空き家売却時の「3,000万円の特別控除」の特例って?
新聞やニュースでは、よく「空き家問題」が話題にあがっていますね。
最近は、核家族化などの影響もあり、せっかく家を相続したのに、利用することなく「空き家」になってしまうケースが・・結構あるようです。
「空き家」は、老朽化すると危険ですし、土地の有効活用という点からも、国として放っておくわけにはいきません。
そこで、空き家売却を促進するため、「空き家売却時の3,000万円の特別控除」の特例という制度が新設されました。
1. 背景
従来から存在する「居住用財産売却時の3,000万円の特別控除の特例」は、譲渡する人が「居住している」必要があり、「空き家」を譲渡する場合は適用がありませんでした。
そこで、相続続や遺贈により取得した空き家家屋等を売却した場合でも、特別控除ができる制度として、「空き家売却時の3,000万円の特別控除の特例」が設けられました。
「居住用財産売却時の3000万円の特別控除の特例」と同様、家屋土地両方を譲渡する場合だけでなく、家屋を取り壊し&更地土地の譲渡の場合も、適用が認められています。
2. メリット・デメリット
メリット | デメリット |
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3. 要件
空き家家屋の要件 |
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譲渡価格 |
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譲渡期間 |
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(※)平成31年度税制改正により、平成31年4月1日以後の譲渡から、「老人ホームに入居していた一定の場合」も、特例の適用ができるようになりました(被相続人要介護認定要件あり)。ただし、空き家となる自宅に「本人以外」が居住していた場合は適用できないため、小規模宅地等の特例とは要件が異なる点、注意です。
4. 注意事項
(1) 土地と敷地をセットで相続した場合のみ
この特例は、家屋と敷地を「セットで相続取得した相続人だけ」が利用できます。
家屋と敷地を、別々の相続人が取得した場合は、適用できません。
(例)
ケース | 適用関係 |
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相続人のうち1人だけが家屋を相続した場合 |
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家屋or敷地は元々相続人が所有していて、今回敷地or家屋のいずれかだけ相続した場合 | 特例適用可能 |
(2) 耐震基準適合証明書等の入手(家屋を取り壊さない場合)
家屋を取り壊さず、そのまま譲渡する場合は、建物につき、一定の耐震基準を満たす必要があります。
耐震リフォームを行い、「耐震基準適合証明書」を取得する必要があります。
家屋の譲渡日前2年以内の調査終了等の要件があります。
(3) 解体工事の時期(家屋を取り壊して更地を売却する場合)
売主は、引渡までに家屋を取り壊しておく必要があります。(=更地状態で引渡)
したがって、例えば、古家つきで、家屋価額ゼロで引き渡す場合は、特例の適用はできません。
また、土地を譲渡した後に、建物の取り壊しやリフォームをしても、特例の適用が受けられない点にも注意しましょう。
(4) 相続財産を譲渡した場合の取得費特例との併用
「相続3年内取得費加算の特例」との併用はできません。
どちらかの選択適用となります。
(5) 譲渡対価が1億円を超えるかどうか?
この売却価格の判定は、かなり複雑です。
「共有」の場合は、合計で判定するなど、さまざまな細かい規定がありますので、留意しましょう
(租措法35-20)
5. 他の制度との併用
居住用財産に関連する「他の特例」との併用関係をまとめておきます。
居住用財産譲渡の3,000万特別控除 | 併用可(合わせて3,000万円まで) (租措法35条、みなす規定あり) |
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居住用財産の買い替え特例 | 併用不可(居住の用に供していないので) (租措法36条の2みなす規定なし) |
所有期間10年超軽減税率の特例 | 併用不可(居住の用に供していないため) (租措法31条の3みなす規定なし) |
相続財産譲渡時の取得費加算特例 | 併用不可 |
住宅ローン控除 | 併用可(空き家と別に自宅がある場合) |
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