No28.特殊な会社の株式評価
今までお伝えした通り、株式評価は、原則的に会社規模等に応じて決められていますが、規模等で単純に区分すると正しい評価ができない会社もあります。
例えば、資産の大部分が土地や株式で占める会社に、上場会社の株価に比準する「類似業種比準価額方式」を適用するのは実態に沿いません。そこで、特殊な会社につき、例外的な評価方法が定められています。
特殊な評価が行われる会社は、次の7つとなります。
種類 | 評価方法 | |
---|---|---|
① | 比準要素数1の会社 | 原則:純資産価額方式 類似業種比準価額25%+純資産価額75%も可 |
② | 株式保有特定会社 | 原則:価額 S1+S2方式も可 |
③ | 土地保有特定会社 | 純資産価額方式 |
④ | 開業後3年未満の会社 | 純資産価額方式 |
⑤ | 比準要素数ゼロの会社 | 純資産価額方式 |
⑥ | 開業前または休眠中の会社 | 純資産価額方式 |
⑦ | 清算中の会社 | 清算分配金見込額 |
1.比準要素数1の会社
(1)比準要素数1の会社って何?
「比準要素」っていうのは、類似業種比準方式の計算の基となる「配当、利益、純資産」の3つのことを指します。この3つのうち、いずれか「2つがゼロ」かつ、直前々期末基準でも2つ以上がゼロの会社は、比準要素1の会社と呼ばれます(他の特殊な会社は除きます)。この比準要素1の会社は、原則として純資産価額で評価します。
(類似業種比準方式を採用する場合の評価方法)
以下の式となります。
(2)比準要素の判定時期
要素 | 判定時期 |
---|---|
1株当たり配当 | 直前期と直前々期の平均 |
1株当たり純資産 | 直前期 |
1株当たり利益 | 直前期or(直前期+直前々期)の平均 |
つまり、純資産要素だけが、「単年」判定となっており、配当や利益金額は「2期間」判定となっています。
何が言いたいかというと、比準要素1であるかを結論つける際は、結果的に、直前期末以前3年間の実績を反映して判定することになります。
直前期 | 2期前 | 3期前 | 結論 | |
---|---|---|---|---|
配当 | ゼロ | ゼロ | ゼロ | 配当ゼロとなる |
純資産 | ゼロ以下 | ゼロ以下 | -(関係なし) | 純資産ゼロとなる |
利益 | (※) | (※) | (※) | 利益ゼロ |
(※)
- 直前期利益がゼロ以下or直前期と2期前利益平均がゼロ以下
- 2期前利益がゼ口以下or2期前と3期前利益平均がゼロ以下
の場合、利益がゼロということになります。
2.株式保有特定会社
(1)株式保有特定会社って何?
総資産に占める、株式等の金額割合が50%以上の会社をいいます。
(相続税評価額ベース)
こういった会社は、原則として、純資産価額方式により評価します。
ただし、「S1+S2」方式(類似業種比準価額修正方式)も認められています。
(2)S1、S2って何?
じゃー、S1、S2って何なんでしょうか??簡単なイメージを示すと以下の通り。
該当部分 | 評価方法 | |
---|---|---|
S1 | S2以外の部分 | 会社規模に応じた原則的評価方式 |
S2 | 株式等に相当する部分 | 純資産価額方式 |
つまり
●株式等に相当する部分をまず取り出して、純資産価額方式で評価(S2)
●残りの部分(S1)は原則的な評価(類似業種、純資産、折衷等)
(受取配当金収受割合を考慮)
そして、最終的にS1とS2の合計額が、「S1+S2」方式による評価額となります。
(3)留意事項
●株式保有特定会社では、純資産価額の占めるウエイトが高くなるため、含み益のある株式を多数保有している場合は、株価が高額になります。
●保有割合の引き下げ等を目的とした資産変動については、なかったものとして株式等保有割合の判定が行われる点に注意しましょう。
●取引相場のない株式の特例
評価会社が保有する「取引相場のない株式」の評価については、評価差額に対する法人税額等に相当する金額」控除しないで計算します。
3.土地保有特定会社
(1)土地保有特定会社って何?
総資産にしめる、土地等の金額割合が、一定割合以上の会社のことです。
この、「一定割合」は、会社規模等によって決められています。
土地保有特定会社に該当する場合には、純資産価額方式により評価を行うことになります。
(2)土地保有特定会社に該当する会社
大会社、中会社、小会社の区分については、「会社区分による評価方法の選択」をご参照下さい。
そして、土地保有特定会社に該当する会社は、会社区分によって、以下のようになります。
●大会社・・・土地保有割合70%以上
●中会社・・土地保有割合90%以上
●小会社 業種区分、及び総資産価額に応じた以下の区分となります。下記以外の小会社は、土地保有特定会社には該当しません。
総資産価額 | 土地保有割合 | ||
---|---|---|---|
卸売業 | 小売・サービス業 | 左記以外 | |
20億円以上 | 10億円以上 | 70%以上 | |
7,000万円以上 | 4,000万以上 | 5000万以上 | 90%以上 |
●土地保有特定会社では、純資産価額の占めるウエイトが高くなるため、含み益のある土地を多数保有している場合は、株価が高額になります。
●土地等には、地上権、借地権、販売用の土地等も含まれます。
●課税時期前3年内に取得等した土地等は、「通常の取引価額」に相当額で評価します。(ただし、帳簿価額が「通常の取引価額」に相当すると認められる場合には帳簿価額も可)
4.開業後3年未満の会社活用方法
純資産価額方式
5.比準要素ゼロの会社
類似業種比準方式の計算の基となる「配当、利益、純資産」の3つがすべてゼロの会社をいいます。
比準要素ゼロの会社は、純資産価額方式で評価します。
配当金額及び利益金額については、直前期末以前2年間の実績を反映して判定する点、比準要素1の判定と同様です(財通189)
(重要)比準要素は、切り捨ての規定があるので注意です~
1株当たり配当金額 | 10銭未満切り捨て |
1株当たり純資産額 | 円未満切り捨て |
1株当たり利益金額 | 円未満切り捨て |
各要素がプラスなので、比準要素はゼロにならないと思っていても、実は切り捨てによってゼロになるケースがあるので、注意しましょう!
6.開業前又は休業中の会社
純資産価額方式
7.清算中の会社
原則として、清算分配見込額
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