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外国法人や非居住者に対して、国内事業者がコンサルティングフィーや講演料・謝礼等を支払うケースもあると思います。
こういった場合、支払側の国内事業者に源泉徴収義務が生じるケースがあります。
今回は、海外の外国法人や非居住者に、コンサルティングフィー・講演料・謝礼等を支払う場合の「源泉徴収」の可否につき解説します。

なお、似たような取引として、ロイヤリティ・ソフトウェア使用料・原稿料・ライティング業務等の取引があります。こちらについては、別の判定となりますので、NO240をご参照ください。
 
また、海外へのコンサル料等の支払いに係る消費税については、リバースチャージの論点があります。こちらについても、NO200をご参照ください。

1. 日本国内で所得が発生している場合のみ

海外に支払う「コンサルティングフィー等」のすべてが「源泉徴収」の対象になるわけではありません。国内法では、外国法人等に、日本で何らかの所得(国内源泉所得)が発生している場合に、日本の税金が発生し、源泉徴収が必要となります。

つまり、コンサルティング業務が海外で完結し、日本国内で役務が提供されない場合は、「国内源泉所得」に該当しないため、源泉徴収の必要はありません。
例えば、海外市場調査のため、現地在住コンサルタントと、現地駐在員のミーティングは「源泉徴収対象外」です。一方、コンサルタントが来日して仕事をする場合は、源泉徴収が必要となります。
 

2. 外国法人等の場合

(1) 国内源泉所得とは?

所得税上、国内源泉所得は17種類が列挙されており(所法第161条)、外国法人が行うコンサルティングフィーなどは、そのうち「人的役務の提供の対価」となります(所法 161条1項6号)(非居住者個人の場合も、他人を雇用してコンサルフィー等の役務提供を行う場合は、こちらの外国法人の規定に該当します)。
 

【所得税法161条1項6号】
六  国内において、人的役務の提供を主たる内容とする事業で政令で定めるものを行う者が受ける、当該人的役務の提供に係る対価

 

(2) 人的役務の提供に係る「対価」とは?

外国法人等に支払われる「人的役務の提供に係る対価」については、所得税施行令に具体的な内容が規定されています。(所施令282、所得税法161条6項・所基通161-19~)。以下の3つとなります。
 

映画・演劇の俳優・音楽家・その他の芸能人or職業運動家の役務の提供(芸能事務所等)
弁護士・公認会計士・建築士・その他の自由職業者の役務の提供(弁護士法人等)
科学技術・経営管理その他の分野に関する専門的知識・特別技能等を活用した役務の提供(コンサル法人等)

上記は、人的役務の提供が「主たる事業」である必要があり、主たる内容に付随する事業などの場合は除外されます。

 

(3) 外国法人の場合の源泉徴収の判断

上記の通り、所得税法161条6項に規定される「人的役務の提供の対価」は、先進的技術の提供・支援、専門的な人材派遣など、ある程度高度なスキルが必要な「人的役務の提供」が対象となっています。したがって、外国法人の場合は、「人的役務の提供の対価」として「源泉徴収」が必要なケースは限定されると思われます。
 

(4) 源泉徴収税率

源泉徴収税率は、20.42%のとなります。
ただし、161条1項6号の「人的役務の提供の対価」に該当する場合は、源泉徴収だけでは完結せず、たとえ日本国内に、PE(恒久的施設)がなくても、源泉徴収+確定申告が必要となるため、実務上は手間が多いです。
 

3. 非居住者の場合

(1) 国内源泉所得とは?

所得税上、国内源泉所得は17種類が列挙されており(所法第161条)、非居住者本人が行うコンサルティングフィーなどは、そのうちの、「人的役務の提供の報酬」となります(所法 161条1項12号)。
 

【所得税法161条1項12号】
イ  俸給、給料、賃金、歳費、賞与・・その他人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務その他の「人的役務の提供」・・

 

(2) 外国法人とは適用条文が異なる(所基通161-21)

少しややこしくなりますが・・
外国法人等に適用される「人的役務の提供に係る対価」(所法161条1項6号)は、法人や、非居住者に雇用される他人が行う「人的役務の提供」が対象で、「非居住者自身が役務の提供を行う場合」は含まれていません

例えば、海外居住の個人フリーランスの方が、日本国内で行う人的役務の提供は、「人的役務の提供に係る対価」ではなく、「所得税161条1項12号イの「人的役務の提供に対する報酬」に該当します。適用条文が異なり、「対価」と「報酬」・・微妙に言葉も異なっています。

