は、簿価純資産額100,000(うち資本金15,000、資本準備金15,000)。
● A社は、株主に5,000の配当を行う。資本に対する払戻割合は16.7%(5,000 ÷ 30,000)。
● 配当原資は、資本金2,500及び資本準備金2,500を取り崩し、「その他資本剰余金」5,000に振り替えた上で配当を行う(有償減資)。
 ⇒ 5,000のうち、みなし配当部分は3,500とする。
● B社(株主)は、A社からの配当1,000(うち、みなし配当部分700)を受け取った。B社が保有するA社株式の簿価は6,000とする。
● A社とB社は完全支配関係にないものとし、受取配当については、その他の株式として「受取配当益金不算入額」50%とする。

 


 

(1) 会計処理

借方 貸方
現預金
仮払金(or法人税等)
857
143
有価証券 1,000
  • 会計上は、配当受領額を有価証券の帳簿価額から減額します。
  • 借方の「仮払金」は、税務上、配当とみなされる部分(みなし配当)に対応する源泉所得税(700 × 20.42%)です。(金額については、下記(2)で説明します)。

 

(2) 税務処理

税務上は、利益積立金額の減少部分は受取配当金(みなし配当)、資本金等の額の減少部分は、当初払込資本金等の払戻し(株式の譲渡対価)と考えます。
つまり、配当額1,000のうち700は配当、残り300は、A社株式売却による「譲渡収入」と考えます(簿価1,000の有価証券を300で売却)。

 

借方 貸方
現金
仮払金(or法人税等)
有価証券売却損(※3)
857
143
700
受取配当金(※1)
有価証券(※2)
700
1,000

(※1) 「受取配当金」の金額は、通常は、「配当の支払通知書」に記載されています(配当側の「利益積立金額取崩額」と対応します)
(※2)今回の配当に対応する有価証券簿価1,000(6,000 × 払戻割合16.7% = 譲渡原価)
(※3)上記(※2)の譲渡原価1,000と、税務上の株式譲渡価額300(1,000-700)の差額。
⇒ 今回は、子会社株式簿価と、親会社の「資本金+資本準備金の子会社出資持分」は一致するため、受取配当金=有価証券売却損となります。
 

(※)「有価証券売却損」と「受取配当金」は相殺しません。それぞれ、「課税」の取扱いが異なるためです。

法人株主の場合は、有価証券売却損は「損金」、受取配当金は「益金不算入」となります。
個人株主の場合は、有価証券売却損は譲渡所得、受取配当金は配当所得で集計します。

 

(3) ご参考~株主への支払通知書

通常、株主側の税務処理は、「支払通知書」から仕訳が可能です。

受取配当の額(=みなし配当) 支払通知書に記載されている。
株式の譲渡対価 払戻額から➀の額を差し引いて算定
株式の譲渡原価 通知書に払戻割合が記載されている。
保有株式帳簿価額 × 払戻割合を乗じて計算。

 

3. 申告書の記載例

上記例題をもとに、法人株主の場合を前提に、確定申告書の記載方法をお伝えします。

会計上は、損益(受取配当金)が計上されないのに対し、税務上は、「受取配当金」と、「有価証券売却損益」を計上する必要があるため、申告調整が必要となります。
 

(1) 会計⇒税務上の修正仕訳

会計上の仕訳を、税務仕訳に合わせるための修正仕訳は、以下となります。

借方 貸方
有価証券売却損 700 受取配当金 700
  • 株主が法人の場合は、受取配当等の益金不算入(別表8)を通じて、別表4で減算となり、所得が変わってきます。

(2) 別表4の記載

【所得の金額の計算に関する明細書】

区分 総額 処分
留保 社外流出
当期利益
加算 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
受取配当金計上漏れ (※1)700 (※1)700
減算 受取配当金益金不算入 (※2)350 (※2)350
有価証券売却損計上もれ (※1)700 (※1)700
・・・ ・・・ ・・・ ・・・

(※1)上記(1)の「会計 ⇒税務修正仕訳」の内容を、別表4に転記します。会計処理上未仕訳につき、税務上申告加減算を行います(留保)。
(※2)上記(※1)に対応する受取配当金の益金不算入の処理です(社外流出)。別表8から転記されます(その他の株式 700 × 不算入割合50% = 350)。

 

(3)  別表5の記載

【利益積立金の計算に関する明細書】

区分 期首 当期中の増減 差引
利益準備金
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
配当・売却損計上漏れ 700 700 0
  • 今回は、配当を受ける側の株式簿価と配当を行う側の「資本金+資本準備金の子会社出資持分」は一致するため、加算減算でゼロになります。

 

【資本金等の額の明細書】

記載なし

 

4. 100%グループ法人間でのみなし配当

100%グループ法人間で、みなし配当等が生じる場合は、例外的に、上記の「株式譲渡損益」が計上できません。株式の譲渡収入額=譲渡原価の額とみなされます
(法法61条の2⑯)。

この場合、株式の譲渡損益部分は、税務上「資本金等の額」を加減算されます(法令8条1項22号)。
つまり、上記例題では、有価証券売却損計上もれ22万円は別表4で減算できず、別表5で「資本金等の額」の減少及び同額の利益積立金額を増加させる申告調整となります。

なお、100%グループ法人間の受取配当金については、完全子法人株式等に該当しますので、受取配当金は全額益金不算入となります(法法23条1項)。
詳細は、「グループ法人内取引の取扱い」の項をご参照ください。

【関連記事】




 

The post No178.その他資本剰余金から配当を受ける場合の会計処理/税務処理/申告書の記載 みなし配当や譲渡損益に注意! first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
https://www.creabiz.co.jp/zaimu/178.html/feed/ 0
No170.【無償増資】会計処理・税務処理・申告書記載例/制限や限度額は?/資本剰余金や利益剰余金の資本組入とは? https://www.creabiz.co.jp/zaimu/170.html/ https://www.creabiz.co.jp/zaimu/170.html/#respond Sat, 06 Jan 2018 04:07:10 +0000 http://www.creabiz.co.jp/?p=8270   増資の方法には、大きく2つの方法、「有償増資」と「無償増資」の2種類があります。有償増資は、株主からの払戻を伴う「実質的な増資」、一方、無償増資は、会社財産への払込は伴わず、単に準備金や剰余金から資本金に振 […]

The post No170.【無償増資】会計処理・税務処理・申告書記載例/制限や限度額は?/資本剰余金や利益剰余金の資本組入とは? first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
GD076

 

増資の方法には、大きく2つの方法、「有償増資」と「無償増資」の2種類があります。有償増資は、株主からの払戻を伴う「実質的な増資」、一方、無償増資は、会社財産への払込は伴わず、単に準備金や剰余金から資本金に振替えるだけの「形式的な増資」です。
無償増資の代表的な取引は、「利益剰余金の資本組入」です。

「無償増資」は、会計上は資本取引となりますが、税務上は、資本取引とはなりませんので、申告調整が必要となります。

今回は、「無償増資」の会計処理・税務処理・申告書の記載方法をまとめます。

 

1. 無償増資の目的や種類・制限は?

