「法人税等相当額」を控除できない事例
目次
1.原則的な取扱い
相続税上、取引相場のない株式を「純資産価額方式」で評価した際に生じた含み益は、法人税等相当額(37%)を控除して評価ができます(財産基本通達186-2)。
趣旨は、実際に税金が生じるのは売却時なので・・
売却前の「評価」の段階では、政策的な配慮から、「税額部分」は評価上控除してあげよう!というものです。
2.法人税・所得税法上の取扱い
しかし、上記の取扱いは、法人保有の非上場株式の評価の所でお伝えした通り、法人税基本通達(法基通9-1-14)や所得税基本通達(所基通59-6)では認められていません。
単発の相続と異なり、継続取引を前提とする法人や個人事業主なので、相続税とは違った取扱いなのででしょうね。
3.具体例での比較
含み益の「法人税等相当額」を控除できる場合と、できない場合の評価額を比較してみます。
簡単な事例をもとに解説しますね。
(例題)
- オーナーAさん クレア社株式100%保有(簿価10,000円)
(オーナーはクレア社株式以外、資産負債を保有していない) - クレア社 ビズ社株式100%保有(簿価10,000円)。
(クレア社は、ビズ社株式以外、資産負債を保有していない) - ビズ社の「純資産価額法」での相続税評価額は20,000円とします。
- 法人税等相当額は37%とします。
株式保有者 | 保有株式 | 保有割合 | 簿価 |
---|---|---|---|
オーナーAさん | クレア社 | 100% | 10,000円 |
クレア社 | ビズ社 | 100% | 10,000円 |
法人(クレア社)保有の非上場株式(ビズ社)の含み益から「法人税相当額を控除」する場合と「控除しない」場合を比較してみましょう!
(1)仮に37%控除できる場合
①クレア社が保有する「ビズ社株式」(簿価10,000円)の相続税評価
20,000-(20,000-10,000)×37%=16,300円
②オーナー保有の「クレア社株式」の相続税評価
16,300-(16,300-10,000)×37%=13,969円となる。
③イメージ図(左が簿価・右が相続税評価額)
(2)37%控除しない場合
①クレア社が保有する「ビズ社株式」(簿価10,000円)の相続税評価
含み損控除しないので、時価20,000円そのまま(37%控除しない)
②オーナー保有の「クレア社株式」の相続税評価
20,000-(20,000-10,000)×37%=16,300円となる。
③イメージ図(左が簿価・右が相続税評価額)
(3)結論
オーナー保有の「クレア社株式」の評価額を比較すると以下となります。
37%控除する場合 | 13,969 |
---|---|
37%控除しない場合 | 16.300 |
どうですか? 含み益から、法人税等相当額37%を控除する方が、評価額は低くなりましたね。
確かに、「法人保有の非上場株式の含み益から法人税等相当額を控除できる」のであれば、子会社が増えれば増えるほど・・評価がさがっていく・・という変な結論になってしまいますので、結論としては正しそうですね。
法人保有の非上場株式を評価する場合は、含み益の法人税等相当額を控除しない分、評価が高くなるので、注意しましょう。
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