類似業種比準方式の「類似業種」の選択方法
目次
今回は、「類似業種比準価額方式」の「類似業種」はどうやって選択するのか?という論点です。
類似業種比準価額方式では、「同業・類似業種」の株価から推定して、株価を算定しますので、
どの「類似業種」を選ぶか?によって、かなり株価に差が出てきます。
特に、事業を複数されている場合は、迷われる方も多いかもしれません。
1. 類似業種の株価はどうやって調べる?
国税庁HPで「類似業種の一覧」が開示されています。
この一覧より、自社の類似業種を選択すると、自社の「類似業種」の株価が把握できます。
「類似業種の一覧」は、大きく、「大・中・小」の3分類が行われています。
自社の類似業種を選択する順番は、小⇒中⇒大分類という風に、小区分から順番に、自社の類似業種に当てはまる業種を選択していきます。
(例)
- 「小分類」で、自社に該当する類似業種がある場合⇒その「小分類」を選択
- 「小分類」では、自社に該当する類似業種がない場合⇒「中分類」を見る
⇒「中分類」で、自社に該当する類似業種がある⇒その「中分類」を選択
・・という感じです。
ただし、ここ大事ですが・・
納税者の選択により、小分類でも「中分類」、中分類でも「大分類」を選択することができます。
財産評価基本通達 181 条
ただし、納税義務者の選択により、類似業種が小分類による業種目にあってはその業種目の属する中分類の業種目、類似業種が中分類による業種目にあってはその業種目の属する大分類の業種目を、それぞれ類似業種とすることができる。
つまり・・例えば、
自社の類似業種が「中分類」に当てはまったとしても、「大分類」の株価を使う方が、株価が安く収まるなら、そちらを選択することができ、お得!
ということです。
2. 複数の事業を行っている場合は?
では、複数事業を行っている場合は、どうやって類似業種を選択するのでしょうか?
この場合、税法上、「主たる事業は何か?」で判断すると決められています。
具体的には、「直近期末1年間の売上割合」で判断します。
例えば、1つの事業が50%を越えている場合、その事業の類似業種を選択します。
この場合は、さほど難しくありません。
迷うのは、「50%を越える主たる事業がない場合」ですね。
以下にまとめます。
(1) 主たる事業のウェイトが50%を超える場合
主たる事業で判定します。
複数の事業を行っていても、50%を超える事業があれば、その事業で判定ができます。
なお、複数事業の類似業種の株価を「加重平均」するわけではありません。
ここは注意しましょう! 簡便的に計算ができる点、実務上は楽ですね。
(2) 50%を超える主たる事業がない場合
この場合も、税法上は、類似業種の選択方法が決められています。
ちょっと面倒ですけど・・まとめると以下の通りです。
選択する類似業種 | ||
---|---|---|
中分類中 | 2以上の類似する小分類に属し、 これらの合計が50%超 |
その中分類中にある「小分類」の「その他の00業」(※1) |
2以上の類似しない小分類に属し、 これらの合計が50%超 |
その「中分類」の業種(※2) | |
大分類中 | 2以上の類似する中分類に属し、 これらの合計が50%超 |
その大分類中にある「中分類」の「その他の00業」 |
2以上の類似しない中分類に属し、 これらの合計が50%超 |
その「大分類」の業種 | |
上記に該当しない場合 | 大分類の「その他の業種」 |
(※1)の例
(評価会社の事業区分)
有機化学工業 | 45% |
---|---|
医薬品製造業 | 30% |
不動産賃貸業 | 25% |
合 計 | 100% |
【P O I N T】
有機化学工業と医薬品製造業は
「類似する」小分類
⇒合計75% > 50%
(類似業種比準計算上の業種目)
大分類 | 製造業 | ||
---|---|---|---|
中分類 | 化学工業 | ||
小分類 |
有機化学工業 | ||
医薬品製造業 | |||
・・・ | |||
その他の化学工業 |
⇒中分類「化学工業」中にある、小分類「その他の化学工業」が類似業種となる
(※2)の例
(評価会社の事業区分)
ソフトウェア業 | 45% |
---|---|
情報処理・ 提供サービス業 |
35% |
娯楽業 | 20% |
合 計 | 100% |
【P O I N T】
ソフトウェア業と情報処理業は
「類似しない」小分類
⇒合計80% > 50%
(類似業種比準計算上の業種目)
大分類 | 情報通信業 | ||
---|---|---|---|
中分類 | 情報サービス業 | ||
小分類 | ソフトウェア業 | ||
情報処理・提供サービス業 |
⇒中分類の「情報サービス業」が採用される類似業種となる。
(参照文献 基礎から身につく財産評価(北本高男著 一般財団法人大蔵財務協会)