外国人の方でも、10年以上「厚生年金」に加入していれば、将来、日本の年金の「受取」が可能です。
逆に「短期国内滞在者」などで、「年金支払期間」が10年に満たない場合は・・将来年金を受け取ることができません。
こういった場合、年金は「払い損」・・になるのでしょうか?
もし「払い損」になるのであれば・・短期滞在者の外国人の方は「年金」を払いたくないですよね。
そこで、日本から母国に帰国する場合、過去に支払った年金を「一部還付」してもらえる制度が認められています。
脱退一時金」と呼ばれます。

 

1. 脱退一時金の要件

「脱退一時金」受給の要件は以下の通りです。
日本の年金制度に6か月以上加入していれば、脱退一時金の受給が可能です。
 

日本国籍を有しないこと。
公的年金制度(厚生年金保険または国民年金)の被保険者ではない。
国民年金または厚生年金保険(共済組合等含む)に6か月以上加入。
老齢年金の受給資格期間(10年以上)を満たしていないこと
障害年金等の年金を受ける権利を有したことがないこと。
日本国内に住所を有していないこと。
公的年金制度の被保険者資格喪失日から2年以上経過していない(喪失日に日本国内に住所がある場合は、日本国内に住所を有しなくなった日から2年)

 
なお、日本で10年以上「年金」を納めている場合、脱退一時金を受給することはできませんが、母国でも日本の年金を受けることは可能です。

 

2. 税務上の取扱い

(1) 退職所得扱い

「国民年金脱退一時金」「厚生年金脱退一時金」とも、税務上は「退職所得」とみなされます(所得税法31条)。

 

(2) 厚生年金脱退一時金は源泉徴収

厚生年金脱退一時金を「非居住者」が受け取る場合は、源泉所得税として20.42%が天引きされます(国民年金脱退一時金については源泉徴収はなし)。
 

(3) 確定申告で還付可能

源泉徴収された税額は、「退職時の選択課税」を利用して「確定申告」を行うことで、税金の還付を行うことが可能です。
一般的には「納税管理人」を指定して、納税管理人口座で還付を受け、非居住者の口座へ送金します。

 

3. 脱退一時金を受け取った場合の影響

「脱退一時金」を受け取ることで、過去に年金を納めた期間は「年金加入期間」から除外されますので、以下の点に留意が必要です。
 

(1) 老齢年金への影響(国内)

「脱退一時金」を受け取ると、過去に支払っていた「年金加入期間」は、老齢年金の受給資格期間(10年以上)としてカウントされなくなります。
例えば、いったん母国に帰国し、将来日本に戻って年金に加入する場合は、「脱退一時金」受取時点で年金加入期間はリセットされます。
したがって、日本に戻った後「年金」を支払う場合には、老齢年金の受給資格期間(10年以上)に注意が必要です。
 

(2) 社会保障協定締結国の場合(海外)

日本と「年金通算」の協定を締結している国の場合(社会保障協定)、両国での年金「受給加入期間」を通算することができます。
しかし、「脱退一時金」を受けることによって、日本では保険料を納めていないこととなるため、母国での「年金受給資格期間」に、日本での納付期間は合算されません。

 

4. 支給金額の計算

(1) 厚生年金の場合

会社の従業員等、厚生年金加入者の「脱退一時金」の金額は以下のとおりです。

平均標準報酬額(※1) × 18.3% (※2) × 1/2 × 支給額計算に用いる数 (※3)

 
  (※1) 厚生年金加入期間の標準報酬月額+標準賞与額の合算(2003年4月以後)
  (※2) 保険料率は、現在は18.3%で固定
  (※3) 支給額計算に用いる数は、厚生年金加入期間に応じて決められている。
 

(2) 国民年金の場合

国民年金加入者の場合は、保険料支払額が一律のため、脱退一時金の額も納付月数により金額が決められています。

最後に保険料を納付した年度の保険料額 × 1/2 × 支給額計算に用いる数(※)

 
 (※) 支給額計算に用いる数は、保険料納付済期間等の月数に応じて決められている。
 

(3) 厚生年金加入者の「脱退一時金」は、国民年金上乗せなし

厚生年金加入者が受け取る「脱退一時金」の金額は、「国民年金計算分」が上乗せされるわけではなく、上記の「厚生年金計算金額」のみとなります(「老齢基礎年金」と取扱いが異なる)。
ここでの「国民年金の脱退一時金」金額の計算は、あくまで、「国民年金」を支払っている方の計算方法となります。
 

(4) ご参考 支給額計算に用いる数&国民年金脱退一時金の金額

2021年10月時点の「支給額計算に用いる数」と「国民年金一時脱退金の金額(令和3年)」は以下の通りです。
改正により、2021年4月以降に保険料を納付している場合は、支給上限年数が5年(60ヵ月)に引き上げられています。

【最終月(最後に保険料を納付した月)が2021年4月以降の場合】

被保険者の期間
(or 保険料納付済期間等の月数)
支給額計算に用いる数 国民年金一時脱退金
支給額(令和3年度)
6月以上12月未満 6 49,830円
12月以上18月未満 12 99,660円
18月以上24月未満 18 149,490円
24月以上30月未満 24 199,320円
30月以上36月未満 30 249,150円
36月以上42月未満 36 298,980円
42月以上48月未満 42 348,810円
48月以上54月未満 48 398,640円
54月以上60月未満 54 448,470円
60月以上 60 498,300円

 

(5) 具体例

  • 月額給与(標準報酬月額)200,000円(変動なし)
  • 勤務期間36ヵ月(2018年9月~2021年8月)厚生年金加入
  • 2021年8月に被被保険者資格を喪失し、母国に帰国した。

 

【脱退一時金の金額】

20万円(平均標準報酬額)× 18.3% × 1/2 × 36(ヵ月) = 658,800円

 

5. 申請手続・必要書類

(1) 必要書類

「脱退一時金請求書」に以下の書類を添付して、日本年金機構へ提出します。

  • パスポート(写し)
  • 日本国内に住所を有しないことが確認できる資料(転出届提出済の場合は不要)
  • 年金手帳(原本)
  • 「銀行名」、「支店名」、「支店の所在地」、「口座番号」及び「請求者本人の口座名義」であることが確認できる書類

 
代理人が請求を行う場合は、「委任状」が必要となります。
 

(2) 再入国許可(みなし再入国許可)を受けて出国した場合の「請求手続」

再入国許可を受けずに日本から出国した場合は、在留資格と住民登録が抹消されるため、特別な手続は必要ありません。
しかし、再入国許可を受けて日本から出国する場合は、「日本の住所」が抹消されないため、「脱退一時金」の要件を満たしません。
この場合に「脱退一時金」請求するパターンは以下の3つとなります。
 

「転出届」を提出 転出日翌日から2年間OK
「国民年金資格喪失届」を提出 資格喪失日から2年間OK
上記以外の場合 再入国許可有効期間経過後以降しか請求できない(2年間)

 

 

6. 参照URL

(脱退一時金Q&A)

https://www.nenkin.go.jp/faq/jukyu/sonota-kyufu/dattai-ichiji/index.html
 

(国民年金の脱退一時金(令和3年))

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/sonota-kyufu/dattai-ichiji/20150406.html
 

(脱退一時金の手続)

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/seikyu/20140710.html