消費税の申告・納税は、消費税を預かった事業者(販売側)が行うことが原則となります。
しかし、例外的に、海外事業者から、国内事業者が「ネット広告配信等の役務の提供」を受ける場合、販売した海外事業者側ではなく、購入する国内事業者側が、消費税納税・申告を行う取引があります。
「リバースチャージ」方式と呼ばれています。

 

1. なぜ海外からの役務提供に消費税が課税されるのか?

消費税は、「国内取引」に対して課税されます。
この点、「役務提供」にかかる消費税内外判定は、原則として「サービス提供が行われた場所」で判定を行いますが、「電気通信利用役務」にかかる「国内外」の判定は、「役務の提供を受ける者の住所等」となります。
したがって、国内事業者や消費者が、海外から電子書籍等を購入した場合、購入した者の住所は「国内」ですので、「消費税課税取引」となります。

 

 

2. リバースチャージ方式とは?

リバースチャージとは「通常とは逆」という意味です。
消費税納税義務は、原則として消費税を預かった事業者(販売側・役務提供側)が行いますが、その逆・・つまり消費税支払側(購入側)が、役務提供事業者に代わって、消費税を申告・納税する方式です。
リバースチャージ方式が採用されるのは、海外事業者から①国内事業者向け ②電気通信利用役務の提供を受けた国内事業者です。

(消費税納税者のイメージ・電気通信利用役務)


 

3. 対象となる取引は?

(1) 電気通信利用役務とは?

電気通信利用役務とは、インターネットを介した広告の配信、電子書籍のほか、音楽配信サービス、クラウドサービスなどです。

(電気通信利用役務とならない取引)

通信関係 電話、FAX、インターネット回線の利用など、他者間の情報伝達を単に媒介するもの
ソフトウェア制作業務
海外コンサルティング業務・国外資産の運用
成果物の受け渡しや依頼作業をネットで行う場合でも、単に「他の資産の譲渡等」に付随して通信利用しているに過ぎないため。

 

(2) リバースチャージの対象取引は?

上記のうち、リバースチャージ方式の対象となるのは、「事業者向け」の「電子通信利用役務」となります。
「消費者向け」の電子通信利用役務の場合は、原則通り、納税義務者は、販売側(役務提供側)となります。
リバースチャージ方式での課税仕入は「特定課税仕入」と呼ばれ、国外事業者に「リバースチャージ方式の対象である旨」の表示義務が課せられています。
 

内容 申告・納税義務
国外事業者
(売った者)
国内事業者
(支払った者)
事業者向け 役務の性質等からサービス提供を受けるものが通常「事業者」に限られるもの
【例】 ネット広告配信等
納税義務なし 納税義務あり
(リバース)
消費者向け 広く消費者を対象としたサービス提供。事業者への販売でも、事実上、事業者以外の申込みを制限できないものも含まれる)(※)
【例】 電子書籍・音楽・映像の配信等
納税義務あり
(通常通り)
納税義務なし

(※)例えばYouTubeやSNSなどは、事業者でなくても使用しますので、「事業者向け電気通信利用役務の提供」には該当しません。
 
なお、リバースチャージ方式には、「特定役務の提供」(国外事業者が行う演劇その他の一定の役務の業務)も含まれます。
例えば、海外俳優やスポーツ選手等が、日本国内で役務を提供する場合など(不特定多数の者への役務提供は対象外)。

 

4. 対象となる事業者は?