 

(1) 無償増資の目的・種類

剰余金を資本金に振り替えることで「分配可能利益の社外流出を防止」できたり、出資をうけることなく「資本金」を増加させることができますので、信用力が高まる場合があります。

無償増資は、以下の2種類となります。

準備金の資本金組み入れ 「資本準備金」や「利益準備金」を取り崩して資本金に組み入れる方法
⇒株主総会普通決議(会448・450・計規25Ⅰ)+原則 債権者保護手続(会449)(※)
その他剰余金の資本金組み入れ 「その他資本剰余金」や「その他利益剰余金」を取り崩して資本金に組み入れる方法
⇒株主総会普通決議(会450・計規25Ⅰ)

(※)例外的に、準備金全額が資本金に振替えられる場合は、債権者保護手続は不要です(会社法449Ⅰ)。

なお、合同会社においては「利益剰余金」を資本金に組み入れることができません(会社計算規則第30条)。
 

(2) 制限・限度額は?

無償増資は、株主総会決議により、いつでも可能、限度額はありません。ただし、以下の制限があります。

  • 利益剰余金がマイナスの場合は、利益剰余金の資本組入はできません(会社法450Ⅲ)。
  • 期中に発生した利益の資本組み入れはできません。確定した決算までの利益のみ組み入れ可能です。

 

2. 会計処理と税務処理の違い

無償増資は、会計上は「資本取引」となります。資本金に全額組入れることもできますし、資本準備金に組み入れることも可能です(会450、451)。
一方、税務上は、原則として、実際株主等から出資を受けた取引のみが「資本取引」とされますので、「無償増資」は、「資本取引」とは取り扱われません(法施令8条)。

したがって、「無償増資」は、会計上と税務上で取扱いが異なるため、申告調整が必要となります。

なお、利益剰余金の資本組み入れを行っても、「みなし配当」の論点は生じません。

 

3. 例題

 

  • 簿価純資産100,000(うち、資本金50,000、資本準備金30,000、その他利益剰余金20,000)の会社が、「無償増資」を行う
  • 無償増資の内容は、資本準備金30,000、その他利益剰余金20,000を取崩すものとする。
  • 無償増資前の、法人税上の「資本金等の額」は80,000(会計上の資本金50,000 + 資本準備金30,000と一致しているものとする。

 

 

(1) 会計処理

借方 貸方
資本準備金
その他利益剰余金
30,000
20,000
資本金 50,000
  • 会計上は、「資本準備金・その他利益剰余金」を取り崩し、「資本金」を増加させる処理となります(=資本取引)(=資本取引)。

 

(2) 税務処理

借方 貸方
仕訳なし
  • 「無償増資」は、株主からの払込がないため、税務上は資本取引とは扱われません(単に「純資産の部」内での振替)。したがって、法人税法上は、何もなかったものとして取り扱われます(法施令8・9条)。

 

4. 申告書の記載例

上記例題をもとに、確定申告書の記載方法をお伝えします。

無償増資取引は、会計上は資本取引である一方、税務上は資本取引でない(何もなかった)ことから、会計処理と税務処理が異なります。
税務上は資本取引はありませんので、申告調整として、会計と税務を一致させる別表5の申告調整(振替調整)を行います。

 

(1) 会計⇒税務上の修正仕訳

会計上の仕訳を、税務仕訳に合わせるための「修正仕訳」は、以下となります。

借方 貸方
資本金 50,000 資本準備金
その他利益剰余金
30,000
20,000
  • 単に、無償増資の会計処理と税務処理が異なるため、税務上は増資がなかったものとするための振替仕訳です。

 

(2) 別表4の記載

計上の「利益」と税務上の「所得」に差異はありませんので、別表4での加減算はありません。

 

(3) 別表5の記載

「会計上の利益」と「税務上の所得」に差異はありません。
ただし、会計上の資本の増加額を、税務上は資本取引がなかったことにする必要があるため、別表5で、会計を税務処理に合わせる調整を行います。
上記(1)の「会計 ⇒税務修正仕訳」の内容を、別表5に転記します。

調整前の別表5は既に「会計処理」が転記されており、当該金額を税務処理に合わせる(なかったものとする)ための調整、とイメージしてもらえればと思います。

 

① 利益積立金の計算に関する明細書

 

区分 期首 当期中の増減 差引
利益準備金
無償増資 20,000 20,000
繰越剰余金 20,000
  • 緑の数値は会計処理を示していますので、申告調整ではありません。
    既に、無償増資の会計処理として「利益剰余金」を減少させていますので、繰越剰余金の減少欄に金額が入っています。
  • 上記の赤字部分が、申告調整箇所となります。上記会計処理を前提に、税務上は何もなかった形に戻すため、会計処理を取り消す(その他利益剰余金減少の取消)申告調整を行います。

 

② 資本金等の額の明細書

 

区分 期首 当期中の増減 差引
資本金 50,000 50,000 100,000
資本準備金 30,000 30,000 0
無償増資 50,000 30,000 △20,000
差引合計額 80,000 80,000
  • 緑の数値は会計処理を示していますので、申告調整ではありません。
    既に、無償増資の会計処理として、「資本準備金の減少及び資本金の増加」欄に金額が入っています。
  • 上記の赤字部分が、申告調整箇所となります。上記会計処理を前提に、税務上は何もなかった形に戻すため、会計処理を取り消す(資本金増加の取消、資本準備金減少の取消)申告調整を行います。
  • 結論的には、「資本金等の額の明細書の差引合計額」は、期首も期末も80,000で変動はありません

なお、書き方は自由です。
上記例では、資本金等の額の明細書の「資本金・資本準備金」残高が、会計上のBS資本金と資本準備金と一致するように、別建てで「無償増資」の行で調整をしています。

 

