No63.法人が財産を「高額譲渡」した場合の税金は?
法人が保有する「財産」を高く譲渡(高額譲渡)する場合、税金はかかるんでしょうか?
高額譲渡の場合でも、税務上の譲渡価額は「適正時価」が原則となりますので、「適正時価」との比較で判断されますので、注意しましょう。
売り先が個人か?法人か?によって取り扱いが異なります。
目次
1.法人⇒個人の場合
(1)売り手側(法人)
法人税がかかります(法人税法22)
(適正時価-取得価額)×法人税率(譲渡損益)
(実際売買価額―適正時価)×法人税率(受贈益)
法人が売り手の場合は、実際売買価額にかかわらず、「適正時価」で売ったとみなされ、法人税が課せられますが(譲渡損益)、
「実際売買価額と適正時価」の差額は、「受贈益」と判定され、こちらにも法人税が課税されます(受贈益)。
(仕訳)
ここではわかりやすくするため、売却益を「売却収入」と「売却原価」に分けて記載しますね。
現金 売却原価(※1) |
4,000(実際売買価額) 1,000(簿価) |
売却収入(※1) 受贈益(※2) |
1,500(適正時価) 2,500(差額) |
(※)1 売却収入1,500-売却原価1,000=500(売却益)に対して法人税がかかります。
(※)2 受贈益2,500に対して法人税がかかります。
(2)買い手側(個人)
高額譲渡の場合は、買い手は税金がかかりません(シンプルです)。
- 買い手側の取得価額は、「適正時価」となります
(取得価額の引継ぎなし。「適正時価」を超えた部分は、売主への「贈与」と扱われる)
(3)まとめ
取得価額1,000円、実際売買価額4,000円、適正時価1,500円の場合
法人⇒個人 | 法人税(譲渡益) | (1,500-1,000)×税率 | 課税なし | |
---|---|---|---|---|
法人税(受贈益) | (4,000-1,500)×税率 |
2.法人⇒法人の場合
(1)売り手側(法人)
法人税がかかります(法人税法22)
(適正時価-取得価額)×法人税率(譲渡損益)
(実際売買価額―適正時価)×法人税率(受贈益)
法人が売り手の場合は、実際売買価額にかかわらず、「適正時価」で売ったとみなされ、法人税が課せられますが(譲渡損益)、
「実際売買価額と適正時価」の差額は、「受贈益」と判定され、こちらにも法人税が課税されます(受贈益)。
- 計算式、仕訳等すべて、「法人⇒個人へ譲渡」の場合の「売り手側」と同じです
(2)買い手側(法人)
法人税がかかります(法人税法22)
(実際売買価額‐適正時価)×法人税率
法人から買い取る場合は、「適正時価」で買ったとみなされ、「実際売買価額と適正時価」の差額は、「寄付金」と判定され、法人税が課税されます。
(仕訳)
土地 寄付金(※) |
1,500(適正時価) 2,500(差額) |
現金 | 4,000(実際売買価額) |
- 寄付金は、一定額を超えると損金不算入となりますので、法人税がかかります。
- 買い手側の取得価額は、「適正時価」となります。
(取得価額の引継ぎなし。「適正時価」を超えた部分は、売主への「寄付金」と扱われる)
(3)まとめ
取得価額1,000円、実際売買価額4,000円、適正時価1,500円の場合
法人⇒法人 | 法人税(譲渡益) | (1,500-1,000)×税率 | 法人税(寄付金)(※) | (4,000-1,500)×税率 |
---|---|---|---|---|
法人税(受贈益) | (4,000-1,500)×税率 |
(※)損金算入限度額を超えた部分のみ、法人税がかかります。
<< 前の記事「8.個人が財産を高額譲渡した場合の税金は?」次の記事「10.法人成りの際の留意事項」 >>