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会社法では、「剰余金の分配可能額」という概念があります。
例えば、配当を行う場合や、「自己株式の取得」を行う場合、「分配可能額まで!」という制約があるんですね。(会社法461)。

今回は、この「分配可能額」はいくら?という話です。


1.一般的な会社の場合

「分配可能額」の算定は・・実は非常にややこしいです。
でも、複雑な取引がない中小企業では、これさえ押さえておけば、ほとんどの会社は算定できます。

分配可能額=その他資本剰余金の額+その他利益剰余金の額―自己株式帳簿価額


2.分配可能利益の算定~例題~

クレア社の貸借対照表「純資産の部」は、以下の通りです。
分配可能額はいくら?

 
20%e9%85%8d%e5%bd%93%e5%8f%af%e8%83%bd%e5%88%a9%e7%9b%8a
 

(分配可能額の計算)

その他の資本剰余金1,000 + その他利益剰余金2,500(※)- 自己株式500 = 3,000

(※)その他利益剰余金 = 任意積立金500 + 当期未処分利益2,000

3.注意事項

  • 分配可能額には、決算日から分配時点までの「期間損益」は含まれません
    (臨時計算書類を作成した場合は除く(会社法461条第2項2号)。
  • 純資産額が300万円未満の場合は「剰余金の配当」ができません
    また、配当を行うことで、純資産が300万円未満となるような配当もできません(会社法458条)
  • 配当をした場合、配当額の1/10「利益準備金等」の積立が必要となります(資本金の1/4に達するまで)。
    つまり、利益準備金等の積立を考慮すると、配当可能な「分配可能額」は、×10/11となります。
    (利益準備金の積立が必要な期間のみ)


4.ご参考

もう少し詳しく「分配可能額」の算定ステップを記載すると、以下の3つとなります。

  •  決算日の剰余金の額の算定
  •  分配時点の剰余金の算定
  •  分配可能額の算定


(1)決算日における剰余金の額の算定

決算日における剰余金の額は、会社法に詳細に記載されています(会社法446条、会社計算規則149条)が・・・
非常にややこしいので「結論」だけ記載しますね。

決算日における剰余金の額=その他資本剰余金の額+その他利益剰余金の額


(2)分配時点の剰余金の額の算定

分配時点の剰余金の額は、会社法に詳細に記載されています(会社法446条2~7号)が・・・
非常にややこしいので「結論」だけ記載しますね。

分配時点における剰余金の額=上記(1)+下記調整額

+ 自己株式処分損益・減資差益・準備金減少差益
決算日以降の自己株式消却額
剰余金の配当額
法務省令で定める額(会社計算規則150)(※)

(※)代表的なもの

  • 「剰余金」から「資本金の額又は準備金」への振替
  •  「剰余金の配当」を実施した場合の準備金積立額


(3)分配可能額の算定

分配可能額は、会社法に詳細に記載されています(会社法461条第2項)が・・・
非常にややこしいので「結論」だけ記載しますね。

分配可能額=上記(2)+下記調整額

分配時点の自己株式の帳簿価額
事業年度末日後に自己株式を処分した場合の処分対価
その他法務省令で定める額(会社計算規則158)(※)

 

(※)代表的なもの

  • その他有価証券評価差額・土地再評価差損
    プラス(評価差益)の場合、分配可能利益に含まれず、マイナス残高(評価差損)の場合は、分配可能額から控除します。
  • のれん等調整額(会社計算規則158条)
    資産の部に「のれん」が計上されている場合には、①のれん等調整額と②資本等金額(※)を比較して分配可能額から控除します。

  (※)
   ①のれん等調整額=のれん(資産の部)×1/2+繰延資産

   ②資本等金額=資本金+資本準備金+利益準備金

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