No269【同族会社家賃】オーナー個人所有不動産を、同族会社に賃貸する場合の賃料相場は?相当の地代と実際賃料が異なる場合の課税関係 /小規模宅地等の特例との関係 

 

同族会社の場合、オーナー社長個人が所有する不動産を、同族法人に賃貸するケースがあります。こういった同族間での賃貸借契約の場合、オーナー個人が取引額を自由に決定できることから、税務上、課税されるケースがあります。
今回は、オーナー個人と同族会社間の不動産賃貸借に係る、税法上の取扱いにつきお伝えします(個人から法人に賃貸する場合を前提にしています)。

 

1. 不動産賃料の金額決定方法

(1)原則 第三者価額

法人税上、資産の譲渡・役務の提供を行う場合は、時価(=その時における価額)での取引が原則です(法法22条、所法59条)。したがって、同族間での賃貸借の場合は、近隣相場等で、「第三者に賃貸する場合の価格」が、原則的な取扱いになるかと思われます。

 

(2)土地を賃借する場合

貸家建付地など、土地の賃貸を伴わない「一般的な賃貸借」であれば、「第三者に賃貸する場合の価格」が原則となりますが、建物所有を目的として「土地」を賃借する場合は、「借地権認定課税」の論点があります。
土地を賃借する場合、土地所有者に「権利金」(※)を支払うことが一般的ですので、「権利金」を支払わない場合は、原則として、権利金の部分だけ「儲かったもの」として、賃借人側に法人税が課税されます(借地権認定課税・賃借人が法人の場合のみ)。

ただし、以下の場合は、「権利金」を支払わなくても、借地権認定課税が行われません。

 

したがって、オーナー個人所有の土地を同族法人に賃貸する場合は、借地権認定課税が行われない「相当の地代」をもとにした賃料相場にしておけば、課税上問題になることはありません

(※)一般的な権利金の金額=土地の更地価格等(公示価額・路線価等)×借地権割合

 

(3)相当の地代とは?

法人税上、「相当の地代」の金額は、以下の一番低い価額を取ることが認められています(タックスアンサー5732)。

土地の通常の取引価額(時価)×年6%
公示価格(or標準価額)×年6%
その年の路線価評価額×年6%
直近3年平均の路線価評価額×年6%

実務上は、多くのケースで、上記③か④が一番安くなります。

 

2. 小規模宅地等の特例との関係 (相当の対価

個人が同族法人に不動産を賃貸する場合、相続税上、「小規模宅地等の特例」(貸付事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等)という制度があります。土地の相続税評価額につき、50%or80%減額できる特例です。当該小規模宅地等の特例の要件として、「相当の対価」を収受していることが必要となります。

 

(1)特例の要件となる「相当の対価」とは?

「相当の対価」は、先ほどの「相当の地代」と、概念が微妙に異なります。
一般的に、相当の対価<相当の地代の関係になります。
法令上、「相当の対価」の定義はありませんが、過去の裁判例では、以下となっています。

  • ● 「家賃収入から経費、減価償却費、固定資産税を差し引いて、利益が生じる程度
  • ● 近隣の同種・類似物件の賃料相場と比べて、著しく低くない程度

上記より、例えば、利益が出ていない場合でも、近隣の賃料相場と比べて著しく低くなければ、「相当の対価」、と認められる可能性は高くなります。逆に言うと、無償や固定資産税程度の賃料の場合は、「相当の対価」と認められない可能性が高くなります。

 

(2)固定資産税の3倍程度の地代は認められるのか?

小規模宅地等の特例の要件となる「相当の対価」につき、「固定資産税の3倍程度」の地代を収受していれば、「相当の対価」とする実務もあるようです。当該根拠は、下記の「法人税施行規則4条」を類推しているものだと推測されます。

法人税施行規則 第4条 住宅用土地の貸付業で収益事業に該当しないものの要件
令第5条第1項第5号ヘ(不動産貸付業)に規定する財務省令で定める要件は、同号ヘに規定する貸付業の貸付けの対価の額のうち、当該事業年度の貸付期間に係る収入金額の合計額が、当該貸付けに係る土地に課される固定資産税額及び都市計画税額で当該貸付期間に係るものの合計額に三を乗じて計算した金額以下であることとする。

ただし、上記の規定は、法人税上、「不動産貸付業」で収益事業に該当しないための要件であり、相続税上の「小規模宅地等の特例」とは直接関係ありません。したがって、当該実務は特に根拠条文があるわけではありませんので、注意が必要です。

 

3. 結論

個人が同族法人に賃貸する場合の「賃料」は、原則として「第三者への賃貸価格」となりますが、土地を賃貸する場合は、「相当の地代」で設定しておけば、課税上問題になることはありません。
ただし、「相当の地代」は、現実的には金額が高くなることが予想されますので、少なくとも、将来相続の際に、「小規模宅地等の特例」の利用ができるよう、「相当の対価」以上で賃料を設定しておく方が良いかと思います。

 

4. ご参考 相当の地代と異なる場合の課税関係 (法人側)

個人所有の土地を同族法人に賃貸する場合、「実際の賃料」が、「相当の地代」に満たない(無償も含む)ケースがあります。この場合、法人側に課税される金額は、以下となります(=借地権認定課税)。詳しくは、Q57をご参照ください。
権利金の授受なし、「土地の無償返還の届出書」を提出していない場合を前提にします。

 

(1)法人側に課税される金額

実際賃料<相当の地代の場合、法人側に「借地権認定課税」が行われます。借地権認定課税の金額は、以下の式で算定されます。

認定課税額=土地の取引価額等(※)×(1-実際地代の年額/相当地代の年額)

 

【法人側での仕訳】
借地権(資産)×× / 受 贈 益(益金算入) ××

 

(2)個人側の取扱い

「実際の地代」が「相当の地代」と異なる場合でも、役員個人側については、あくまで実際に受け取った金額を収入金額として所得税が課税されるのみです
なお、借地権の設定行為は「資産の譲渡」に該当しないため、みなし譲渡所得課税(時価の2分1未満で譲渡)の適用はありません(所得税基本通達59-5)。

 

(3)ご参考 実際家賃が、相当の地代よりも高い場合

実際賃料>相当の地代の場合は、借地権認定課税の論点は生じません。ただし、オーナー個人が同族会社の役員の場合は、実際賃料と相当家賃との差額が役員報酬として認定されます。当該部分は、不動産所得ではなく、給与所得となりますので、定期同額給与を超える部分は、役員報酬損金不算入となります。また、源泉徴収も必要となります。

【法人側での仕訳 (源泉徴収は省略)】
役員報酬(費用)×× / 現金 ××
(※)役員報酬は、定期同額部分を超えた金額は、原則として損金不算入となります。

 

5. 参照URL

No.5730 権利金の認定課税について

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5730.htm

No.5732 相当の地代及び相当の地代の改訂

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5732.htm

 

6. Youtube

 

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