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相続税上、非上場株式を評価する際、比較的規模の大きな会社は、「類似業種比準価額方式」で評価を行うケースがあります。

類似業種比準価額方式で評価する場合、自社の「一株当たりの年利益金額」の数値を利用しますが、当該金額は、単純に「会計上の利益」から算定するものではありません。
法人税上の「課税所得」をベースに、各種調整を行った金額が「一株当たりの利益金額」を算定します。
この「各種調整項目」の1つに「非経常的な利益金額」という概念があります。

今回は、「非経常的な利益金額」とはどういったものなのか?実務上迷いやすい事例をまじえて解説します。

 

1. 類似業種比準価額方式の「1株当たりの利益金額」の算定式

 
「類似業種比準価額方式」での「1株当たりの利益金額」の算定式は以下となります。

法人税上の課税所得 - 非経常的な利益金額 +(受取配当益金不算入-左記の配当に係る所得控除) + 損金算入繰越欠損金

 
上記の式は、臨時偶発的な取引の影響を除外し、本来の経常的な収益力を株価に反映させるための調整を行っている式となります。
なぜなら、「類似業種比準価額方式」は、類似業種の同業他社の利益と比較して株価を算定する方法のため、「臨時的な利益は除いて比較すべき」という考え方になります。

上記式において、今回の論点の「非経常的な利益金額」という概念が登場します。
「1株あたりの利益金額」の算定上、法人税上の課税所得から「非経常的な利益金額」をマイナスして除外する必要があるということになります。

 
この「非経常的な利益金額」は、どのようなものを指すのでしょうか?

 

2. 国税庁の取り扱い

国税庁上、「非経常的な利益金額」についての明確な定義は・・特にありません。
 

(国税庁抜粋~1株当たりの利益金額――「継続的に有価証券売却益がある場合」より~)

経常的な利益又は非経常的な利益のいずれに該当するかは、評価会社の事業の内容、その利益の発生原因、その発生原因たる行為の反復継続性又は臨時偶発性等を考慮し、個別に判定します。

 
概念的な規定にとどまり、具体的にどのようなものが「非経常的な利益金額」になるのかの例示はありません。
ただし、「個々に判定」という点は留意が必要です。
過去の裁判例をみると、単純な形式的な判断ではなく、実態判断で、その会社にとって「経常的」なのか「非経常的」なのかで判定されている事例が多いです。
この点は注意が必要です。

 

3. 判定時の実務上の考え方

「非経常的な利益金額」は、「臨時的に生じた取引」ですので、イメージとしては、会計上の「特別利益項目」が対象になるという理解でよいと思います。
ただし、実務上は、以下の点に留意が必要です。
 

毎期継続して計上される「特別利益」は除外 例えば、会社によっては、毎年有価証券を売却している場合もあるかもしれません。
こういった場合は、たとえ「特別利益」に計上されていても、「非経常的な利益には該当しない」と考えられています。
「営業外損益」や「販管費のマイナス」に、特別利益項目が含まれていないか 中小企業は、あまり営業外、特別利益を意識せずに仕訳する場合が多いので、特別損益項目が含まれている場合があります。
別表4の減算項目で「非経常利益」の減算がないか? 「一株当たり利益金額」は、「課税所得」をもとに計算します。したがって、PLで「非経常利益」が計上されていても、別表4で減算処理されている場合は、法人税上の課税所得では既に調整済のため、マイナスしません(二重控除となるため)(※)

(※)例えば、PLの営業外収益に「過年度法人税の還付金」が計上されていても、別表4で減算処理されている場合など。

 

4. 非経常的な利益金額の具体例
(あくまで目安。会社によって異なる)

 

該当するもの 該当しないもの
●保険差益
●固定資産売却益・投資有価証券売却益(臨時性が高いもの)
●固定資産等受贈益
●退職給付引当金戻入
●前期損益修正益(経常的でない過去取引の修正)
●貸倒引当金戻入益(毎年の洗替など)
●有価証券売却益(継続的に計上される場合)
●賞与引当金戻入益(毎回の見積差額など)
●固定資産除却損(メーカーなどで、毎年除却がある場合)
●前期損益修正益(経常的な過去取引の修正)

 

5. 非経常的な損失金額は相殺が必要

非経常的な利益金額を除外する趣旨は、評価会社に臨時偶発的な利益が生じた収益力を排除し、経常的な収益力を株式の価額に反映させるためです。
この場合の「非経常的な利益」とは、臨時偶発的に生じた「個々の利益」を指すものではなく、臨時偶発的に生じた「個々の利益の総体」を指すとされています。
したがって、同じ種類の取引だけでなく、種類が異なる取引についても、それぞれの損益を相殺し、相殺後の利益金額のみ除外します。

 

取引内容 具体例
同じ種類の取引 固定資産売却益と固定資産売却損
種類が異なる取引 保険差益と固定資産売却損
  • あくまで、非経常的な「利益金額」ですので、「非経常な利益金額」と「非経常的な損失金額」を通算して「マイナス」になる場合は、ゼロとします。
    マイナス分を足すわけではありません。
  • 非経常的な利益金額がなく、たとえば「役員退職金」など、非経常な損失金額だけの場合も、足す必要はありません。
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    6. 参照URL

    (1株当たりの利益金額――固定資産の譲渡が数回ある場合)

    https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/07/03.htm

    (1株当たりの利益金額――種類の異なる非経常的な損益がある場合)

    https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/07/04.htm

    (1株当たりの利益金額――継続的に有価証券売却益がある場合)

    https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/07/07.htm

     

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