5. 無償増資と住民税均等割・外形標準課税への影響

無償増資は、法人税上の資本取引ではありませんが、住民税・事業税上の「資本金等の額」は増加します。したがって、①法人住民税均等割の計算②外形標準課税の資本割の課税標準が増加し、それぞれの税額が高くなります。詳しくは、「資本金等の額」をご参照ください。

【関連記事】




 

The post No170.【無償増資】会計処理・税務処理・申告書記載例/制限や限度額は?/資本剰余金や利益剰余金の資本組入とは? first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
https://www.creabiz.co.jp/zaimu/170.html/feed/ 0
No169.有償増資の会計・税務処理/申告書の記載 https://www.creabiz.co.jp/zaimu/169.html/ https://www.creabiz.co.jp/zaimu/169.html/#respond Sat, 06 Jan 2018 04:06:08 +0000 http://www.creabiz.co.jp/?p=8267     「有償増資」の代表例は、「通常の新株発行」になりますね。 今回は、「通常の新株発行」を例に、「有償増資」の会計・税務処理/申告書の記載についてまとめます。 (「株主割当」、「第三者割当」、「公 […]

The post No169.有償増資の会計・税務処理/申告書の記載 first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
GD030

 

 

「有償増資」の代表例は、「通常の新株発行」になりますね。
今回は、「通常の新株発行」を例に、「有償増資」の会計・税務処理/申告書の記載についてまとめます。
(「株主割当」、「第三者割当」、「公募」いずれの方法も、会計処理に違いはありません)。

 


 

1. 会計処理

① 資本金組入額

会計上(=会社法上)は、増資した際に「資本金」や「資本準備金」に計上する金額が決められています。
以下の通りです。

 

原則 払込金額全額を資本金の額とする(会社法445Ⅰ)
例外 払込金額の2分の1までを「資本準備金」とすることができる(会社法445Ⅱ、Ⅲ)。

 

② 仕訳の計上時期

決定機関で定めた「払込期日」に計上します。

 


 

2. 税務処理

① 税務上の取扱い

税務上は、単に「株主等から出資を受けた金額」が「資本金等の額」と取扱われます。
したがって、会計上、「資本金」「資本準備金」どちらに計上したとしても、「株主等から出資を受けた額」である点は同じですので、両者とも「資本金等の額」の増加として取り扱われます。

 

② 申告書の記載

「資本金等の額」の増加は、確定申告書上は、別表5「資本金等の額の明細書」に記載します。

 

③ 均等割への影響

税務上「資本金等の額」が増加した場合、「法人住民税均等割」に影響がある点に注意しましょう。
なお、会計処理上、増資額のうち一部を「資本準備金」に計上した場合でも、税務上は、資本金と資本準備金で「違いはありません」ので、全額資本金として計上した場合と比べて「法人住民税均等割」の金額が安くなることはありません。

 


 

3. 例題

  • クレア社は、株主総会で、「第三者割当による新株発行」を決議した。
  • 新株発行株式数100株、払込金額50,000円/株
  • 払込期日4月1日
  • 増加資本金 会社法規定の最低額

 


 

(1) 会計処理

 

借方 貸方
払込期日 預金 5,000,000 資本金
資本準備金
2,500,000
2,500,000
  • 会計上は、「資本金」及び「資本準備金」を増加させる処理となります。
    会社法上、払込額の半分までは「資本準備金」への計上が認められます。

(厳密には、実際払込時の勘定科目は「新株式申込証拠金」となりますが、ここでは省略)

 


 

(2) 税務処理

 

借方 貸方
払込期日 預金 5,000,000 資本金等の額 5,000,000

 

  • 税務上は、資本金、資本準備金どちらであっても「資本金等の額」の増加となります。

 


 

(3) 申告調整(税務修正仕訳)

ありません。

 


 

(4) 別表の記載

① 別表4の記載

記載はありません(会計上の「利益」と税務上の「所得」に差異はありません)。

 

② 別表5の記載

資本金等の額の明細書

 

区分 期首 当期中の増減 差引
資本金 2,500,000 2,500,000
資本準備金 2,500,000 2,500,000
差引合計額 5,000,000

 

<< 前の記事「無償増資の会計・税務処理/申告書の記載(利益剰余金の資本組入)」次の記事「増資の種類及び法的手続」 >>

4.  Youtube

 
YouTubeで分かる「有償減資・無償減資」

【関連記事】


The post No169.有償増資の会計・税務処理/申告書の記載 first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
https://www.creabiz.co.jp/zaimu/169.html/feed/ 0
No168.【増資の種類】有償増資と無償増資の違いは?法的手続や税金への影響・それぞれのメリットデメリット https://www.creabiz.co.jp/zaimu/%e5%a2%97%e8%b3%87%e3%81%ae%e7%a8%ae%e9%a1%9e%e5%8f%8a%e3%81%b3%e6%b3%95%e7%9a%84%e6%89%8b%e7%b6%9a.html/ https://www.creabiz.co.jp/zaimu/%e5%a2%97%e8%b3%87%e3%81%ae%e7%a8%ae%e9%a1%9e%e5%8f%8a%e3%81%b3%e6%b3%95%e7%9a%84%e6%89%8b%e7%b6%9a.html/#respond Sat, 06 Jan 2018 04:05:30 +0000 http://www.creabiz.co.jp/?p=8264   増資とは、株式会社の「資本金」を増加させる手続きです。 「資本金」は、会社経営の元手となる資金のため、資本金の額が大きいほど外部からの信用は高まります。 この点、増資する際に、払込が伴うかどうか?により、「 […]

The post No168.【増資の種類】有償増資と無償増資の違いは?法的手続や税金への影響・それぞれのメリットデメリット first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
GD029

 

増資とは、株式会社の「資本金」を増加させる手続きです。
「資本金」は、会社経営の元手となる資金のため、資本金の額が大きいほど外部からの信用は高まります。

この点、増資する際に、払込が伴うかどうか?により、「有償増資」と「無償増資」の2種類に区分されます。
今回は、有償増資と無償増資の内容、法的手続、それぞれの税金への影響等につき解説します。

 

1. 有償増資とは?

(1) 有償増資とは?

