No180.現物出資の税務処理と消費税 その2(具体例)
前回、現物出資の税務処理と消費税の関係をお伝えしましました。
今回は、上記を前提に、具体例を用いて仕訳を検討します。
1. 個人→法人への現物出資
- 個人が土地建物の現物出資を行い、100%保有の新会社を設立した。
- 土地の簿価は1,000(時価2,000)、建物簿価は3,000(時価5,000)とする。
- 個人・法人とも、消費税免税事業者とする。
- 受入側の資本の部は、全額「資本金等の額」とする。
(仕訳)
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
個人側 (現物出資を行う側) |
子会社株式(時価) | 7,000 | 土地(簿価) 建物(簿価) 土地売却益 建物売却益 |
1,000 3,000 1,000 2,000 |
法人側 (現物出資を受ける側) |
土地(時価) 建物(時価) |
2,000 5,000 |
資本金等の額 | 7,000 |
- 個人の場合は、時価で譲渡したものとされるため、個人側に譲渡損益が発生
- 今回の事例では、個人・法人とも免税事業者のため、消費税への影響はありません。
2. 法人→法人への現物出資(適格現物出資)
- 法人が土地建物の現物出資を行い、100%保有の新会社を設立した。
当該現物出資は「適格要件」を満たすものとする。 - 土地の簿価は1,000(時価2,000)、建物簿価は3,000(時価5,000)とする。
- 個人・法人とも、消費税課税事業者とする。
- 受け入れ側の資本の部は、全額「資本金等の額」とする。
- 消費税は「税抜処理」とする。
(仕訳)
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
現物出資を行う法人側 (※1) |
子会社株式(簿価) (※3) |
4,400 | 土地(簿価・非課税) 建物(簿価・課税) 仮受消費税(※2) |
1,000 3,000 400 |
現物出資を受ける法人側 | 土地(簿価) 建物(簿価) 仮払消費税(※2) |
1,000 3,000 400 |
資本金等の額(※4) | 4,400 |
(※1)適格現物出資のため、現物出資を行う法人側に、譲渡損益は生じません(簿価譲渡)。
(※2)消費税は、建物のみ発生(土地は非課税)。
⇒この場合の消費税課税標準は、適格現物出資に該当する場合でも、簿価ではなく時価となります。(消施令45条第2項③)
建物時価5,000 × 8 % = 400
(※3)現物出資を行った側の法人の「子会社株式取得価額」は、譲渡資産の簿価となります。
ただし、仮受消費税の金額だけ、会計と法人税の取扱いが異なる結果となります。
(=会計と法人税で、異なる帳簿価額となる)
おそらくですが・・法人税申告書上別表5での調整も必要になるのかと・・
(※4)現物出資を受ける側の「資本金等の額」は、移転資産の簿価純資産と規定されているため、4,000となるはずなんですが・・
そうすると、仮払消費税400だけ浮いてきてしまうので、実務上は「資本金等の額」で処理するしかなさそうです。
3. 法人→法人への現物出資(非適格現物出資)
- 法人が土地建物の現物出資を行い、100%保有の新会社を設立した。
当該現物出資は「非適格現物出資」とする。 - 土地の簿価は1,000(時価2,000)、建物簿価は3,000(時価5,000)とする。
- 個人・法人とも、消費税課税事業者とする。
- 受け入れ側の資本の部は、全額「資本金等の額」とし、「資産調整勘定」は発生しないものとする。
- 消費税は「税抜処理」とする。
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
現物出資を行う法人側 (※1) |
子会社株式(時価) (※3) |
7,400 | 土地(簿価・非課税) 建物(簿価・課税) 土地売却益 建物売却益 仮受消費税(※2) |
1,000 3,000 1,000 2,000 400 |
現物出資を受ける法人側 | 土地 建物 仮払消費税(※2) |
2,000 5,000 400 |
資本金等の額(※4) | 7,400 |
(※1)非適格現物出資のため、現物出資を行う法人側に、譲渡損益が発生します(時価譲渡)。
(※2)消費税は、建物のみ発生(土地は非課税)。
⇒この場合の消費税課税標準は、適格現物出資と同様、簿価ではなく時価となります。(消施令45条第2項③)
建物時価5,000 × 8% = 400
(※3)現物出資を行った側の「子会社株式取得価額」は、譲渡資産の時価となります。
ただし、仮受消費税の金額だけ、会計と法人税の取扱いが異なる結果となります。
(=会計と法人税で、異なる帳簿価額となる)
おそらくですが・・法人税申告書上、別表5での調整も必要になるのかと・・
(※4)現物出資を受ける側の「資本金等の額」は、移転資産の時価(ないし交付株式の現物出資時の時価)と規定されているため、7,000となるはずなんですが、そうすると、仮払消費税400だけ浮いてきてしまうので、実務上は「資本金等の額」で処理するしかなさそうです。
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