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例えば、①本人が勤務先を退職した場合や、②配偶者等が自身の収入増加等により「社会保険の扶養」から外れる場合、国民健康保険・国民年金への加入手続が必要です。
また逆に、①本人が再就職した場合や、②配偶者等が収入減少等により「社会保険の扶養」の要件を満たす場合は、国民健康保険・国民年金の脱退手続が必要となります。

今回は、退職・再就職・収入変動等により、社会保険を脱退・加入する場合の「国民健康保険・国民年金」の手続につき解説します。

 

1. 国民健康保険・国民年金とは?

 

(1) 国民健康保険とは?

国民健康保険は、フリーランスや自営業、無職、年金受給者など、勤務先の社会保険に加入されていない方を対象とした健康保険です。日本国民は、「公的医療保険」に加入義務がありますので、①勤務先等の「社会保険(健康保険)」、②各市区町村が運営する「国民健康保険」のどちらかに加入しないといけません。

(2) 国民年金とは?

国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の方で、勤務先等の社会保険に加入されていない方に義務付けられる公的年金制度です(第1号被保険者)。なお、勤務先の社会保険(厚生年金)を支払っている場合は、国民年金は自動的に支払っている取扱いとなります(1階部分)。

 

2. 退職や扶養から外れた場合/国民健康保険・国民年金の加入手続

 

(1) 退職や扶養から外れた場合の取扱い

勤務先を退職した場合や、配偶者等の収入増加により社会保険の扶養から外れる場合、国民健康保険・国民年金への加入が必要となります(国民年金は20歳以上60歳未満の方のみ)。扶養から外れる「年間収入130万円」の論点については、NO203で詳しく解説しております。ご参照ください。

内容 留意事項
退職等により、勤務先の社会保険を脱退する場合(被扶養者も含む) 本人だけでなく、被扶養者(配偶者など)も、国民健康保険・国民年金の加入が必要
パート収入が増えたこと等により、社会保険の扶養から外れる場合。 【扶養から外れる収入基準】
● 60歳未満の場合
⇒年収130万円以上
● 60歳以上や障害者の場合
⇒年収180万円以上

なお、退職等により社会保険を脱退した場合でも、①退職後すぐに「新しい勤務先」の社会保険に加入する場合や、②配偶者等の扶養に入る場合は、国民健康保険・国民年金に加入する必要はありません。

(2) 国民健康保険・国民年金の加入手続

国民健康保険・国民年金の加入手続はご自身で行う必要があります。勤務先を退職した場合でも、会社がやってくれるわけではありません。居住する市役所等で手続を行います。なお、国民健康保険の場合は、世帯単位で加入しますので、世帯内に国民健康保険の加入者がいる場合は、世帯主が届け出を行います。

(3) 期限

国民健康保険・国民年金の加入は、事由発生日(社会保険資格喪失日)から14日以内に行う必要があります。事由発生日は、①退職の場合は退職日の翌日②収入が130万を超えて扶養を外れる場合は、収入が増えた日となります。

(4) 必要書類

勤務先の社会保険を脱退し、国民健康保険・国民年金に加入する場合は、以下の書類が必要となります。

社会保険資格喪失証明書(※)
マイナンバーカードorマイナンバーがわかる書類
本人確認書類(国民健康保険の場合、世帯主の本人確認書類・保険証も必要)
年金手帳又は基礎年金番号がわかる書類(基礎年金番号通知書)

(※)退職した勤務先(or配偶者等の勤務先)から入手します。日本年金機構でも発行可能です。会社は、資格喪失日から5日以内に「被保険者資格喪失届」を日本年金機構に提出し、その後、従業員に「社会保険資格喪失証明書」を発行します。
なお、社会保険の資格喪失日から国民健康保険・国民年金に切り替わりますので、社会保険の支払額とダブることはありません(二重分は還付される)。
退職時の会社側の手続については、NO176をご参照ください。

(5) 国民健康保険料・国民年金の発生時期

国民健康保険料・国民年金は、手続の有無にかかわらず、「社会保険資格喪失日」から自動的に発生します。
したがって、仮に手続が遅れた場合でも、健康保険は、事由発生日から最長2年分の保険料を遡って支払う必要があります。一方、国民年金については、遡って請求されることはありませんが、納付期限2年経過後は、過去の分を遡って後から納めることはできません

