No50.合併とは?適格合併の要件は?
1.合併ってどんなもの?
簡単にいうと、ある会社と他の会社が一緒になることです。
共通の事業を行っている2 つの会社を、1つの会社に集約したい場合等でも利用されます。会社分割や事業譲渡と全く逆ですね。
(イメージ図)
クレア社とビズ社は、それぞれ別々のオーナー(甲、乙)が保有する会社です。
クレア社がビズ社を吸収合併します。
合併の場合は、ビズ社は消滅し、ビズ社の旧株主乙さんは、今まで保有していた「ビズ社株式」の代わりに、クレア社から新株等の交付を受けます。
2.合併の特徴
現金等を対価とした合併も可能ですが、合併会社(上記例ではクレア社)の株式を対価とした方法も可能です。
3.適格合併
適格合併に該当する場合は、移転資産と負債を帳簿価額で移行でき、譲渡損益の繰延が行われます。また、一定金額が合併法人の利益積立金に引き継がれます。
4.適格合併の要件
持分割合 | 株式交付 | 持分継続 | 従業員引継 | 事業継続 | 事業関連性 | 規模 or 役員 | 株式継続保有 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
企業グループ内合併 | (100%) | ◯ | 100% | × | × | × | × | × |
(50%超 100%未満) |
◯ | 50%超 100%未満 |
◯ | ◯ | × | × | × | |
共同事業のための合併 | (50%以下) | ◯ | – | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
(1)企業グループ内合併とは?
- 親会社と子会社が、同一の者に50%超を所有されている企業グループ内の合併
(同一の者=親族等同族関係者含む) - 親会社が、子会社の50%超を直接(又は間接)所有している企業グループ内の合併
(2)共同事業のための合併とは?
資本関係のない複数の会社が、相互に関連性ある事業を集約することで、競争力の強化を図ることを目的として行われる合併。
(3)各種要件の説明
要件 | 内容 |
---|---|
株式交付要件 | 株式以外の資産が交付されない合併であること(金銭交付は×)(※) |
持分継続要件 | 合併前後に、持分関係が継続することが見込まれること |
従業員引継要件 | 「合併直前の従業員」の概ね8 割以上が継続従事見込であること |
事業継続要件 | 「被合併法人」の主要事業の継続が見込まれること |
事業関連性要件 | 「被合併法人の主要事業」と「合併法人の従前事業」の相互関連性があること |
規模比率 or 役員要件 |
|
株式継続保有要件 | 株式の継続保有が見込まれること (被合併法人の株主が50 人以上の場合は不要) |
(※)合併比率調整のための現金交付金等は、例外的にOK
(平成29年4月20日追記)
平成29年度税制改正により、以下が追加されました。
対象会社の発行済株式の3分の2以上を有する場合、その他の株主等に対して交付する金銭その他の資産を除外して「対価要件」の判定を行う(スクイーズアウト関連税制整備)
つまり、例えば、合併で3分の1未満の少数株主に金銭を交付する場合は、従来は「非適格」でしたが、他の要件を満たせば、「適格」になります。
5.適格合併の仕訳(税務仕訳)
子会社同士が合併する場合を例に、仕訳例を記載します。合併の仕訳は、分割型分割と似ていますね。
会社 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
被合併会社(消滅会社) 資産譲渡仕訳 |
負債(簿価) 資本金等(簿価) 利益積立金(簿価) |
資産(簿価) |
|
合併会社(存続) 新株発行仕訳 |
資産(簿価) | 負債(簿価) 資本金等(※1) 利益積立金(差額)(※2) |
|
被合併会社株主(親会社) | 有価証券(合併会社) | 有価証券(被合併会社) |
|
(※1)被合併法人の資本金-合併による増加資本金等-抱合株式等
(※2)親子合併等の場合は、貸方に子会社株式(抱合株式)が生じます。
6.非適格合併の仕訳(税務仕訳)
会社 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
被合併会社(消滅会社) 資産譲渡仕訳 |
負債(簿価) 資本金等(簿価) 利益積立金(差額) |
資産(簿価) 譲渡益(時価差額) |
|
合併会社(存続会社) 新株発行仕訳 |
資産(時価) | 負債(時価) 資本金等(差額) |
|
被合併会社株主 | 合併会社株式 | 被合併会社株式 みなし配当 譲渡益 |
|
7.税務処理まとめ
適格 | 非適格 | ||
---|---|---|---|
移転資産等の価額 | 簿価 | 時価 | |
譲渡損益 | なし | 発生 | |
利益積立金の引継 | あり | なし(※) | |
被合併会社 | 課税なし | 課税あり(※1) | |
合併会社 | 課税なし | ||
被合併会社株主 | 譲渡損益 | なし | あり |
みなし配当 | なし | あり(※2) | |
帳簿価額修正 | あり | あり | |
合併会社株主 | 課税なし |
(※1)一定の場合、課税が繰り延べられます(グループ法人税制の適用がある場合)
(※2)合併法人の利益積立金相当額
なお、合併の場合は、グループ法人税制による譲渡損益調整勘定(グループ内の非適格交換)に該当する場合でも、合併会社は簿価で受け入れ(調整勘定を被合併会社で認識しない)、含み損益は合併会社で売却等の際に認識します(被合併会社が消滅するため)。
その場合は、合併会社で利益積立金を調整します。
8.合併の手続の流れ(吸収合併を例にします)
① | 合併契約の締結 | 被合併会社・合併会社間で契約を締結。 |
---|---|---|
② | 事前開示手続 | 双方の会社で、契約内容等を備置し、各株主等に事前開示 |
③ | 株主総会の承認 | 各社で株主総会の特別決議必要。なお、一定の要件を満たす場合には、株主総会の省略が認められる。 |
④ | 反対株主等からの株式等の買取 | 各会社は、各株主宛に株式交換の旨などを通知し、反対株主等から株式買取請求に応じる。 |
⑤ | 債権者保護手続 | 原則として、双方の会社で債権者保護手続が必要。 |
⑥ | 効力発生(効力発生日) | 効力発生日は、合併契約で定められる。 |
⑦ | 事後開示手続 | 存続会社は契約内容等を備置し、各株主等に事後開示。 |
⑧ | 登記 | 被合併会社は解散登記、合併会社は変更登記を行う。 |
(注)株主総会決議を省略できる場合があります(簡易合併・略式合併)。
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