GD089

 

 

前回は、「その他資本剰余金」から配当を行う法人の会計処理をまとめましたが、
今回は、その相手方「その他資本剰余金」から配当を受ける側の会計処理につきまとめます。
 

基本的には、「前回例題」と、同じ数値を使って説明します。



 
 

1. 例題

  • 簿価純資産額100,000(うち、資本金15,000、資本準備金15,000)の会社が、資本金2,500及び資本準備金2,500を取り崩し、「その他資本剰余金」5,000に振り替えた上、株主に5,000の配当を行った。
  • 配当前の法人税上の「資本金等の額」は、30,000。
    (→会計上の資本金15,000 + 資本準備金15,000と一致している)
  • 株主は1人のみ(=配当受ける人も1人)。
    株主(1人)が保有する有価証券の簿価は30,000とします。
  • 今回の配当による払戻割合は16.7%(5,000 ÷ 30,000)となります。

 

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2. 会計処理

配当受領側は、会計上は、「売買目的有価証券」である場合を除き、原則として配当受領額を有価証券の帳簿価額から減額します(適用指針第3号)。
(なお、「売買目的有価証券」等の場合は、「受取配当金」で計上します(適用指針4項、5項))

 

(会計仕訳)

借方 貸方
現預金
仮払金(or法人税等)
4,285
715
有価証券 5,000
  • 借方の「仮払金」は、税務上、配当とみなされる部分(みなし配当)に対応する源泉所得税です。
    源泉所得税の金額は、前回をご参照ください。
    同じ金額となります。
     
  • なお、配当額が「その他利益剰余金」、「その他資本剰余金」のどちらを原資とするものなのか?不明な場合は、「受取配当金」に計上できます。

 


 

3. 税務処理

税務上は、利益積立金額の減少部分は受取配当金(みなし配当)、資本金等の額の減少部分は、当初払込資本金等の払戻し(株式の譲渡対価)と考えます。
 

(税務仕訳)

借方 貸方
現金
仮払金(or法人税等)
有価証券売却損(※2)
4,285
715
3,500
受取配当金(※1)
有価証券
3,500
5,000

(※1) 「受取配当金」の金額は、通常は、「配当の支払通知書」に記載されています。
配当側の「利益積立金額取崩額」と一致します。
詳しくは、前回を参照ください。
 
配当を受けた側の受取配当金 = 配当を行った側の「みなし配当」金額
 
(※2)実務的には、貸借差額で算定します。
今回の払戻に対応する有価証券簿価5,000(30,000 × 払戻割合16.7% = 譲渡原価)と、「受取配当金」の金額(3,500)を記載し、貸借差額で「有価証券売却損益」を算定。
 
上記処理の考え方を整理すると、収入額5,000のうち3,500は配当、残り1,500は、有価証券の「売却」と考えています(簿価5,000の有価証券を1,500で売却)。
 
(※)「有価証券売却損」と「受取配当金」は相殺しません。
それぞれ、「課税」の取扱いが異なるためです。
受取配当金は「益金不算入」、売却損は「損金」になります。
 

(ご参考~株主への支払通知書)

通常、株主側の税務処理は、「支払通知書」から仕訳が可能です。

受取配当の額(=みなし配当) 支払通知書に記載されている。
株式の譲渡対価 払戻額から➀の額を差し引いて算定
株式の譲渡原価 通知書に払戻割合が記載されている。
保有株式帳簿価額 × 払戻割合を乗じて計算。



 

4. 申告調整(税務修正仕訳)

会計上は、損益が計上されないのに対し、税務上は、「受取配当金」と、「有価証券売却損益」を計上する必要があるため、申告調整が必要となります。
 

(税務調整仕訳)

借方 貸方
有価証券売却損 3,500 受取配当金 3,500
  • 株主が法人の場合は、受取配当等の益金不算入(別表8)を通じて、別表4で減算となり、所得が変わってきます。

 

5. 別表の記載

(1) 別表4の記載

所得の金額の計算に関する明細書

区分 総額 処分
留保 社外流出
当期利益
加算 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
受取配当金計上漏れ (※1)3,500 (※1)3,500
減算 受取配当金益金不算入 (※2)3,500 (※2)3,500
有価証券売却損計上もれ (※1)3,500 (※1)3,500
・・・ ・・・ ・・・ ・・・

(※1)会計処理で、損益仕訳が未了のため、税務申告で損益処理したとみなすもの(留保)
(※2)上記(※1)の結果、認識された「受取配当金の益金不算入」の処理です(社外流出)。
別表8から転記されます(100%子会社の場合とします)。

  • ただし、H22年改正により、100%グループ法人間で、みなし配当等が生じる事由により金銭等の交付を受けた場合などは、「株式譲渡損益」が計上できなくなりました。
    (法人税法61条の2⑯)(法令8条①十九)。
  • 上記の例題は、議論をわかりやすくするため、この論点を無視して、「有価証券売却損」を計上していますが、100%グループ法人間の場合、現実的には「有価証券売却損」は計上できず、「資本金等の額」を加減算することになる点、ご留意ください。



 

(2) 別表5の記載

利益積立金の計算に関する明細書

区分 期首 当期中の増減 差引
利益準備金
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
配当・売却損計上漏れ 3,500 3,500 0
  • 加算減算でゼロになるため、記載してもしなくでもどちらでもよいと思います。

 

資本金等の額の明細書

記載なし

 

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