一方、外国法人の従業員が、日本国内で行う人的役務の提供は、他人(外国法人に属する従業員)が役務の提供を行っているため、6号の「人的役務の提供に対する対価」に該当します。
 

所基通161-21 法第161条第1項第6号に規定する「人的役務の提供を主たる内容とする事業」とは、非居住者が営む自己以外の者の人的役務の提供を主たる内容とする事業又は外国法人が営む人的役務の提供を主たる内容とする事業で令第282条各号に掲げるものをいうことに留意する。したがって、・・国内において自己の役務を主たる内容とする役務の提供をした場合に受ける報酬は、法第161条第1項第6号に掲げる対価に該当するのではなく、同項第12号イに掲げる報酬に該当する。

 

(3) 人的役務の提供の「報酬」とは?

「人的役務の提供の報酬」については、外国法人に適用される「人的役務の提供の対価」と異なり、明確な内容が定められていません。したがって、高度なスキルに限定されず、一般的な役務の提供全般が含まれると解されています。
 

(4) 非居住者の場合の源泉徴収の判断

上記の通り、「人的役務の提供の報酬」の範囲は、明確に規定されていませんので、非居住者の場合は、一般的なコンサルティング業務などの多くは、「源泉徴収の対象」になるものと考えられます。
 

(5) 源泉徴収税率

源泉徴収税率は、外国法人と同様、20.42%となります。
ただし、報酬の場合は、日本国内に、PE(恒久的施設)がない限り、源泉徴収だけで課税関係が完結するため、実務上の手間は省けます。
 

4. 講演料・通訳料・原稿料・ライティング業務は?

非居住者の場合、広く「人的役務の提供」全般が源泉徴収の対象となるため、「人的役務の提供」に該当するかどうか?実務上迷うケースがあります。迷いやすい取引につき、以下にまとめます。

 

講演料・通訳料 ●「人的役務の提供」に該当(所161条12)。非居住者が日本国内で講演を行った場合は「国内源泉所得」として源泉徴収が必要(海外での講演は「国内源泉所得」に該当しない)。
オンラインでの講演も同様に判断。オンライン講演が「日本国内」で行われた場合は「国内源泉所得」
原稿料・WEBライティング業務・翻訳料 ●これらは、人的役務の提供ではなく、「著作権の使用料」となる。
●著作権使用料も、適用条文は異なるが、原則として源泉徴収が必要(所161条11)(No200参照)。
謝礼 ●名目が「謝礼」の場合であっても、内容に応じて判定。
●例えば、日本国内での講演料など、人的役務の提供に係る「謝礼」であれば、原則として源泉徴収が必要(所161条6、12)。

 

5. 租税条約締結国の場合

(1) 租税条約が優先される

国内法の取扱いは、上記の通りですが、租税条約が締結されている国の場合は、「国内法」よりも「租税条約」が優先されます。
この点、多くの租税条約では、「人的役務の提供」を、「企業・産業又は商業上の利得」と解釈し、日本にPEを有していなければ、日本の税金は課税されないことになっています。

つまり、結論的には、租税条約を締結している多くの国とのコンサルティング業務等は、「源泉徴収は不要」となります。
ただし、租税条約の適用を受けるには、租税条約届出書等の提出(様式6or様式7)が必要となります。

一方、レアケースですが、人的役務の提供が「国外」の場合、国内法では源泉徴収の対象外となりますが、「租税条約」の定めにより、源泉徴収が必要となるケースもあります。インド・パキスタン等が該当します。こういった場合は、国外での役務提供でも源泉徴収が必要となりますので、留意が必要です。
 

(2) ご参考 ~源泉徴収の免税証明書~

外国法人や非居住者は、内国法人に比べて、源泉徴収義務の範囲が広いことから、租税条約に関わらず、一定要件を満たす場合、源泉徴収義務が免除される制度があります。
外国法人等が、日本に恒久的施設(日本支店等)を有しており、外国法人の申請に基づき、税務署から「源泉徴収の免除証明書」が発行された場合、源泉徴収の義務が免除されます。
 

6. 参照URL

人的役務提供事業の所得(第6号関係)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/22/02.htm

米国の大学教授に支払う講演料

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/06/55.htm

 

7. Youtube

 
YouTubeで分かる「海外支払サービスフィー」
 

 

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