同族会社かつ「特定同族会社」に該当する事例
前回、留保金課税が適用される「特定同族会社」について、条文をひも解いて解説しました。
そこで今回は、具体例として、同族会社でかつ「特定同族会社」と判定されるケースを作成してみました。
1. 特定同族会社の要件
おさらいになりますが「特定同族会社」に該当する要件をまとめると、以下のようになります。
すべての要件を備えた場合に、「特定同族会社」となります。
要件 | 内容 | |
---|---|---|
要件1 | 同族会社 | 上位3株主グループで、持株割合が50%超となる会社 |
要件2 | 被支配会社 | 上位1株主グループで、持株割合が50%超となる会社 |
要件3 | 一定の会社 | 判定会社の上位1株主グループに、「被支配会社でない法人株主」が含まれる場合、この法人株主を除外しても、判定会社が被支配会社となる会社 |
2. 事例
クレア社は、留保金課税が適用される「特定同族会社」に該当するでしょうか?
- クレア社(発行済株式総数10,000株、資本金1億円超)
- 株主構成
株主名 | 保有株式数 | 持株割合 | 摘要 |
---|---|---|---|
甲(個人) | 3,000 | 30% | 筆頭株主 |
乙(甲の妻、個人) | 2,000 | 20% | |
ビズ社(法人) | 1,500 | 15% | 甲が100%保有 |
A社(法人) | 1,000 | 10% | (※) |
B社(法人) | 500 | 5% | (※) |
その他一般多数株主(合計) | 2,000 | 20% | (※) |
合計 | 10,000 | 100% |
(※)甲、乙、ビズ社と「特殊の関係のある個人及び法人」はありません。
(簡略化のため、以下、「特殊の関係のある個人及び法人」は、「同族関係者」と略します)
(1) 要件1 同族会社に該当するか?
⇒上位3株主グループで、持株割合が50%超となるか?
① 第1順位株主(グループ)
筆頭株主甲(個人)だけでなく、甲の「同族関係者」を含めて判定します。
(甲の同族関係者は?)
株主 | 同族関係者 | 根拠 |
---|---|---|
乙(個人) ビズ社 A社・B社・その他一般株主 |
〇 〇 × |
甲の奥さんのため 甲の被支配会社のため 何ら利害関係がないため |
つまり、第1順位株主グループを構成するメンバーは、甲、乙、ビズ社となります。
第1順位株主(グループ)の持株割合は?
⇒3,000株(甲) + 2,000株(乙) + 1,500株(ビズ社) = 6,500株(65%)
② 第2順位株主(グループ)
A社となります。第2順位株主(グループ)の持株割合は
⇒1,000株(10%)
③ 第3順位株主(グループ)
B社となります。第3順位株主(グループ)の持株割合は・・
⇒500株(5%)
したがって、上位3株主(グループ)の合計持株割合は・・
65% + 10% +5% = 80%
⇒要件1を満たし、「同族会社」に該当します。
(2) 要件2 被支配会社に該当するか
⇒上位1株主グループで、持株割合が50%超となるか?
クレア社は、第1順位株主グループ(甲、乙、ビズ社)に65%保有されているため、要件2を満たし、「被支配会社」に該当します。
(3) 要件3 「一定の会社」に該当するか?
⇒「被支配会社でない法人株主」を除外しても、クレア社は、被支配会社となるか?
法人税法67条の規定をもとに、検討します。
被支配会社のうち、①被支配会社であることについての判定の基礎となった株主等のうち被支配会社でない法人がある場合には、②当該法人をその判定の基礎となる株主等から除外して判定した場合でも被支配会社となるもの
内容 | 結果 | |
---|---|---|
手順1 | 判定の基礎となった株主等とは? | 第1株主順位グループの甲、乙、ビズ社。 |
手順2 | 株主等のうち被支配会社でない法人があるか? |
|
手順3 | 当該法人を、その判定の基礎となる株主等から除外して判定した場合でも被支配会社となるか? |
|
⇒要件3を満たし、「一定の会社」に該当します。
(4) 結論
クレア社は資本金1億円超であり、留保金課税の適用が行われる「特定同族会社」となります。
次回は、逆パターン「同族会社だが特定同族会社に該当しない事例」を作ってみます。
<< 前の記事「同族会社で「特定同族会社」に該当しない事例」次の記事「留保金課税の適用を受ける「特定同族会社」とは?」 >>