NO271【留保金課税】「特定同族会社」の留保金課税の計算方法のしくみをわかりやすく解説

 

法人は、原則として、「売上から経費」を差し引いた「利益」に対して法人税等が課税されますが、「法人税課税済となった利益」でも、法人内に蓄積された「留保利益」に追加課税される制度があります。「留保金課税」と呼ばれています。
今回は、「留保金課税」とはどういった制度なのか?対象となる会社、具体的な計算方法をお伝えしていきます。

 

1. 留保金課税とは

(1) 留保金課税とは?

一定の「特定同族会社」が、利益を多額に「社内に留保」した場合、通常の法人税に上乗せして法人税が課税される制度です。

 

(2) なぜ留保金課税が行われるのか?

オーナー会社の場合、オーナー自らが「役員報酬や株主配当等」を決定、調整する立場にあります。したがって、例えば、法人に利益が多く出た場合でも、役員報酬や配当を出さず、利益を社内に留保する意思決定をすれば、個人段階での給与・配当課税を回避でき、個人の税負担を恣意的に調整することが可能です。
そこで、「一定限度」を超えて「法人に利益を留保」した場合に、追加で法人税の課税を行い、個人段階での租税回避を防止する制度が、「留保金課税」と呼ばれる制度になります。

 

(3) すべての内部留保が対象ではない

留保金課税の制度は、内部留保がある場合に、常に課税される制度ではありません。留保金課税では、事業資金、投資資金など「必要な留保利益」には課税されません。留保利益から一定の「留保控除額」を差し引いた金額に課税されます。
つまり、健全な資金蓄積に課税する制度ではなく、オーナーが個人課税を避けるための「過度な利益留保」をターゲットに課税する制度です。

 

2. 対象となる法人は?

留保金課税の対象は、原則として、①資本金等が1億円超かつ②少数株主グループが支配する「特定同族会社」に該当する会社です。資本金等が1億円以下の法人は、原則として留保金課税の適用対象外となります。

 

【留保金課税の適用対象】

資本金・出資金の額 内容
1億円超 「特定同族会社」に該当Mすれば、留保金課税の対象。特定同族会社については、NO158参照
1億円以下 原則として、留保金課税の対象外。
ただし、以下の会社で、「特定同族会社」に該当する場合は、留保金課税の対象となる。
● 資本金5億円以上の法人、相互会社等「大法人」(※)との間に完全支配関係がある会社(直接+間接)
● 複数の「大法人」(※)により直接・間接に完全支配される一定の会社

(※)「大法人」の定義は、Q233参照。大法人には、海外親会社も含みます。
なお、例えば資本金5億円以上の法人に完全支配されている場合でも、「特定同族会社」の要件を満たさない場合は、留保金課税の対象からは外れます。留保金課税の適用対象となるかどうかの判定は、資本金だけでなく、株主構成を含めた「特定同族会社」に該当するか?がポイントとなります(株主判定は、「被支配会社でない法人」を除外して判定)。
「特定同族会社」の要件については、別途NO158でまとめていますので、そちらをご参照ください。今回のブログは、「留保金課税の計算方法」を中心に、以下お伝えしていきます。

 

3. 留保金課税の計算順序

(1) 計算の全体像

留保金課税は、法人税上の「所得」や「利益剰余金」全額に課税されるわけではありません。当期の法人税法上の「所得」をベースに算定した「当期留保金額」から、「留保控除額」を差し引いた残額(=課税留保金額)に課税されます。

 

① 留保金課税の課税対象(課税留保金額) = 当期留保金額(※) - 留保控除額
② 留保金課税額 = 課税留保金額 × 特別税率

(※) 当期留保金額=当期の法人税上の「所得」をベースに算定した金額

 

「留保控除額」とは、健全な資金蓄積部分のことです。つまり、留保金課税は、「健全な利益蓄積部分(=留保控除額)を超えた金額に対してのみ課税されることになります。

 

以下、上記式中の「当期留保金額」「留保控除額」の算定方法をお伝えしていきます。

 

4. 当期留保金額の算定

「当期留保金額」とは、単純な「当期の法人税上の課税所得」ではなく、その期に「実際に社内に残った法人税上の利益」のことです。

当期留保額 = 法人税上の所得金額 ± 社外流出額 - 法人税等 ± 配当等の調整

 

(1) 社外流出額・法人税等の調整

スタートは、法人税申告書の「所得金額」です。ただし、留保金課税では、「実際に社内に残った法人税上の利益」(=当期留保額)に対して課税されますので、「法人税上の所得」から、「社外流出額等」を調整していく必要があります。

 

例えば、法人税申告書上、交際費等の損金不算入額(加算・社外流出)、受取配当等の益金不算入額(減算・社外流出)がある場合、法人税上の「所得」には、交際費は含まれていますが、受取配当は含まれていません。そこで、「当期留保金額」(実際に社内へ残った税務上の利益)を算定するため、加算した交際費はマイナス、減算した受取配当は加算する調整を行います。

 

法人税上の所得から調整する「主な項目」は、以下の通りです。

 

【主な調整項目】

区分 内容 調整 摘要
課税外収入 受取配当等の益金不算入額・繰越欠損金の損金算入額など 加算 課税所得に入っていないが、会社内部に残るため
社外流出 交際費・寄附金・役員賞与などで社外流出となる損金不算入額 控除 課税所得には入っているが会社内部に残らないため
税金 法人税、地方法人税、所得割の住民税 控除 所得には反映されていないが、会社内部に残らないため

