減資の会計処理・税務処理/申告書の記載1 無償減資
目次
減資の方法には大きく2つの方法、「有償減資」と「無償減資」の2種類があります。
有償減資は、株主への払戻を伴う「実質的な減資」、一方、無償減資は、欠損填補を穴埋めするための「形式的な減資」です。
両者に共通する点は、会計処理及び税務処理とも「資本取引」と位置付けられる点です。
ただし、有償減資の場合は、税務上「みなし配当」が生じ、「申告調整」が必要な点が大きな違いです。
今回は、1つ目、「無償減資」ををまとめます。
(次回「有償減資」をまとめます)。
1. 無償減資の例題
簿価純資産100,000(うち、資本金130,000、利益積立金△30,000)の会社が、欠損填補を穴埋めするため無償減資を行い、資本金50,000を取崩した。
2. 会計処理
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
資本金 | 50,000 | その他利益剰余金 その他資本剰余金 |
30,000 20,000 |
まず、欠損填補部分(△30,000)を「その他利益剰余金」に充当し、残額は「その他資本剰余金」(資本金及び資本準備金減少差益)で処理します。
3. 税務処理
借方 | 貸方 |
---|---|
仕訳なし |
「無償減資」は、株主への払戻がなく、単に「純資産の部」内での振替にすぎません。
したがって、法人税法上は何もなかったものとして取り扱われます(法施令8・9条)。
4. 申告調整(税務修正仕訳)
法人税上、所得の額(別表4)、資本金等の額及び利益積立金額(別表5)に変動はありません。
ただし、既に会計処理が行われているため、別表5内で振替調整を行います。
(税務調整仕訳)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
利益積立金 資本金等の額 |
30,000 20,000 |
資本金(等の額) | 50,000 |
税務上の仕訳に合わせるための会計仕訳取消の振替処理です(会計上の「利益」と税務上の「所得」に差異はありません)。
5. 別表の記載
(1) 別表4の記載
会計上の「利益」と税務上の「所得」に差異はありませんので、記載はありません。
(2) 別表5の記載
①利益積立金の計算に関する明細書
区分 | 期首 | 当期中の増減 | 差引 | |
---|---|---|---|---|
減 | 増 | |||
利益準備金 | ||||
無償減資 | 30,000 | △30,000 | ||
繰越損益金 | 30,000 |
緑の数値は、会計処理を示していますので申告調整ではありません。
既に、欠損填補の会計処理として、「繰越損益金」は、30,000だけ多くなっているはずです。
この会計処理を前提に、税務上は何もなかった形に戻すため、会計処理を取り消す申告調整を行います。
② 資本金等の額の明細書
区分 | 期首 | 当期中の増減 | 差引 | |
---|---|---|---|---|
減 | 増 | |||
資本金又は出資金 | 130,000 | 50,000 | 80,000 | |
資本準備金 | 20,000 | 20,000 | ||
無償減資 | 20,000 | 50,000 | 30,000 |
緑の数値は、会計処理を示していますので申告調整ではありません。
既に、減資の会計処理として、「資本金」及び「資本準備金」(その他資本剰余金)はそれぞれ+80,000、+20,000となっているはずです。
この会計処理を前提に、税務上は、何もなかった形に戻すため、会計処理を取り消す申告調整を行います。
6. 無償減資と住民税均等割・外形標準課税との関係
無償減資等による欠損填補額は、①「法人住民税」均等割の計算②外形標準課税の資本割の課税標準となる額の算定にあたり、減算することができます。
つまり、税額が安くなる可能性があるってことですね。
ここ非常に大事です!詳しくは、資本金等の額って?をご参照ください。
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