「資本金等の額」って何?
法人税や住民税・事業税を計算する際、「資本金等の額」という言葉がでてきます。
例えば、「寄付金の損金算入限度額」や、「均等割」の計算、外形標準課税の「資本割」の計算の際にでてきます。
この「資本金等の額」っていったい何なんでしょう?
「資本金等の額」によって、均等割の額が決まったりするので、意外と重要ですよー!
1.どのような場合にでてくるの?
(1)法人税
①寄付金の損金算入限度額
「損金算入限度額」を計算する時に出てきます。
②みなし配当の計算
「みなし配当」の計算をする時に出てきます。みなし配当は以下の式で計算されます(自己株式の取得対価の額が限度)
「直前の発行済株式総数」は、直前に有している自己株式の数は除く点、注意ください。
(2)事業税
「外形標準課税」の資本割を計算する際の「課税標準」として利用されます。
(資本金が1億円を超える法人)
ここで、注意ですが、「外形標準」適用の有無は「資本金」で判断します(「資本金等の額」ではない)。
(3)住民税均等割
住民税均等割の税率区分は、「資本金等の額」と「従業員数」によって決められています。
2.「資本金等の額」って何?
(1)法人税(法人税法施行令8条)
法人税申告書の別表5(1)Ⅱの「差引合計欄」の所です。
「無償減資」や「無償増資」は会計仕訳前の金額です。
法人税法上の「資本金等の額」は、株主と実際に金銭等のやり取りがないと「資本金等の額」は減少しませんので
(組織再編は除く)。
「法人税法上の資本金等の額」のイメージは以下の通りです。
+ | 資本金 |
---|---|
+ | 新株発行・自己株譲渡による払込額(資本金部分を除く) |
+ | 新株予約権行使による増加額(新株予約権簿価) |
+△ | 組織再編成等による増減額 |
△ | 資本払戻しによる減少額 |
△ | 自己株式取得による減少額 |
(2)事業税・住民税は?
法人税上の「資本金等の額」に、一定の調整を行った額となります。
以下の式となります。
法人税法上の「資本金等の額」+無償増資額-無償減資等による欠損填補
ただし、資本金+資本準備金に満たない場合は、「資本金+資本準備金」
(※1) 無償増資額
「利益準備金」又は「その他利益剰余金」を資本金に振替えたもの(平成22年4月1日以後)。
「その他資本剰余金」を「資本金」に振替えた金額は含まれません。
(※2) 無償減資等による欠損填補額
- 無償減資や、資本準備金減少により欠損填補を行った金額。
(H13 4/1~H18 4/30) - 資本金又は資本準備金を、「その他資本剰余金」に振替後、1年内に「その他利益剰余金」(※)のマイナス部分に充てた金額
(H18/5/1以後)
(3)事業税・住民税上の「資本金等の額」に関する改正論点
事業税・住民税上の「資本金等の額」が、期末の「資本金及び資本準備金合計」未満の場合は、
⇒「期末の資本金+資本準備金が課税標準」となる改正がありました。
これは、意外と影響大きいですよ!
(注意事項)
- 過去に「自己株式の取得」があった場合は注意しましょう。
会計上、「自己株式」は間接控除しているだけなので、会計上の「資本金」額は、取得前と変わっていません。
一方、税務上は、自己株式取得の際「減資と取り扱われる部分」があります。
つまり、過去に自己株式の取得がある場合は、事業税・住民税上の「資本金等の額」<「期末の資本金+資本準備金」となるケースが多いです。 - 「資本金等の額」に特定子会社の株式等(50%超保有の株式等)割合を控除する特例があります。
- 資本金等の額が1,000億円を超える場合は、「資本金等の額」を細分化し、それぞれの率を乗じて計算します。
3.資本金等の額を減らすには?
資本金等の額を減らすと、「事業税や均等割の資本金等の額」が減少しますので、結果的に税金が減少します。
ただし、「資本金等の額」を減らしても、事業税や住民税は、上記の「資本金+資本準備金の合計基準」がありますので、
そのあたりも考慮して実行しなければいけません。
(1)法人税上の資本金等の額を減らす
- 有償減資(無償減資では、法人税上の「資本金等の額」は減少しない)
自己株式の取得なども含みます。 - 組織再編成による減少
(2)減資による欠損填補
減資による欠損填補を行うと、事業税や住民税の「資本金等の額」は減少します。
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