増資の種類及び法的手続
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株式会社の「資本金」を増加させる取引は、一般的に「増資」と呼ばれます。
今回は、増資の「種類」と「方法」についてまとめます。
1. 増資の種類
増資には、「有償増資」と「無償増資」の2種類があります。
(1) 有償増資
有償増資とは、会社財産への払込を伴う「実質的な増資」のことをさします。
「有償増資」の具体例は以下です。
- 通常の新株発行
- 新株予約権の行使
- その他(株式交付による吸収合併、株式交換による子会社化など)
(有償増資)
(2) 無償増資
無償増資とは、会社財産への払込は伴わず、準備金等から資本金に振替えるだけの「形式的な増資」のことをさします。
「資本金」は増加する一方、同額の準備金等が減少しますので、純資産に変動はありません。
また、発行済株式総数も変動しません。
剰余金などを資本金とすることによって、「配当可能利益の社外流出を防止」したり、「資本金」を大きく見せるなどの効果があります。
「無償増資」の具体例は以下です。
- 準備金(資本準備金や利益準備金)の資本金組み入れ
- 剰余金(その他資本剰余金やその他利益剰余金)の資本金組み入れ
(無償増資)
2. 増資の法的手続
(1) 有償増資
以下、通常の新株発行を例にします。
① 決議機関
下記以外 | 株主総会特別決議 (会社法199Ⅱ・202Ⅲ④、309Ⅱ⑤) |
---|---|
定款に譲渡制限の定めを設けていない会社(※1) | 取締役会決議(※2) (会社法201・202Ⅲ③3) |
(※1)一般の上場会社などです。会社法上は、「公開会社」(会社法2⑤)と定義されています。
(※2)第三者に「特に有利な価額」で株式発行する場合は株主総会決議(会社法201Ⅰ・199Ⅲ)。
② 登記
「資本金の額」と「発行済株式総数」が増加しますので、登記が必要になります。
払込期日から2週間以内に「変更登記」を行う必要があります(会社法915Ⅰ・Ⅱ)。
③ 授権資本の枠を超える場合
増資の結果、「授権資本の枠を越える」場合は、定款変更決議が必要になります。
(2) 無償増資
① 決議機関
株主総会の普通決議となります(会社法450・448・451・計規25Ⅰ)。
なお、「準備金の額が減少」する場合、会社法上「債権者保護手続」が要求されますが、準備金全額が資本金に振替えられる場合には、債権者保護手続は不要です(会社法449)。
② 登記
発行済株式総数は増加しませんが、資本金の額が増加しますので、登記が必要になります。
③ 留意事項
無償増資のうち、剰余金を資本金に組み入れる場合、「剰余金の額」が上限となります。
例えば、利益剰余金がマイナスの場合は、利益剰余金の資本組入はできません(会社法450)。
3. その他(有償・無償増資共通)
(1) 税務署等への届出
資本金の額が増加した場合、税務署、県税事務所、市町村役場に「異動届出書」を提出する必要があります。
(2) 登録免許税
資本金の額が増加した場合、別途「登録免許税」がかかります。
4. 増資の会計・税務処理/申告書の記載
有償増資の会計・税務処理、無償増資の会計・税務処理については、次回以降まとめます。
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