有償増資とは、会社財産への払込を伴う「実質的な増資」のことです。運転資金の確保や新規事業の投資などを目的として、外部から資金を調達する手段です。

「有償増資」の場合は、新たに株式を発行するため、発行済株式総数は増加します。現金に限らず、現金以外の財産を出資する現物出資も含まれます。

なお、金融機関からの資金の調達は「融資」と呼ばれます。金融機関からの借入金は、将来返済が必要ですが、有償増資で調達した資金は、返済不要という点で大きく異なります。

 

(有償増資)

201801_1-1

(2) 有償増資の種類

有償増資の種類は以下となります。

株主割当増資 既存の株主に、持株割合に応じて新株の割り当てをする方法。
第三者割当増資 既存株主に限らず、第三者(株主・役員・外部利害関係者等)に新株の割り当てをする方法。
公募増資 割り当てする先を特定せず、広く一般的に株主を募る増資方法。IPOなどがこれにあたります。

例えば、中小企業の100%オーナー会社で、オーナーからの追加増資は、「株主割当増資」となります。
一方、100%オーナー以外の第三者からの増資の場合は「第三者割当増資」となります。
 

(3) 既存株主への影響

有償増資の場合、発行済株式総数が増加するため、既存株主は、「第三者割当増資」や「公募増資」の場合、以下の影響を受ける点に注意です。

  • 持ち株比率の低下
  • 既存株価より低い価額で発行する場合は、1株当たり株式価値は減少(希薄化)

なお、株主割当増資の場合は、既存株主に新株の割り当てを行うため、既存株主への影響はありません。

 

(4) 法的手続

以下、通常の新株発行を例にします。

① 決議機関

公開会社(定款に譲渡制限の定めない会社)(※1) 取締役会決議(※2)
(会社法201・202Ⅲ③3)
非公開会社 株主総会特別決議(※3)
(会社法199Ⅱ・202Ⅲ④、309Ⅱ⑤)

(※1)一般の上場会社などです。会社法上は、「公開会社」(会社法2⑤)と定義されています。
(※2)第三者に「特に有利な価額」で株式発行する場合は、株主総会決議(会社法201Ⅰ・199Ⅲ)。
(※3)非公開会社の場合、増資による持株比率の変動は、会社支配の観点で重要な意味を持つため。
 

なお、増資の結果、「授権資本の枠を越える」場合は、定款変更決議が必要になります。
授権資本とは、株式会社の定款に定められた発行株式総数のことです。
 

② 登記

「資本金の額」と「発行済株式総数」が増加しますので、登記変更が必要になります。
払込期日から2週間以内に「変更登記」を行う必要があります(会社法915Ⅰ・Ⅱ)。

 

③ 税務署等への届出

資本金の額が増加した場合、税務署、県税事務所、市税事務所に「異動届出書」を提出する必要があります。
 

2. 無償増資とは?

(1) 無償増資とは?

無償増資とは、会社財産への払込は伴わず、単に準備金や剰余金から資本金に振替えるだけの「形式的な増資」のことをさします。剰余金を資本金に振り替えることで「配当可能利益の社外流出を防止」できたり、出資をうけることなく「資本金」を増加させることができます。

単に無償増資だけを行う場合は、株式の発行は行われないため、発行済株式は増加しません(無償増資に伴い「株式分割」を行うケースは、発行済株式総数は増加します)。
したがって、無償増資による1株当たりの株式価値の下落(希薄化)はありません

なお、「資本金」は増加する一方、同額の準備金等が減少しますので、純資産に変動はありません。
 

(無償増資)

201801_1-2

(2) 無償増資の種類

「無償増資」の種類は以下となります。

準備金の資本金組み入れ 資本準備金や利益準備金を取り崩して資本金に組み入れる方法です。
その他剰余金の資本金組み入れ その他資本剰余金やその他利益剰余金を取り崩して資本金に組み入れる方法です。

利益剰余金がマイナスの場合は、利益剰余金の資本組入はできません(会社法450)
なお、新株予約権の行使も「無償増資」の一種となります。
 

(3) 法的手続

① 決議機関

原則として、株主総会の普通決議となります(会社法450・448・451・計規25Ⅰ)。
また、「準備金の額が減少」する場合、原則として、会社法上「債権者保護手続」が要求されますが、例外的に、準備金全額が資本金に振替えられる場合など、債権者保護手続が不要な場合もあります(会社法449)。

 

② 登記

発行済株式総数は増加しませんが、資本金の額が増加しますので、登記変更が必要になります。
払込期日から2週間以内に「変更登記」を行う必要があります(会社法915Ⅰ・Ⅱ)
 

③ 税務署等への届出

資本金の額が増加した場合、税務署、県税事務所、市税事務所に「異動届出書」を提出する必要があります。
 

3. 増資による税金への影響(有償・無償増資共通)

(1)均等割や中小企業優遇税制・外形標準課税への影響

資本金の額が増加すると、以下の影響があります。

 

(2) 登録免許税

資本金の額が増加した場合、別途「登録免許税」がかかります
増資した資本金額の0.7%(金額が3万円未満の場合は最低3万円)
 

4. 増資のメリットデメリットまとめ

有償増資 無償増資
メリット ●返済不要の資金調達が可能
●会社の信頼度が上がる
●会社の信頼度が上がる
デメリット ●持ち株比率減少による支配力の低下・
●1株当たり株式価値の希薄化
●均等割や優遇税制への影響
●登録免許税等の負担増
●均等割や優遇税制への影響
●登録免許税等の負担増

 

5. 増資の会計・税務処理/申告書の記載

増資の会計処理・税務処理・申告書の記載については、有償増資の会計・税務処理無償増資の会計・税務処理でまとめています。ご参照ください。
 

6. YouTube

 
YouTubeで分かる「増資の種類」
 





The post No168.【増資の種類】有償増資と無償増資の違いは?法的手続や税金への影響・それぞれのメリットデメリット first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
https://www.creabiz.co.jp/zaimu/%e5%a2%97%e8%b3%87%e3%81%ae%e7%a8%ae%e9%a1%9e%e5%8f%8a%e3%81%b3%e6%b3%95%e7%9a%84%e6%89%8b%e7%b6%9a.html/feed/ 0
No155.【有償減資】その他資本剰余金を配当する場合の会計処理・税務処理・申告書の記載例/みなし配当の計算は? https://www.creabiz.co.jp/zaimu/155.html/ https://www.creabiz.co.jp/zaimu/155.html/#respond Thu, 21 Sep 2017 02:14:04 +0000 http://www.creabiz.co.jp/?p=7489 有償減資とは、株主に対して出資金額を返還する実質的な減資です(会社の財産が減少)。 減資の方法には、大きく2つの方法、「有償減資」と「無償減資」の2種類があります。有償減資は、株主への払戻を伴う「実質的な減資」、一方、無 […]

