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個人が保有する「不動産等」の売買は、原則として「時価」をもとに行います。
しかし、取引相手が「親族や関連会社等」の場合、取引価額に恣意性が入り、適正な時価での売買が行われないケースがあります。こういった「適正な時価」での譲渡が行われない場合、売り主側・買主側とも税金が課税される場合があります。

そこで今回は、個人が保有する不動産等を、通常の時価よりも高く譲渡(高額譲渡)する場合の、税務上の取扱いにつき解説します。

なお、法人⇒個人・法人⇒法人の「高額譲渡」については、No63をご参照ください。

 

1.個人⇒個人に高額譲渡した場合

例えば、子供が個人で所有する土地を、親に高く買ってもらう場合などです。

  • 子供が個人で保有する土地(取得価額1,000)を、親に4,000で売却した。
  • 土地売却時の適正時価は1,500とする。

 

(1)売り手側(個人・子供)

個人側は、「適正時価」で売却したものとみなされ、「適正時価と取得価額」の差額につき所得税が課税されます(譲渡所得)(所得税法59)。
また、「実際売買価額と適正時価」の差額は、個人から贈与を受けたものとして、贈与税が課税されます(合理的な根拠があれば所得税も可)

 
所得税(譲渡所得)= (適正時価 - 取得価額)× 所得税率
 
贈与税 =(実際売買価額 - 適正時価)× 贈与税率
 

(2)買い手側(個人・親)

高額譲渡の場合は、買い手には税金はかかりません。

  • 買い手側の取得価額は、「適正時価」となります。実際取得価額の引継ぎはなく、「適正時価」を超えた分は、「贈与」と扱われます。

 

(3)まとめ

売り手
買い手
税金の種類
税額
税金種類
税額
個人⇒個人 所得税 (1,500 – 1,000) × 税率 課税なし
贈与税 (4,000 – 1,500) × 税率

2.個人⇒法人に高額譲渡した場合

例えば、法人の役員が、個人で所有する土地を、法人に高く買ってもらう場合などです。
法人成りの場合も「譲渡」となりますので、該当するケースがあります。

  • 法人の役員が、個人で保有する土地(取得価額1,000)を、同族会社の法人に4,000で売却した。
  • 土地売却時の適正時価は1,500とする。

 

(1)売り手側(個人・役員)

個人側は、「適正時価」で売却したものとみなされ、「適正時価と取得価額」の差額につき所得税が課税されます(譲渡所得)(所得税法59)。
また、「実際売買価額と適正時価」の差額は、法人から贈与を受けたものとして、所得税が課税されます(給与所得)。

所得税(譲渡所得) = (適正時価 - 取得価額) ×所得税率
 

所得税(給与所得) = (実際売買価額 - 適正時価)× 所得税率
 

借方
貸方
現金(実際売買価格) 4,000 土地(簿価)
売却益(譲渡所得)
給与収入
1,000
500
2,500
  • なお、売り手の個人が、同族役員以外の場合は、給与所得部分は、「一時所得」となります。

 

(2)買い手側(法人)

買い手が法人の場合は、「適正時価」で買ったとみなされ、「実際売買価額と適正時価」の差額は、「役員報酬」認定されます。役員報酬は、定期同額給与以外は、原則として「損金不算入」となり、法人税が課税されます(法人税法22)

 
法人税(役員報酬) = (実際売買価額 - 適正時価)× 法人税率
 

(仕訳)

借方
貸方
土地(適正時価)
役員報酬(差額)
1,500
2,500
現金(実際売買価額) 4,000
  • 当該差額は「役員報酬」となります。役員報酬は、原則として、定期同額給与以外は、原則として「損金不算入」となり、法人税が課税されます。
  • 買い手側の取得価額は、「適正時価」となります。実際取得価額の引継ぎはなく、「適正時価」を超えた部分は、「役員報酬」と扱われます。
  • なお、売り手が同族役員以外の場合は、「寄付金」となります。寄付金は一定額を超えると損金不算入となります。

 

(3)まとめ

売り手
買い手
税金の種類
税額
税金種類
税額
個人⇒法人 所得税(譲渡) (1,500 – 1,000) × 税率 法人税(役員報酬) (4,000 – 1,500) × 税率
所得税(給与) (4,000 – 1,500) × 税率

 

3.YouTube

 
YouTubeで分かる「高額譲渡」
 

 

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