 

3. 再就職や扶養の要件を満たす場合/国民健康保険・国民年金の脱退手続

 

(1) 再就職や扶養の要件を満たす場合の取扱い

再就職した場合や、収入減少等により社会保険の扶養になる場合、国民健康保険・国民年金の脱退手続が必要となります(国民年金は20歳以上60歳未満の方のみ)。

内容 留意事項
再就職等により、勤務先の社会保険に加入した場合(被扶養者も含む)。 本人だけでなく、被扶養者(配偶者など)も、国民健康保険・国民年金の脱退手続が必要
パート収入等が減少したことにより、社会保険の扶養に入る場合。 【扶養の要件を満たす収入基準】
● 60歳未満の場合
⇒年収130万円未満
● 60歳以上や障害者の場合
⇒年収180万円未満

上記の他、死亡した時や生活保護を受ける場合、外国籍の方が脱退する場合は、脱退手続が必要です。なお、後期高齢者医療制度に加入する場合(75歳)、国民健康保険は自動的に脱退の扱いとなり、届出は不要です。

(2) 国民健康保険・国民年金の脱退手続

国民健康保険・国民年金の脱退手続はご自身で行う必要があります。再就職した場合でも、会社がやってくれるわけではありません。居住する市役所等で手続を行います。なお、国民健康保険の場合は、世帯単位で加入しますので、世帯内に国民健康保険の加入者がいる場合は、世帯主が届け出を行います。

(3) 手続の期限

国民健康保険の脱退は、事由発生日(社会保険資格発生日)から14日以内に行う必要があります。事由発生日は、①再就職の場合は入社日②収入が130万未満となり扶養に入る場合は、収入が減少した日となります。

(4) 必要書類

脱退する場合は、国民健康保険の脱退についてのみ、以下の書類が必要となります。
(国民年金については、新しい勤務先で厚生年金保険に加入する場合は、自動的に喪失となりますので、個人側の手続は特にありません)。

社会保険資格取得証明書(※)
マイナンバーカードorマイナンバーがわかる書類(脱退する方全員)
本人確認書類(国民健康保険の場合、世帯主の本人確認書類・保険証も必要)
国民健康保険証

(※)再就職する勤務先(or配偶者等の勤務先)から入手します。日本年金機構でも発行可能です(市町村によって、勤務先等の健康保険証で代用できる場合もあり)。会社は、資格取得日から5日以内に、「被保険者資格取得届」を日本年金機構に提出し、その後、従業員に「社会保険資格取得証明書」を発行します。
なお、社会保険と、国民健康保険料・国民年金の支払いがダブることはありません(二重分は還付される)。

 

4. ご参考 退職した場合の健康保険の選択肢

 

(1)  健康保険の任意継続

勤務先の健康保険に2か月以上加入されていた方は、退職後20日以内に、加入していた協会けんぽ等の保険者へ申請すれば、2年間加入を継続することができます。

(2) 健康保険の扶養認定

ご家族が勤務先の健康保険に加入されている場合、「扶養の要件」を満たす場合は、勤務先の健康保険の扶養家族となることが可能です(要件については、NO203参照)。

(3) 国民健康保険への加入

上記(1)(2)どちらも満たさない方は、国民健康保険への加入が義務づけられます。退職後14日以内に住所地の区役所・支所へ届出が必要です。

 

5. 参照URL

(被扶養者とは?)

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat320/sb3160/sbb3163/1959-230/#7-a

(神戸市 国民健康保険の加入届(勤務先の健康保険を脱退された方)

https://www.city.kobe.lg.jp/a52670/kurashi/support/insurance/todokede/kanyu.html

(神戸市 国保の加入・脱退等の届出)

https://www.city.kobe.lg.jp/a52670/kurashi/support/insurance/todokede/index.html

(国民年金)

https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140710-04.html

6. Youtube

 
YouTubeで分かる「国民健康保険・国民年金加入・脱退手続き」
 

 

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