The post No155.【有償減資】その他資本剰余金を配当する場合の会計処理・税務処理・申告書の記載例/みなし配当の計算は? first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
GD027

有償減資とは、株主に対して出資金額を返還する実質的な減資です(会社の財産が減少)。

減資の方法には、大きく2つの方法、「有償減資」と「無償減資」の2種類があります。有償減資は、株主への払戻を伴う「実質的な減資」、一方、無償減資は、欠損填補を穴埋めするための「形式的な減資」です。

有償減資は、会計上及び税務上ともに資本取引となりますが、税務上は、減資扱いされる金額の上限が定められており、それを超える部分は、みなし配当が生じます。

今回は、「有償減資」及び「その他資本剰余金」を配当する場合の会計処理・税務処理をまとめます。

 

1. 有償減資の目的・法的性格

 

(1)有償減資の目的

株主への財産還元目的や、自己株式取得の財源を確保する目的で行われるケースが多いです。
株主へ「資本金」を、そのまま配当することできませんが、「資本金や資本準備金」を取り崩し、「その他資本剰余金」に振り替えた後は、配当が可能です。
 

(2)有償減資の法的性格

会社法上、資本金をそのまま配当することは認められていません。
会社法上、減資とは単に資本を減少させる手続であり、一旦減資により「その他資本剰余金」に振り替えたうえで、別個の手続として、剰余金の配当を行う流れとなります。
つまり、有償減資に係る会社法上の法律構成としては、資本金の減少(無償減資)+剰余金の配当の2つが組み合わさったものとして規定されています(会社法上「有償減資」という概念はない)。
有償減資を行う =その他資本剰余金からの配当を行うのと同義となります。

 

資本金の減少(無償減資) 資本金を減少させ、「その他資本剰余金」に振り替える行為
→株主総会特別決議(会社法447条)
剰余金の配当 「その他資本剰余金」を配当する行為
→株主総会普通決議(会社法454条)

 

(3)分配可能利益の規制あり

上記のとおり、有償減資は、法律上「剰余金配当」の側面を持ちますので、「剰余金の分配可能額」の財源規制を受ける点に注意が必要です。
 

2. 会計処理と税務処理の違い

有償減資は、会計及び税務上どちらも「資本取引」となります。
ただし、税務上は、「資本金等の額」の減少額が決められており、それを超えた部分は、「利益積立金額」の減少と取り扱われ、この部分は「みなし配当」と取り扱われます(法令8条1項20号、9条1項14号)。

税務上、有償減資により支払う金銭は、「当初払い込んだ資本部分の払戻し」と「利益の配当部分」の2種類で構成されていて、前者は「資本金等の額の減少」、後者は利益積立金額の減少(=配当を支払った)と考えています。

株主に支払った金銭のうち、まず①「資本金等の額」の減少部分を求め、②差引で「利益積立金」の減少部分(みなし配当)を算定します(法施令8条1項)。
 

3. 税務上減少させる「資本金等の額」の算定方法

 

(1)税務上減少させる「資本金等の額」の算定方法

 
上記の考え方より、有償減資の場合は、税務上、「資本金等の額」から減少させる金額を算定する必要があります。税務上、「資本金等の額」から減少させる金額は、以下の式となります。

201805_1-2

「資本金等の額」は、法人税別表5(1)Ⅱの金額です。
この「資本金等の額」を超える部分は「利益積立金」の減少(みなし配当)と取り扱われます。
 
上記の式の意味ですが、株主に支払った金銭には、出資額を「払い戻す部分」も含まれているため、元々出資された金額(資本金等の額)部分は「資本金等の額」から減らす!という意味です。
税務上は、株主に支払った金銭のうち、上記金額を超えた部分だけが「利益積立金」の減少 = 「配当」をしたとみなされることになります。
 

(2)資本金等の額を超えた部分の取扱い(=みなし配当)

 
支出額のうち、上記(2)で算定した「資本金等の額」を超えた部分は、「利益積立金」の減少で認識します。当該部分は、株主に対する配当とみなされ(みなし配当)、株主側には所得税が課税されます。
したがって、法人側は、有償減資の際に、株主の所得税に係る源泉徴収(20.42%)が必要となります。
 

みなし配当額 = 株主等への支払金銭等 - 左記のうち「資本金等の額」対応部分
 

4. 例題

  • 未上場会社。簿価純資産額100,000(うち、資本金15,000、資本準備金15,000)の会社が、今回有償減資を行う。
  • 有償減資の内容は、資本金2,500及び資本準備金2,500を取り崩し、「その他資本剰余金」5,000に振り替えた上、株主に5,000の交付(=配当)を行う
  • 有償減資前の、法人税上の「資本金等の額」は、30,000(→会計上の資本金15,000 + 資本準備金15,000と一致しているものとする)

(1)会計処理

 

借方 貸方
資本金の減少 資本金
資本準備金
2,500
2,500
その他資本剰余金 5,000
剰余金の配当 その他資本剰余金 5,000 現金
預り金(源泉所得税)
4,285
715
  • まず、「資本金」及び「資本準備金」を減少させ、「その他資本剰余金」に振替えます(無償減資)。
  • 次に、「その他の資本剰余金」から配当を行った処理を行います(剰余金の配当)。
    なお、貸方「預り金」は、税務上、配当とみなされる部分(みなし配当)に対応する「源泉所得税」です。この金額については、「(2)税務処理」の所で解説します。

 

(2)税務処理

税法上、配当(有償減資)で支払った金銭は「当初払い込んだ資本金等部分の払戻し」と「利益の分配部分」の2種類で構成されていると考えます。
前者は「資本金等の額の減少」、後者は「利益積立金の減少」として取り扱い、「利益積立金の減少」部分は、「みなし配当」となります(法人税法24条1)(「自己株式の取得」」の場合も、同様の論点が生じます)。

 

借方 貸方
資本金の減少(※1) 仕訳なし
剰余金の配当 資本金等の額(※2)
利益積立金額(※3)
1,500
3,500
現金
預り金(※4)
4,285
715
  • (※1)その他資本剰余金への振替は、単に「純資産の部」内での振替にすぎませんので、税務上の仕訳はありません無償減資をご参照ください)。
  • (※2)30,000(払戻直前の資本金等の額) ÷ 100,000(前期末簿価純資産)×5,000(減少資本剰余金の額)=1,500
  • (※3)5,000(交付金銭) – 1,500(上記(1)資本金等の額)=3,500 ⇒みなし配当額に対応
  • (※4)3,500 × 20.42%(源泉所得税率)=715。税務上、利益積立金額の減少部分は「配当」とみなされるため、「配当額」に対応する源泉所得税額(税率20.42%)を差し引いて支払います。