国内事業者のうち、①課税売上割合95%以上の事業者 ②簡易課税選択事業者 ③免税事業者は、当面の間、「特定課税仕入」はなかったものとみなされます。
つまり、仮払消費税の計上は不要、納税自体が免除されますので、リバースチャージ方式の対象から外れます。
 

5. 支払時の仕訳(「仮勘定」を用いた処理 個別通達5-2但書)

海外事業者から、インターネット広告料100,000円の請求書が到着した。
(請求書に消費税が含まれているか判別不能)

 

(1) 課税売上95%以上の事業者・簡易課税選択事業者・免税事業者

借方 貸方
広告宣伝費 100,000 現金 100,000

 

(2) 上記以外の事業者(リバースチャージ方式)

借方 貸方
広告宣伝費 100,000 現金 100,000
仮払消費税 10,000 仮受消費税 10,000
  • 請求額(支払額)100,000円を「税抜金額」とみなし、国外事業者への「支払金額」が「消費税課税標準」となります(課税売上・課税仕入両方に算入)。
  • 貸方の「仮受消費税」は、国外事業者の納税分を一旦預かるという意味です。借方の「仮払消費税」は、課税仕入(特定課税仕入)を示し、仕入税額控除の対象になります。

 

6. 具体例

  • 課税売上高120百万円(税抜)、非課税売上高30百万円 ⇒課税売上割合80%
  • 課税仕入80百万円(税抜)
  • 上記課税仕入以外に、海外事業者へのネット広告支払(特定課税仕入)40百万円。
  • 課税事業者(一括比例配分方式)・簡易課税は選択していない事業者とする。

 

(1) 仕訳

(単位:百万円)
(単位:百万円) 借方 貸方
売上 現金 162 売上(課売) 120
売上(非売) 30
仮受消費税 12
課税仕入 仕入(課仕) 80 現金 88
仮払消費税 8
特定課税仕入(※) 広告宣伝費(対象外) 40 現金 40
仮払消費税(手入力) 4 仮受消費税(課売・手入力) 4
決算仕訳 仮受消費税 16 仮払消費税 12
租税公課(対象外) 2.4 未払消費税 6.4

(※)特定課税仕入となる「広告宣伝費」は、会計ソフト上「消費税対象外」仮払消費税・仮受消費税を手入力します。
消費税申告書では、別途課税売上・課税仕入として集計します。

 

(2) 預り消費税の計算

{ 120百万円(課税売上)+ 40百万円(特定課税仕入)} × 10% = 16百万円
 

(3) 仕入税額控除の計算

{( 80百万円(その他の課税仕入)+ 40百万円(特定課税仕入)} × 10% = 12百万円

  • 仕入税額控除の金額・・12百万円 × 80%(課税売上割合)= 9.6百万円
  • 控除対象外消費税の金額・・12百万円 ×(1 – 80%)= 2.4百万円

 

(4) 納付額

16百万円 – 9.6百万円 = 6.4百万円
 

7. 消費者向け電気通信利用役務の提供を受けた場合

(1) 消費者向け電気通信利用役務の提供とは?

「消費者向け電気通信利用役務」とは、「事業者向け電気通信利用役務の提供」以外のものをいいます。
こちらの取引も「消費税課税取引」となりますが、事業者向けとは異なり、リバースチャージ方式は適用されず、通常通り、国外事業者が消費税申告を行います。
 

(2) 当面 仕入税額控除不可

しかしながら、「消費者向け電気通信利用役務」の場合、支払先の国外事業者が「登録国外事業者」(※)ではない場合は、たとえ、消費税を請求されたとしても、当面の間、仕入税額控除を行うことができない制限があります。
例えば、国内法人が国外事業者から「電子書籍」を購入した場合、消費税課税取引となりますが、当該国外事業者が「登録国外事業者」でなければ、仕入税額控除ができず、全額「控除対象外消費税」となります。
「消費者向けの仕入税額控除の制限」については、「事業者向け」と異なり、対象事業者が限定されていないため、影響は大きいと思われます。
(※)「登録国外事業者」は、国税庁に名簿が掲載されています。
 

(3) 仕訳例

海外事業者(登録国外事業者)から、電子書籍購入代100,000円の請求書が到着した。
(請求書に消費税が含まれているかは不明)

 

借方 貸方
新聞図書費(課仕) 90,909 現金 100,000
仮払消費税 9,091
租税公課(控除対象外消費税) 9,091 仮払消費税 9,091

 

8. 参照URL

(国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/cross/01.htm
 

(登録国外事業者名簿)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/cross/touroku.pdf