会社を退職する際、退職時の給与から「社会保険が2か月分天引き」されるケースがあります。
いったい、どういう場合なのでしょうか?

今回は、「社会保険給料天引き」ルール等、一般的な社会保険のルールをもとに、退職時の社会保険の取扱いをまとめます(今回の「社会保険料」は、健康保険料(含む介護保険料)と厚生年金保険の総称を前提に解説します)。



1. 社会保険天引き等のルール

(1) 従業員からは翌月徴収が原則(健保法167条、厚年法84条)

従業員給料から社会保険を「天引き」するタイミングは、法律上、原則として当月分を翌月徴収と定められています。
「給料締め日」や「支給日」は会社によって異なりますが、イメージは、その月の社会保険料は、「翌月給料支払分」から天引きする理解でよいと思います。
例えば、10月分社会保険であれば、「給料締め日」や「支給日」に関係なく、11月に支払う給料から天引きします。
(実務上、当月分を「当月徴収」している会社もありますが、厳密には「法令違反」となります。)
 

(2) 年金事務所への支払時期

一方、毎月発生する社会保険を「年金事務所へ支払う期日」は決まっています。
当月分の社会保険料の年金事務所への支払は、翌月末となります。
例えば10月分社会保険料は、年金事務所に11月末に支払います。
 

(3) 社会保険は月単位で発生

社会保険料は、月単位で発生し、「日割計算」の概念がありません。
毎月、月末に在職している方に対してのみ1ヶ月分が発生します。
したがって、月途中での「退職」や「入社」の場合も日割計算は行われません。
例えば、「月途中退職」で、月末に在籍していない方は、退職月の社会保険料は発生しませんので、会社負担分のみならず、従業員からも徴収する必要はありません。

 

(4) 具体例

  • 11月分の社会保険料(12月末に年金事務所に支払)
  • 従業員給料から天引きする時期は?

 

従業員給料から天引きする時期
月末締 翌月25日払の会社 12月25日払給料から天引き(11月分給料)
20日締 当月25日払の会社 12月25日払給料から天引き(11/21~12/20分給料)

 



2. 退職時に社会保険料が2ヶ月分「控除される」ケース

例外的に、月末退職の場合、2か月分の社会保険料を控除することが可能です。
具体的にどういう場合でしょうか?
具体例を用いて解説します。

  • 11月末に退職
  • 社会保険は、原則通り「翌月徴収」とする

 
上記例の場合、11月末時点では会社に在籍していますので、11月分の社会保険は発生します(一番最後の社会保険)。
この場合、給料から天引きする社会保険の時期は、「給料締め日」で異なります。
以下の通りとなります。
 

(1) 当月分翌月払いの場合(例 11月末締 12月25日払)

「11月分社会保険料」は、翌月12月支払給料(=11月分丸1ヶ月分の給料)から徴収されます。
この場合は、最後の給料となる12月支払給料から1ヶ月分(11月分社保)が徴収されて完了しますので、2か月分天引きされることはありません。
 

(2) 当月分当月払いの場合(例 11月20日締 11月25日払)

「11月分社会保険料」は、原則として、翌月12月支払給料から徴収されます。しかし、この場合、11月末退職済のため、最後の給料(12月支払給料)は、日割りで少ない金額の支給(=11月21日~30日の10日分給料)となります。
そこで、こういった場合は、例外的に11月支払給料(10月21日~11月20日の1ヶ月分)から、2か月分(10月分+11月分)を徴収することになります。
 

(3) 結論

「翌月徴収」を前提とした場合、当月分当月払いの会社の場合は、退職時に社会保険が「2か月分天引き」される場合があります。
 

(4) 月末以外の退職はお得なのか?

会社側から、「月途中の退職」を依頼される場合があるかもしれません。
その場合、前述の通り、月中退職の場合は「社会保険」は発生しないため、従業員負担がなくなる結果、手取りが増え、一見「得した」ように思うかもしれません。
しかし・・それは大きな間違いです。
なぜなら、月途中退職で「法人の社会保険」は発生しなくても、個人で負担する国民健康保険等は「退職月」から発生するためです。
つまり、法人にとっては月末以外の退職では「法人負担」が発生しない分お得ですが、従業員にとっては、その分ご自身で支払う国民健康保険等の負担が新たに生じます。
また、法人が加入する社会保険には、「厚生年金保険料」も含まれ、「国民年金」の上乗せ部分となりますので、将来受け取れる年金額の点も考慮すると、従業員側にとっては、月末退職の方が、会社側で半分負担してくれる分お得!という結論になります。



3. ご参考~社会保険の資格喪失日は~

(1) 退職日の翌日

「退職日」=「社会保険の資格喪失日」ではありません。
退職日の翌日が「資格喪失日」になります。
退職した当日までは、勤務先の健康保険証を使用できる!ということですね。
 

(2) 資格喪失日=次の健康保険の資格取得日

会社の社会保険資格が喪失すると、喪失したその日から他の健康保険に加入する必要があります。
日本国民は必ず医療保険に加入する義務があるため、空白の日(=保険に加入していない日)があってはならないのです。
次の勤務先が決まっていない場合は、国民健康保険に一旦加入することになります。



4. 参照URL

退職した従業員の保険料の徴収

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/nofu/20120330-01.html

従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyosho-hiho/hihokensha1/20150407-02.html