 
201805_1-3

なお、減少資本金等の額は、30,000(資本金等の額)×(5,000/100,000)=1,500でも算定できます。
当該計算式は、今回の交付金銭5,000が簿価純資産100,000に占める割合分だけ、資本金等の額から減少させるという式です。どちらでも構いません。

 

5. 申告書の記載例

上記例題をもとに、確定申告書の記載方法をお伝えします。
 
「有償減資」は、税務上は利益積立金からの配当部分があることから、会計処理と税務処理が異なります
税務上は「資本金等の額」と「利益積立金」を減少させる必要があるため、申告調整として、会計と税務を一致させる別表5の申告調整(振替調整)を行います。
 

(1)会計⇒税務上の修正仕訳

会計上の仕訳を、税務仕訳に合わせるための修正仕訳は以下となります。

借方 貸方
資本金等の額
利益積立金額
1,500
3,500
その他資本剰余金 5,000
  • 会計上の「その他資本剰余金」の減少額を、税務上は、「資本金等の額」と「利益積立金額」の減少に振り替える仕訳となります。

 

(2)別表4の記載

【所得の金額の計算に関する明細書】

「会計上の利益」と「税務上の所得」の差異はありませんので、別表4での加減算はありません。
ただし、「みなし配当」部分は「社外流出」となりますので、通常の配当と同様、当期利益の欄の「社外流出」欄、に「みなし配当」の金額を記載します。配当の申告処理については、NO113をご参照ください。

区分 総額 処分
留保 社外流出
当期利益 ・・・ (配当) 3,500

税務上は、「利益積立金額」減少部分は配当とみなされるため、社外流出欄に記載します。
あくまで、会計上の利益と税法上の所得の差異はありませんので、法人側は「みなし配当」により税額が増加することはありません。

 

(3) 別表5の記載

会計上の資本の減少額と、税務上の「資本金等の額」「利益積立金額」の減少額の内訳が異なりますので、別表5で、会計を税務処理に合わせる調整を行います。
上記(1)の「会計 ⇒税務修正仕訳」の内容を、別表5に転記します。

調整前の別表5は「会計処理」が転記されており、当該金額を税務処理に合わせるための調整とイメージしてもらえればと思います。
 

【利益積立金の計算に関する明細書】

区分 期首 当期中の増減 差引
利益準備金
・・・
みなし配当 3,500 △3,500
  • 上記の赤字部分が、申告調整箇所上記の赤字部分が、申告調整箇所となります。「資本金等の額」の額を超えた「利益積立金」のマイナス部分の申告調整を行います。

 

【資本金等の額の明細書】

区分 期首 当期中の増減 差引
資本金 15,000 2,500 12,500
資本準備金 15,000 2,500 12,500
その他資本剰余金 5,000 5,000 0
みなし配当 1,500 5,000 3,500
差引合計額 30,000 11,500 10,000 28,500
  • 緑の数値は、会計処理を示していますので、申告調整ではありません。
    既に、その他資本剰余金への振替処理として、「資本金」「資本準備金」はそれぞれ△2,500、その他資本剰余金は+5,000、配当により△5,000されているはずです。
  • 上記の赤字部分が、申告調整箇所となります。上記会計処理を前提に、いったん会計処理を取り消したうえ(+5,000)、税務上の資本金等の額の減少(△1,500)を計上する申告調整を行います。
  • 結論的には、「資本金等の額の明細書の差引合計額」は、期首から1,500だけ減少することになります。

なお、申告書の記載方法は自由ですので、他のやり方でも問題ありません。どの記載方法であっても、利益積立金額、資本金等の額の各合計残高は上記と一致します。

 

6. 有償減資と住民税均等割・外形標準課税への影響

有償減資により、住民税・事業税上の「資本金等の額」は減少します。したがって「有償減資」を行うことにより、①法人住民税均等割の計算②外形標準課税の資本割の課税標準が減少し、それぞれの税額が安くなります。詳しくは、「資本金等の額」をご参照ください。








 

The post No155.【有償減資】その他資本剰余金を配当する場合の会計処理・税務処理・申告書の記載例/みなし配当の計算は? first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
https://www.creabiz.co.jp/zaimu/155.html/feed/ 0
No154.【無償減資】会計処理・税務処理・申告書の記載例/みなし配当や均等割等への影響は? https://www.creabiz.co.jp/zaimu/154.html/ https://www.creabiz.co.jp/zaimu/154.html/#respond Thu, 21 Sep 2017 02:13:12 +0000 http://www.creabiz.co.jp/?p=7486   無償減資とは、会社財産の流出を伴わない、形式的な減資です(会社の財産は減少しない)。 減資の方法には、大きく2つの方法、「有償減資」と「無償減資」の2種類があります。有償減資は、株主への払戻を伴う「実質的な […]

The post No154.【無償減資】会計処理・税務処理・申告書の記載例/みなし配当や均等割等への影響は? first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
GD016

 

無償減資とは、会社財産の流出を伴わない、形式的な減資です(会社の財産は減少しない)。

減資の方法には、大きく2つの方法、「有償減資」と「無償減資」の2種類があります。有償減資は、株主への払戻を伴う「実質的な減資」、一方、無償減資は、欠損填補を穴埋めするための「形式的な減資」です。

「無償減資」は、会計上は資本取引となりますが、税務上は、資本取引とはなりませんので、申告調整が必要となります。

今回は、「無償減資」の会計処理・税務処理・申告書の記載方法をまとめます。

 

1. 無償減資の目的・法的性格

 

(1) 無償減資の目的

無償減資は、欠損填補による経営再建や、自己株式取得の財源を確保する目的で行われるケースが多いです(無償減資でも、剰余金の分配可能利益は増加します)。
また、税法上は、減資することにより、地方税上の「均等割額」や「外形標準課税」の税金の節税が可能ですので、税制メリットを享受するために行われるケースもあります。
 

(2) 無償減資の法的性格

会社法上、減資により「欠損を直接填補」することはできません
会社法上、減資とは単に資本を減少させる手続であり、一旦減資により「その他資本剰余金」に振り替えたうえで、別個の手続として、資本剰余金を欠損填補にあてる流れとなります。
つまり、会社法上の法律構成としては、無償減資は、「資本金の減少」+「剰余金の処分」の2つが組み合わさったものとなります。

