No84.比準要素1の判定事例(平成29年改正税法反映済)
類似業種比準価額方式では、比準要素1やゼロになると、株価が高くなる場合が多いです。
今回は、そのうち、「比準要素1」になる場合の事例を作ってみました。
意外と判定に間違う可能性があるので、注意しましょう。
平成29年改正税法反映済(平成29年6月24日加筆)
1.類似業種比準価額方式の算定式
おさらいになりますが、類似業種比準価額方式では、配当、純資産、利益の3要素(比準要素といいます)の数値と、同業他社の株価を用いて株価を算定します。
A・・同業種の上場企業株価、B・・配当、C・・利益、D・・純資産の金額です。
類似業種の数値 | 貴社の数値 |
---|---|
A 類似業種平均株価 | |
B 1株当たり配当 | Ⓑ 1株当たり配当(直前2期間平均) |
C 1株当たり年利益 | Ⓒ 直前期1株当たり年利益 ((直前期+直前々期)÷2の低い方も可) |
D 1株当たり純資産 | Ⓓ 直前期末1株当たり純資産(帳簿価額) |
A~Dは、国税庁で公表されている類似業種の数値。Ⓑ~Ⓓは、貴社の数値です。
つまり、配当、利益、純資産の各要素を、同業他社と比較して、だいたい当社はこれくらいだろうって株価を推定するやり方です。
しかし、これら3要素がすべてゼロや、1つの会社は、同業他社比較で株価を算定しても、実態を表しません。
そこで、税法は、これら3要素が0や1の会社は、類似業種ではなく、「純資産法」を採用することとなっています。
2.3要素の判定時期
まず、類似業種比準方式での、各3要素(比準要素といいます)の判定時期は、以下の通りとなります。
- 配当、利益・・・直近or 直近+2期前平均の低い方可(有利な方OK)
- 純資産・・・・・直近のみで判定(平均不可)
3.比準要素1の会社の定義
「上記3要素」を、直近で判定して2つがゼロ、かつ2期前基準で判定しても、2以上がゼロ
(POINT)
◆比準要素1になるか?は、直近基準で判定し、かつ、2期前基準でも判定する必要あり。
4.例題
- 大会社
- 直近3期間の数値は以下とします
直近 | 2期前 | 3期前 | |
---|---|---|---|
配当 | 0 | 0 | 0 |
純資産 | 0 | +100 | 0 |
利益 | △100 | +500 | △1,500 |
(1)手順1
まず、直近基準で判定
3要素 | 直近 | 2期前 | 平均 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
① | 配当 | 0 | 0 | 0 | 2期前と平均しても、結果ゼロ |
② | 純資産 | 0 | - | 0 | 直近のみ、2期前とは平均できない |
③ | 利益 | △100 | +500 | +200 | 直近は△100だが、2期前+500と平均すれば+200 |
(結果)
配当と純資産2つがゼロ、ただし、利益はプラスとなるため、比準要素1となる
⇒手順2へ(⇒いいとこどり可・・比準要素ゼロにならない結論にできる!)
(2)手順2
2期前基準で判定して、2つ以上がゼロになるか?
3要素 | 2期前 | 3期前 | 平均 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|
① | 配当 | 0 | 0 | 0 | 3期前と平均しても、結果ゼロ |
② | 純資産 | +100 | - | 0 | 2期前のみ。3期前とは平均できない |
③ | 利益 | +500 | △1,500 | △500 | 2期前は+500だが、3期前△1,500と平均すれば、△500 |
(結果)
配当は0だが、純資産+100(直近)、利益+500(平均)
⇒2期前基準で判定すれば、比準要素2となる(⇒いいとこどり可・・比準要素0,1にならない結論にできる!)
(3)結論
⇒比準要素0、1どちらでもない、「通常の会社」(大会社)になります。
大会社⇒類似業種100% ⇒ 結論、株価ゼロになります。
5.留意事項
申告ソフトでは、勝手に有利な方(低い方)を採用してしまうので、マニュアル修正が必要な場合があります。
例えば、上記の例題を「申告ソフト」で入れた場合、「手順2」の、「利益」の判定の際、有利な方(低い方「△500」(平均))を自動で採用してしまうとどうなるでしょう?
比準要素1の会社と判定されてしまい、結果的に株価が高くなってしまう可能性があります。
通常の会社では、「有利な方」を選択してくれる方がありがたいのですが、比準要素0,1の判定の際は、
申告ソフトで普通に自動計算にすると、結果的に株価が高くなってしまう可能性がありますので、注意しましょう。
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