No188.個人所有不動産の売却益特例の適用関係 重複適用は可能?
個人所有の不動産を売却して利益が生じる場合、所得税上、様々な特典があります。
今回は、これらの各種特典をダブルで適用できるのか?
そして、住宅ローン控除等との併用関係についてまとめます。
1.土地・建物の譲渡は分離課税
所得の計算方法には大きく2種類に分かれます。
①所得の金額に応じて税率が高くなる(累進税率)「総合課税」と、他の所得とは分離して計算する「分離課税」です。
総合課税の対象となるものは、例えば給与、不動産、事業所得、雑所得、一時所得等です。
一方、分離課税の対象となるものは、土地建物譲渡所得、株式等の譲渡所得、退職所得、山林所得のみです。
今回の土地・建物の売却に係る所得は「譲渡所得」となり、「分離課税」となります。
分離課税については、税率があらかじめ決められています。
土地・建物売却に係る税率については、NO188をご参照ください。
1. 不動産売却益に関する税法上の特例
不動産を売却して利益が生じる場合に、利用できる特例は、以下の通りです。
(1) マイホーム売却時の3,000万円の特別控除の特例
個人が、居住用財産(マイホーム)を売却した場合は、その譲渡所得(売却益)の金額から、最大3,000万円まで控除できる特例です。
(2) マイホーム売却時の買換え特例
個人が、マイホームを売却&買い換えた場合は、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる特例です。
(3) 所有期間10年超の軽減税率の特例
個人が、土地建物どちらの所有期間も10年超(売却年の1月1日時点)のマイホームを売却する場合は、以下の軽減税率が適用される特例です。
譲渡益6,000万円以下の部分 | 軽減税率14.21% (所得税10.21%、住民税4%) |
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譲渡益6,000万円超の部分 | 軽減税率20.315% (所得税15.315%、住民税5%) |
なお、一般的な居住用不動産売却時の税率は以下です。
所有期間5年以下(短期) | 所得税30.63%、住民税9% |
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所有期間5年超(長期) | 所得税15.315%、住民税5% |
(4) 空き家売却時の3,000万円の特別控除の特例
居住用ではありませんが、相続または遺贈により取得した、被相続人の空き家家屋等を売却した場合は、譲渡所得(売却益)の金額から、最大3,000万円まで控除できる特例です。
2. それぞれの特例の併用は?
上記の特例は、それぞれダブルで適用できるのでしょうか?
また、住宅ローン控除との関係はどうでしょうか?
実は・・併用できるものと併用できないものがありますので、適用関係には十分注意しましょう。
特に、空き家特例以外は、原則として「住宅ローン控除」 との併用ができません。
譲渡所得が少額の場合は、住宅ローン控除を適用したほうがお得なケースも多いですので、どの特例を適用するか?は、慎重に検討しましょう。
まとめると以下の通り。
特例 | 併用可 | 併用不可 |
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3,000万特別控除 |
(合わせて3,000万が上限) |
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買い換え特例 |
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所有期間10年超 軽減税率の特例 |
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空き家特例 |
(合わせて3,000万が上限) (空き家と別に自宅がある場合) |
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住宅ローン控除 |
(空き家と別に自宅がある場合) |
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(令和2年改正)
居住用財産の譲渡特例と住宅ローン控除重複適用ができる「一定年数」は、令和2年改正により、従来よりも1年長く制限が増えました。
改正により、居住の用に供した日の属する年から、3年目の年中に従前住宅の譲渡をした場合、新規住宅にかかる住宅ローンの適用ができません(租法41㉑)
住宅ローン控除を過去に受けていた場合は、過去3年分の修正申告が必要な場合がでてきます。
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