資本金の減少

資本金を減少させ、「その他資本剰余金」に振り替える行為

⇒原則 株主総会特別決議(会社法447Ⅰ)
⇒ただし、欠損填補の場合は 株主総会普通決議でOK(会社法309Ⅱ⑨)

剰余金の処分 「その他資本剰余金」を処分する行為
⇒株主総会普通決議(会社法452条)

 

2. 会計処理と税務処理の違い

無償減資は、会計上は「資本取引」となります。
一方、税務上は、原則として、実際株主に財産の払戻が伴う取引のみが「資本取引」とされますので、「無償減資」は、「資本取引」とは取り扱われません(法施令8条)。

したがって、「無償減資」は、会計上と税務上で取扱いが異なるため、申告調整が必要となります。

なお、無償減資の場合は、有償減資自己株式取得の場合と異なり、「みなし配当」は生じません。

 

3. 例題

  • 簿価純資産100,000(資本金120,000、資本準備金10,000、その他利益剰余金△30,000)の会社が、欠損填補を穴埋めするため「無償減資」を行う
  • 資本金20,000、資本準備金10,000を取崩し、「その他資本剰余金」30,000に振り替え、その他利益剰余金△30,000の欠損填補の処理を行う。
  • 無償減資前の、法人税上の「資本金等の額」は資本金130,000(会計上の資本金120,000 + 資本準備金10,000と一致しているものとする。

(1) 会計処理

借方 貸方
資本金の減少 資本金
資本準備金
20,000
10,000
その他資本剰余金 30,000
剰余金の処分 その他資本剰余金 30,000 その他利益剰余金 30,000
  • まず、減資の手続として、「資本金」及び「資本準備金」を減少させ、「その他資本剰余金」に振替えます
  • 次に、剰余金の処分手続として、「その他の資本剰余金」を減少させ、欠損填補(その他利益剰余金の填補)にあてます。

なお、欠損額△30,000円以上に「その他資本剰余金」を取り崩した場合の残額は「その他資本剰余金」(資本金及び資本準備金減少差益)となります。

 

(2) 税務処理

借方 貸方
仕訳なし

「無償減資」は、株主への金銭の払戻がないため、税務上は資本取引とは扱われません(単に「純資産の部」内での振替)。したがって、法人税法上は、何もなかったものとして取り扱われます(法施令8・9条)。

 

4.  申告書の記載例

上記例題をもとに、確定申告書の記載方法をお伝えします。

無償減資取引は、会計上は資本取引である一方、税務上は資本取引でない(何もなかった)ことから、会計処理と税務処理が異なります。
税務上は資本取引はありませんので、申告調整として、会計と税務を一致させる別表5の申告調整(振替調整)を行います。
 

(1) 会計⇒税務上の修正仕訳

会計上の仕訳を、税務仕訳に合わせるための「修正仕訳」は、以下となります。

借方 貸方
その他利益剰余金 30,000 資本金
資本準備金
20,000
10,000

単に、無償減資の会計処理と税務処理が異なるため、税務上は減資がなかったものとするための振替仕訳です。

 

(2) 別表4の記載

会計上の「利益」と税務上の「所得」に差異はありませんので、別表4での加減算はありません。

 

(3) 別表5の記載

「会計上の利益」と「税務上の所得」に差異はありません。
ただし、会計上の資本の減少額を、税務上は資本取引がなかったことにする必要があるため、別表5で、会計を税務処理に合わせる調整を行います。
上記(1)の「会計 ⇒税務修正仕訳」の内容を、別表5に転記します。

調整前の別表5は既に「会計処理」が転記されており、当該金額を税務処理に合わせる(なかったものとする)ための調整、とイメージしてもらえればと思います。
 

① 利益積立金の計算に関する明細書

区分 期首 当期中の増減 差引
利益準備金
無償減資 30,000 △30,000
繰越損益金 30,000
  • 緑の数値は、会計処理を示していますので申告調整ではありません。
    既に、欠損填補の会計処理として、「繰越損益金」は、30,000だけ多くなっているはずです。
  • 上記の赤字部分が、申告調整箇所となります。上記会計処理を前提に、税務上は何もなかった形に戻すため、会計処理を取り消す(△30,000)申告調整を行います。

 

② 資本金等の額の明細書

区分 期首 当期中の増減 差引
資本金 120,000 20,000 100,000
資本準備金 10,000 10,000 0
無償減資 30,000 30,000
差引合計額 130,000 130,000
  • 緑の数値は、会計処理を示していますので申告調整ではありません。既に、その他資本剰余金への振替処理として、「資本金」「資本準備金」はそれぞれ△20,000、△10,000されているはずです
  • 上記の赤字部分が、申告調整箇所となります。上記会計処理を前提に、税務上は何もなかった形に戻すため、会計処理を取り消す(+30,000)申告調整を行います。
  • 結論的には、「資本金等の額の明細書の差引合計額」は、期首も期末も130,000で変動はありません。

なお、書き方は自由です。
上記例では、資本金等の額の明細書の「資本金・資本準備金」残高が、会計上のBS資本金と資本準備金と一致するように、別建てで「無償減資」の行で調整をしています。
 

5. 無償減資と住民税均等割・外形標準課税への影響

無償減資は、法人税上の資本取引ではありませんが、住民税・事業税上の「資本金等の額」は減少します。したがって、「欠損填補による無償減資」により、①法人住民税均等割の計算②外形標準課税の資本割の課税標準が減少し、それぞれの税額が安くなります。詳しくは、「資本金等の額」をご参照ください。







 

The post No154.【無償減資】会計処理・税務処理・申告書の記載例/みなし配当や均等割等への影響は? first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
https://www.creabiz.co.jp/zaimu/154.html/feed/ 0
No104.ビットコインって何? https://www.creabiz.co.jp/zaimu/%e3%83%93%e3%83%83%e3%83%88%e3%82%b3%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%81%a3%e3%81%a6%e4%bd%95%ef%bc%9f.html/ https://www.creabiz.co.jp/zaimu/%e3%83%93%e3%83%83%e3%83%88%e3%82%b3%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%81%a3%e3%81%a6%e4%bd%95%ef%bc%9f.html/#respond Thu, 01 Dec 2016 15:38:26 +0000 http://www.creabiz.co.jp/?p=5057   1.ビットコインって? ビットコイン(Bitcoin)って、ここ2,3年話題になっていますよね。 今回は、この「ビットコイン」についてまとめました。   ビットコインは、簡単にいうと「インターネッ […]

The post No104.ビットコインって何? first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
°e¿[oRýÃ_n0zz®d„0ؚdÓ0ë0¤’0-NÃ_k000j0h00‰0D02

 


1.ビットコインって?

