JF087

 

 
マイホーム売却の際に利益が生じた場合、税務上は、前回お伝えした「居住用財産売却時の「3000万円特別控除の特例」のほか、「買い換え特例」という制度があります。



 
 

1. 買い換え特例って?

10年以上居住するマイホームを売却&新たにマイホームを買い換えた場合、一定条件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。
(租措法36の2)
 
201808_1-1



 
 

2. 注意事項

  • この制度は、課税が繰延されるというだけで、将来、買い換えたマイホームを売却した時点で、まとめて税金がかかります。
  • 「3000万の特別控除の特例」との併用はできません。
  • 旧マイホーム売却価額>新マイホーム購入価額の場合は、一部税金がかかります。



 
 

3. 買い換え時の譲渡所得の計算

旧マイホームの売却価格と新マイホームの取得価格のどちらが大きいか?によって、繰り延べられる税金の金額が変わってきます。



 
 

(1) 旧マイホーム売却価額≦新マイホーム買い換え価額の場合

既存マイホーム売却益にかかる所得税は全額繰り延べられ、旧マイホーム売却時点では課税されません。



 
 

(2) 旧マイホーム売却価額>新マイホーム買い換え価額の場合

この場合は、課税が一部繰り延べられます(=一部税金がかかる)
売却時の譲渡所得(=税金がかかる対象)は、以下の式で計算します。

収入金額 = 旧マイホーム売却価額 - 買い換え価額
取得費(※)=(売却した旧マイホームの取得費 + 譲渡費用)×(① ÷ 売却価額 )
譲渡所得(税金がかかる対象)=①-②

 
(※)収入から差し引ける金額



 
 

4. 事例

  • 簿価1,000の旧マイホームを、5,000で売却。譲渡費用はなしとする。
  • (1)新マイホームを、7,000で買い換え購入した場合
  • (2)新マイホームを、3,000で買い換え購入した場合



 
 

(1) (1)のケース(7,000で買い換え購入)

特例を利用しない場合 特例を利用した場合
所得 5,000 - 1,000 = 4,000 全額繰り延べられ、売却時の税金はゼロ
(左記の4,000は、将来に繰延)



 
 

(2) (2)のケース(3,000で買い換え購入)

特例を利用しない場合 特例を利用した場合
収入金額 5,000 5,000 – 3,000 = 2,000
(収入5,000のうち、3,000の収入は繰延)
取得費 1,000 1,000 × ( 2,000 ÷ 5,000 ) = 400
(費用1,000のうち、600の費用は繰延)
差引所得 4,000
(上記(1)と同じ)
2,000 – 400 = 1,600
(所得4,000のうち、2,400の所得は繰延)



 
 

5. 新マイホーム(買い換え資産)を将来売却した場合は?

  • 将来、買い換え資産を、「再売却」した場合をシミュレーションします。
  • 上記4と同じ事例で、買い換え特例を適用した資産を将来「8,000で再売却」した場合の、再売却時の所得は?
  • 再売却時に、新たなマイホームの買い換えは、ないものとする(=再売却時の買い換え特例はないということ)



 
 

(1) (1)のケース(7,000で買い換え購入+8,000円で将来売却)

特例を利用していなかった場合 特例を利用していた場合
収入金額 8,000 8,000
取得費 7,000 1,000(旧)+ 2,000(新)(※)= 3,000
差引所得 1,000 8,000 - 3,000 = 5,000
(買い替え時の繰延分4,000の実現含む)

(※)新マイホーム購入時の追加資金  7,000 - 5,000



 
 

(2) (2)のケース(3,000で買い換え購入+8,000円で将来売却)

特例を利用していなかった場合 特例を利用していた場合
収入金額 8,000 8,000(繰延分3,000の実現含む)
取得費 3,000 1,000 × 3,000 / 5,000 = 600
(繰延費用600の実現)
差引所得 5,000 8,000 - 600 = 7,400
(繰延分2,400の実現含む)



 
 

(3) まとめ

買い換え特例を利用した場合は、将来売却した際に、買い換え時に繰り延べた所得に対して税金がかかりますので、課税を繰り延べているだけというのがわかります。

ただし、将来再売却時点でも、買い替え後10年超等でマイホームを買い換えるなど、「買い換え特例の要件」を満たせば、さらに繰延は可能です。



 
 

6. 取得日は引き継がれる?

  • 買い換え特例を適用した場合、「旧マイホームの取得費」は買い換え資産に引き継がれますが、「取得日」は引き継がれません。
    つまり、「買い換えした日=新たな取得日」となります。
  • この影響は、買い換え後に、将来売却する場合に影響します。
    例えば、買い換え特例適用後、10年を経過しない時点で売却する場合は、居住期間10年超の軽減税率や、新たなマイホームに買い換え特例は利用できません。



 
 

7. 主な要件

旧マイホーム
  • 住まなくなって3年目の年の12月31日までに譲渡
  • 売った年の前年or前々年に、他の居住用財産の課税特例の適用を受けていない。
  • 譲渡年1月1日時点で、家屋&敷地所有期間がどちらも10年超
  • 居住期間10年以上
  • 売却相手が、配偶者や親族等特別な関係者ではないこと
  • 譲渡価格が1億円を超えないこと
新マイホーム
  • 建物の登記上面積50㎡以上。
    敷地の面積500㎡以下。
  • 売った年の前年1月から売った年翌年12月末まで(計3年間)に、買い換え資産を取得(売却翌年取得となる場合は、税務署承認が必要。
    買換え資産は、親族などからの取得も特例対象)
    (店舗兼用住宅の場合は、居住用部分のみの床面積で判定)
  • 売った年翌年の12月31日までに買い換え資産での居住開始
    (売却翌年取得の場合は、売却の翌々年の12月31日まで)



 
 

8. 他の特例制度との併用

居住用財産に関連する「他の特例」との併用関係を、まとめておきます。

居住用財産売却時の「3,000万円特別控除の特例」 併用不可
空き家売却時の3,000万特別控除 併用不可(居住の用に供していないので)
(租措法36条の2みなす規定なし)
所有期間10年超軽減税率の特例 併用不可
住宅ローン控除 原則併用不可(一定の年数につき)
  • 住宅ローン控除との併用は、原則併用できません(住宅ローン適用年&その前後2年ずつ(5年間)は適用不可)。
    ここは、3000万特別控除と同様です(租措法41)。

 

<< 前の記事「3,000万特別控除と買い換え特例はどちらが得?」次の記事「空き家売却時の「3000万円の特別控除」の特例って」 >>