● 「繰越欠損金の損金算入額」は加算調整を行う結果、「繰越欠損金控除」により申告所得がゼロの場合でも、留保金課税が発生する場合があります。

 

(2) 配当等の調整

配当に関しては、法人税上の所得(税金)計算には影響はないため、当期の法人税申告書別表4の所得金額(留保額)は、前期末・当期末の決算配当が正しく反映されていません。
例えば、2026年3月決算で、2026年6月配当予定の金額は、2026年3月期の申告書の所得(留保額)には含まれています。しかしながら、実質的には2026年6月に配当された時点で社外流出となります。つまり、2026年3月期の当期利益を原資として、翌期の定時株主総会(2026年6月)に配当が予定されている場合、当該部分は、将来的に「会社内部に留保されない金額(=社外流出)」となります。したがって、「当期留保金額」を算定するにあたって、「配当予定額」については、法人税上の所得(留保額)から差し引く必要があります。

 

逆に、「前期決算の配当」は、上記と逆のパターンです。前期決算の配当については、当期の法人税申告書別表4では、「当期利益」欄の「社外流出欄」で記載され、所得(留保額)からは既に減少しています。しかしながら、前期の留保金課税の計算で、既に控除されている状態のため、このままだと、同じ配当が二重で控除されることになります。したがって、前期決算の配当部分は加算する調整を行います。

 

配当の期ずれ 当期(予定の)配当 控除 課税所得に含まれるが、社外に出ていくため。
前期(支払済の)配当 加算 既に前年の留保金課税の計算で控除済のため。

 

5. 留保控除額の計算方法

「健全な資金蓄積額」を示す「留保控除額」は、当期留保金額から控除します。
「留保控除額」は、次の3つのうち、最も大きい金額で算定します。

 

所得基準 所得等の金額 × 40%
定額基準 2,000万円 × 当期の月数 ÷ 12(※)
利益積立金基準 期末資本金等の額 × 25% − 期末利益積立金額

(※)事業年度が1年未満の場合、当期の月数に応じて調整。1月未満の端数は切り上げ。

 

(1) 所得基準の「所得等の金額」とは?

原則として、法人税申告書別表4の一番下「所得金額(総額)」となります。
ただし、繰越欠損金の控除がある場合は、控除前の金額となります。

 

(2) 利益積立金基準の「期末資本金等の額」とは?

会計上の「資本金の額」をさし、資本準備金等は含めません。

 

(3) 利益積立金基準の「期末利益積立金額」とは?

当該金額は、別表5の「差引翌期首現在利益積立金額」ではありません。「期首現在利益積立金額-前期の配当支払額」となります(組織再編を除く)。当期の利益(所得)を反映すると、利益積立金基準の金額が減少する結果、留保控除額が減少し、結果的に、「課税留保金額」が多くなってしまうためです(同じ当期所得を二重にカウントしてしまうのを回避する趣旨)。
また、上記で算定した「期末利益積立金額」がマイナスの場合は、資本金等の25%相当額に、当該マイナス額を加算する必要があります。

 

6. 留保金課税額の計算

当期留保金額から留保控除額を差し引いた「課税留保金額」が算定された後、最終的に、「留保金課税」の税額算定に進みます。「課税留保金額」に、次の税率を掛け合わせた税額が、(通常の法人税とは別に)留保金課税として法人税が課税されます。

 

課税留保金額 税率
年3,000万円以下の部分 10%
年3,000万円超・年1億円以下の部分 15%
年1億円超の部分 20%

● 事業年度が1年未満の場合、税率区分の「年3,000万円」「年1億円」は、当期の月数に応じて調整します。
● 留保控除額を差し引いた、「課税留保金額」は1,000円未満切り捨て。

 

7. 計算の具体例

● 法人税申告書 別表4の課税所得9,000万円(繰越欠損金2,000万円控除後)
● 交際費の損金不算入額500万円。その他の加減算はなし
● 当期の法人税等の支払予定 1,500万円。配当は前期当期ともなし
● 事業年度は12か月とする
● 期末資本金の額2億円、期首利益積立金額1億円

 

(1) 当期留保金額

9,000万円(別表4課税所得)+2,000万円(繰越欠損金)-500万円(交際費)-1,500万円(法人税等)=9,000万円

 

(2) 留保控除額

金額 計算根拠
所得基準 4,400万円 (9,000万円(別表4課税所得)+2,000万円(繰越欠損金))× 40%=4,400万円
定額基準 2,000万円 2,000万円×12÷12
利益積立金基準 0万円 2億円 × 25% − 1億円(期首利益積立金額)=△5,000万円 ⇒ ゼロ

⇒最大額 4,400万円(所得基準)が選択可能

 

(3) 課税留保金額

9,000万円(当期留保金額) ― 4,400万円(留保控除額) = 4,600万円

 

(4) 留保金課税額

区分 課税留保金額 税額 計算根拠
年3,000万円以下の部分 3,000 万円 300万円 3,000万円×10%=300万円
年3,000万円超の部分 1,600万円 240万円 1,600万円×15%=240万円
年1億円超の部分 - -
合計 4,600万円 540万円

通常の法人税に加えて、540万円の留保金課税が生じます。

 

8. 申告書

申告書では、別表三(一)および付表を作成します。

 

9. 参照URL

留保金額の計算
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/16/16_01_02.htm
別表3(一)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2025/pdf/02-04.pdf

 

10. Youtube

 

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