No192.類似業種比準価額方式の「非経常的な利益金額」って?
相続税上の株式評価「類似業種比準価額方式」で算定する「一株当たりの利益金額」。
この金額は、単純に「会計上の利益」から算定するものではありません。
法人税上の「課税所得」から、各種調整を行って「一株当たりの利益金額」を算定します。
目次
1. 類似業種比準価額方式の「1株当たりの利益金額」の算定式
「類似業種比準価額方式」での「1株当たりの利益金額」の算定式は以下となります。
上記からわかることは、「1株当たりの利益金額」算定上、「非経常的な利益金額は除外する!」ということですね。
この趣旨は、「臨時偶発的に生じた収益力を排除し、本業の経常的収益力を株式価額に反映させるため」です。
では・・ここでいう「非経常な利益金額」とは、いったい何を指しているのでしょうか?
2. 国税庁の取り扱い
国税庁上、「非経常的な利益金額」についての明確な定義は・・特にありません。
(国税庁抜粋~1株当たりの利益金額――「継続的に有価証券売却益がある場合」より~)
うーん・・何となくはわかりますが、具体的な判定までは・・記載されていませんね。
3. 実務上の判定
実務上は、会計上の「特別利益項目」が該当するということでよいと思います。ただし・・
- 毎期継続して計上される「特別利益」は除外します。例えば、会社によっては、毎年有価証券を売却している場合もあるかもしれません。
こういった場合は、たとえ「特別利益」に計上されていても、「非経常的な利益には該当しない」と考えられています。 - 「営業外損益」や「販管費」に、特別利益項目が含まれていないか?もチェックします。
中小企業は、あまり営業外、特別利益を意識せずに仕訳する場合が多いので、特別損益項目が含まれている場合があります。 - 「一株当たり利益金額」は、「課税所得」をもとに計算するので、PLだけではなく、別表4の加減算項目で「非経常利益」っぽいやつがないか?も確認します(※)
(※)例えば、PLの営業外収益に「過年度法人税の還付金」が計上されていても、別表4で減算処理されている場合には、たとえ「非経常的な利益金額」といっても調整しない。
(法人税上の課税所得ではすでに調整済のため、二重控除になってしまう)
以下、具体例を用いて解説します。
4. 非経常的な利益金額の具体例
(あくまで目安。会社によって異なるケースもあり)
該当するもの | 保険差益 |
---|---|
固定資産売却益・投資有価証券売却益(臨時性が高いもの) | |
前期損益修正益 | |
受贈益 | |
退職給付引当金戻入 | |
該当しないもの | 貸倒引当金戻入益(毎年の洗替など) |
賞与引当金戻入益(毎回の見積差額など) | |
有価証券売却益(継続的に計上される場合) | |
固定資産除却損(メーカーなどで、毎年除却がある場合) |
5. 注意事項
- 「非経常的な損失金額」、例えば固定資産売却損などがある場合は、たとえ種類が異なるものでも、「非経常的な利益金額」と通算します。
例えば、同じ年度に「固定資産売却損」と「保険差益」が生じている場合、種類は異なりますが、「通算」します。 - あくまで、非経常的な「利益金額」ですので、「非経常な利益金額」と「非経常的な損失金額」を通算して「マイナス」になる場合は、ゼロとします。
⇒マイナス分を足すわけではありません。 - 事業年度を変更した場合は、期間按分等をして計算します。
6. 参照URL
(1株当たりの利益金額――固定資産の譲渡が数回ある場合)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/07/03.htm
(1株当たりの利益金額――種類の異なる非経常的な損益がある場合)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/07/04.htm
(1株当たりの利益金額――継続的に有価証券売却益がある場合)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hyoka/07/07.htm
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