ビットコイン(Bitcoin)って、ここ2,3年話題になっていますよね。
今回は、この「ビットコイン」についてまとめました。
 
ビットコインは、簡単にいうと「インターネット上で使える仮想通貨」のことです。
インターネット上の「取引所」「販売所」で購入し、店舗で、商品等の購入に利用することができます。

%e3%83%93%e3%83%83%e3%83%88%e3%82%b3%e3%82%a4%e3%83%b3

ビットコインの現在の時価総額は1兆円(約110億ドル)。
「仮想通貨市場」全体の約8割で、利用者は世界で1,300万人以上(日本では数十万人以上)と言われています。

日本の店舗では、2016年9月現在、約2,500の店舗で利用ができるそうです。
(去年の同時期より4倍増加)


2.仮想通貨って?

でも・・そもそも「仮想通貨」って何なんでしょう?
現金や電子マネー(楽天エディ、ICOKAなど)などとも、実はちょっと異なります。
「電子マネーも、「仮想」っぽく見えますが、現金が形を変えたものにすぎず、「仮想」ではありません。
仮想通貨とは、その名の通り「仮想」の「通貨」のことです。
仮想通貨も通貨の一種であることには変わりありませんが、円やドルとは違って、手にとって目に見える姿形が存在しません。
 
 「仮想通貨」としてイメージしやすいのは、オンラインゲーム内の通貨です。
ゲーム内で使われている通貨を手に入れれば、そのゲーム内で使われている通貨が「使える」ゲーム内のお店で、アイテムを買うことができます。ゲーム内でのみ使える、仮想の通貨です。

他にも、特定の Web サイトでのみで使える仮想通貨も存在します。
利用登録の際に1,000円で1,000ポイントを購入し、その1,000ポイントで有料サービスを購入するというしくみを利用している Web サイトが存在します。そのポイントが「使える」Web サイト内でのみ有効な、仮想の通貨です。
 
 仮想通貨は上記のように物やサービスの購入目的の他、売却や交換によって利益を生み出すことができるため、FXのように投資目的で買われる方も多いです。

「仮想通貨」の大きな特徴は、次の3点です。


(1)発行責任者がいない


円やドルなどの「通貨」は、各国の政府が発行していますので(政府が支配する日本銀行など)、発行責任者は、最終的に「国」となります。
一方、ビットコインは発行責任者がいません(発行元は「プログラム」なんです)。


(2)絶対量が決まっている

「通貨」は、政府が決めれば、発行量を増やすことが可能ですが、ビットコインは「絶対量」が決まっていて、発行量を増やすことはできません。
金や銀などの「貴金属」と似ています
。貴金属は「資源」なので、当然、地球上にある上限が決まっている点、通貨と異なりますよね?
でも、これらの貴金属も「金融商品」として、1グラム何円という価値をつけて、取引されています。
ビットコインは・・これらの「貴金属」に近いイメージでよいと思います。


(3)世界中で使える

ビットコインは金や銀と同様、全世界で相場がありますので、国を超えて、世界中で使えます
円やドルは、使える国が決まっているのと違いますね。
逆に言うと、金や銀と同様、需要と供給で取引が成立していますので、「ビットコイン」の信用がなくなれば・・?
価値が「ゼロ」になる可能性もあります。


3.現金との比較

メリット デメリット
  • 世界中で使える
  • 送金手数料がほぼゼロ
  • 認知度が低いため、使えるサイトがまだまだ少ない(特に日本)
  • 現金と違って値動きがあり、価格が下落する可能性がある


4.どうやって使うの?


(1)財布を作る

まず、「財布(ウォレット)」と呼ばれるものを作ります。
ビットコインは現物ではなく電子データのため、「専用のビットコインウォレット(=お財布)」に残高を記録してためていきます。

具体的には、パソコンやスマホに、「ビットコインウォレット」をインストールします。
この「お財布」から、送金したり受け取ったりするんですね。
銀行等と異なり、24時間受取も支払も可能です。
無料で使えるものがほとんどです。


(2)ビットコインを買う

例えば、日本では有名どころとして、bitflyer・bitbank・zaifなどの「取引所」が、インターネット上にあります。
これらのサイトで「アカウント登録」して、ビットコインを購入します。

また、ピットコインを所有する人たちが集まる「サイト」で売買もできますね。
日本では、「東京ピットコイン会議」が有名ですね。


5.ビットコインは怪しい?

2014年に、ビットコインの取引所である「マウントゴックス」という会社が破たんしたニュースは、結構新聞でも取り沙汰されていましたね。
「マウントゴックス」は、ビットコインを盗まれて破たんしたということです。

ただし、この事件は、あくまで「取引所」の一つが破たんしただけで、「ピットコイン」の信頼性とは全く関係ありません。
貴金属やさんの一つが盗難でつぶれたからといって、「金」全体に信頼性が置けないか?という話は・・別問題ですよね?


6.投資対象?

ビットコインは、金融商品の一つですので、需給によって価値が増減します。
つまり、株と同じく、損したり利益がでたりするんですね。上手く投資すれば、資産運用として利用できます。


7.ビットコインに関する税金は?

%e3%83%94%e3%83%83%e3%83%88%e3%82%b3%e3%82%a4%e3%83%b3

(1)消費税

財務省と金融庁は、ビットコインなどの仮想通貨を「貨幣」と位置付けました。
そして、購入や売却する際の消費税を、2017年春をめどになくす調整に入っています
仮想通貨をモノやサービスではなく、「支払手段」として明確に位置付けたということですね。
これによってビットコインを購入するハードルが下がるので、これからもっとビットコインの重要性が増してくるでしょうね。


1(2)所得税

ビットコインを売却した利益には、当然所得税等がかかります。ここは資源や株式等と全く同じですね。

<< 前の記事「減資の会計処理・税務処理/申告書の記載 1 無償減資」次の記事「自社株買いって何?」 >>

 

The post No104.ビットコインって何? first appeared on Creabiz|公認会計士が運営する経営サポートメディア.

]]>
https://www.creabiz.co.jp/zaimu/%e3%83%93%e3%83%83%e3%83%88%e3%82%b3%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%81%a3%e3%81%a6%e4%bd%95%ef%bc%9f.html/feed/ 0