個人が財産を「低額譲渡」した場合の税金は?
個人が保有する「財産」を安く譲渡する場合(低額譲渡)、税金はかかるのでしょうか?
税務上の譲渡価額は、「適正時価」が原則となりますので、たとえ安く売ったとしても、税金がかかる場合がありますので、注意しましょう。
売り先が個人か?法人か?によって取り扱いが異なります。
1.個人⇒個人の場合
(1)売り手側(個人)
所得税がかかります(譲渡所得・所得税法59)
(実際売買価額-取得価額)×所得税率
譲渡先が個人の場合は、「実際売買価格」との差額に対してのみ税金がかかります。
(実際売買価額を越えた部分は、「贈与」したと判断されます)
(2)買い手側(個人)
贈与税がかかります(相続税法7)
(適正時価-実際売買価額)×贈与税率
譲渡価額が「時価よりも著しく低い」場合は、「適正時価との差額」につき、贈与税が課税されます。(みなし贈与課税)
- 買い手側の取得価額は、実際売買価額となります
(ただし、下記(4)参照ください。例外があります) - 「時価よりも著しく低いかどうか?」の判断は、「みなし贈与・著しく低い価額での贈与とは?」をご参照ください。
(時価の1/2ではない点に注意)。
(3)まとめ
例 取得価額1,000、実際売買価額1,500、適正時価4,000の場合
売り手 | 買い手 | |||
---|---|---|---|---|
税金の種類 | 税額 | 税金種類 | 税額 | |
個人⇒個人 | 所得税 | (1,500-1,000)×税率 | 贈与税 (みなし贈与課税) |
(4,000-1,500)×税率 |
(4)ご参考~「売り手」の取得価額が引き継がれるケース~
譲受価額が時価の1/2未満かつ、譲渡側に「譲渡損」が発生する場合、買い手は、売り手の取得価額が引き継がれます。
(売り手側の譲渡損失はないものされます)(所得税法60条1②・59条Ⅱ)
(仕訳)
売り手 | 買い手 | |||
---|---|---|---|---|
税金の種類 | 税額 | 税金種類 | 税額 | |
個人⇒個人 | 所得税 | (800-1,000)×税率 ⇒税金発生なし |
贈与税 | (4,000-800)×税率 |
2.個人⇒法人の場合
法人成りの場合はこれですね。
(1)売り手側(個人)
所得税がかかります(譲渡所得・所得税法59)
①実際売買価額が、適正時価の1/2未満の場合
(適正時価-取得価額)×所得税率
譲渡先が法人の場合、「実際売買価額」が、適正時価の1/2未満の場合は、適正時価で売ったとみなされ、適正時価との差額に税金が課税されます。
(「みなし譲渡所得課税」 所法59・所令169)。
②実際売買価額が適正時価の1/2以上の場合
(実際売買価額-取得価額)×所得税率
譲渡先が法人の場合でも、「実際売買価額」が、適正時価の1/2以上の場合は、実際売買価格との差額に対してのみ税金が課税されます。
(実際売買価額を越えた部分は「贈与した」と判断されます)
(仕訳)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 1,500(実際売買価額) | 土地 売却益 |
1,000(簿価) 500(差額) |
- ただし、時価1/2以上の譲渡でも、「同族会社等の行為又は計算の否認」(所法157)に該当する場合には、「みなし譲渡所得課税」がかかる場合があります
(所基通59-3)。
(2)買い手側(法人)
法人税がかかります(法人税法22)
(適正時価-実際売買価額)×法人税率
買い手が法人の場合は、適正時価の1/2未満かどうかににかかわらず、「適正時価と実際売買価額との差額」につき、法人税(受贈益課税)が課税されます。
(仕訳)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
土地 | 4,000(適正時価) | 現金 受贈益 |
1,500(実際売買価額) 2,500(差額) |
- 法人が買い取る場合の、買い手側の取得価額は「適正時価」となります。
(取得価額の引継ぎはなし)。
(仕訳)
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
土地 | 2,500(適正時価) | 現金 受贈益 |
1,500(実際売買価額) 1,000(差額) |
- 法人が買い取る場合の、買い手側の取得価額は「適正時価」となります。
(取得価額の引継ぎはなし)
(3)まとめ
①時価の1/2未満(みなし譲渡所得課税)
取得価額1,000円、実際売買価額1,500円、適正時価4,000円の場合
売り手 | 買い手 | |||
---|---|---|---|---|
税金の種類 | 税額 | 税金種類 | 税額 | |
個人⇒法人 | 所得税 | (4,000-1,000)×税率 | 法人税 (受贈益) |
(4,000-1,500)×税率 |
②時価の1/2以上
取得価額1,000円、実際売買価額1,500円、適正時価2,500円の場合(同族会社以外)
売り手 | 買い手 | |||
---|---|---|---|---|
税金の種類 | 税額 | 税金種類 | 税額 | |
個人⇒法人 | 所得税 | (1,500-1,000)×税率 | 法人税 (受贈益) |
(2,500-1,500)×税率 |
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