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マイホームを譲渡する場合は、一般的に損失が生じるケースが多いですね。今回は、居住用不動産を売却した際に生じた「譲渡損失」の話をしますね。

1.損益通算・繰越控除

土地、建物の譲渡損失は、原則として、他の所得との「損益通算」や「繰越控除」が認められていません

損益通算??繰越控除??・・・聞きなれない言葉ですけど、まずこれらの言葉って・・いったいどんなものなんでしょう?

まずは、「損益通算」と「繰越控除」の内容からお話ししますね。


(1)損益通算って何?

みなさんが獲得する収入(所得)には、いろんな種類があります。
例えば、「給料収入」もあれば、「株式売却に伴う収入」など・・いろんな種類の収入がありますよね!
これらの収入(所得)に対応する「税金」はどうやって計算するんでしょうか?

実は・・所得税の計算は、原則として、これらの「所得ごとに税金を算定」します。
そして、各所得ごとに赤字だったり黒字だったりしたとしても、赤字と黒字を相殺することできません。
つまり、赤字と黒字の各所得を合算して「総所得を減らす(=税金を下げる)」ことは、原則的に認められていないんですね。

例えば、給料所得が黒字300万で、不動産譲渡が赤字100だったとしても・・300万―100万=200万とはならないんです。
うーん。。なんか損した気分ですね。

でも・・例外的に、黒字と赤字を通算できる場合が認められています。
これが、いわゆる「損益通算」と呼ばれるものです

 

(損益通算の例)
給与所得500万円の他、マイホーム売却による譲渡損失1,000万円がある場合

 

(イメージ図)

キャプチャ7-1

給与所得500万円から譲渡損失1,000万円を差し引くと、所得は・・

500万円 - 1,000万円 = △500万円

⇒所得がゼロなので、税額ももちろん「ゼロ」になります。

この場合、給与支払時に天引きされていた「所得税が全額還付」されます

損益通算ってすごい力ですね!


(2)繰越控除って何?

上記の「損益通算」の制度を使っても、使いきれなかった赤字がある場合、「赤字」を翌年以降に繰り越して、翌年以降の所得と相殺できる制度です。

先ほどの例だと、損益通算後の残り(譲渡損失500万円)は、この「繰越控除」の制度を使えば、翌年以降に繰り越すことで、翌年以降の所得と相殺ができます。

⇒つまり、翌年以降の税金を安くすることができる制度ですね!


2.居住用不動産の譲渡損失に関する特例

上記の、「損益通算」と「繰越控除」の制度を利用すると・・何となく税金を安くできるんだな!・・って所まではイメージできたと思います。

そして、ようやく本題ですが・・一定の居住用財産で生じた譲渡損失は、例外的に「損益通算」と「繰越控除」が認められているんですね。

居住用不動産=マイホームのことですね。

マイホームに関しては、次の二つの制度があります。
長い名前ですけど・・名前を覚える必要はありません。制度があることだけ知っていれば十分ですので!

①マイホームを買い替える時(買換え)

マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

②マイホームを買い替えない時(買換えなし)

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例


3.マイホームを買い替える時

(マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)

既存のマイホームを売却し、新たにマイホームを購入する場合に、旧マイホームの譲渡損失につき、他の所得(給与所得など)と「損益通算」することができる制度です。
また、「損益通算」しても控除しきれなかった「譲渡損失」が残る場合は、「繰越控除」をすることもできます。


(1) 主な要件

 

種類 要件
譲渡資産の要件
  • 所有期間5年超の居住用財産
 買換資産の要件
  • 床面積50㎡以上の居住用家屋の取得他
  • 買換資産を居住の用に供する、またはその見込
  • 買換資産に係る住宅借入金等あり償還期間10年以上
所得要件(繰越控除のみ)
  • 合計所得3,000万以下。超えた年度のみ×
申告要件
  • 損失が生じた年&その後連続して確定申告書を提出


(2)損益通算・繰越控除の額

特に制限はなく、「損失全額」となります。

(ただし、旧マイホームの敷地面積が500㎡を超える場合は、超える部分に対する譲渡損失については「繰越控除」の適用はできません。)


(3)留意事項

  • 旧マイホーム売却時に各種特例(長期譲渡所得の軽減税率、居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除等)を受けている場合は×です。
  • 親子や夫婦など「特別の関係がある人」にマイホームを売却した場合は、×です。
  • 住宅借入金等特別控除制度は併用可能です。なお、住宅ローン控除の適用は「入居年」から10年間です。「繰越控除」が使えなくなった年からではありません
  • 住宅ローン控除は、初年度のみ確定申告すれば、翌年以降「年末調整」可能ですが、当制度適用の場合は、「毎年確定申告しなければならない」点、注意しましょう。


4.マイホームを買い替えない時

(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)

買換えしない場合は、こちらの制度となります。

住宅ローンつきのマイホームを、「住宅ローン残高以下」で売却し、譲渡損失が生じたときは、他の所得(給与所得など)と「損益通算」することができる制度です。
また、損益通算で控除しきれなかった「譲渡損失」は、「繰越控除」することができる点は同様です。


(1)主な要件

 

種類 要件
譲渡資産要件
  • 所有期間が5年超の居住用財産
  • 譲渡資産に係る住宅借入金等あり償還期間10年以上
買換資産要件
  • 要件なし
所得要件(繰越控除のみ)
  • 合計所得3,000万以下。超えた年度のみ×
申告要件
  • 損失が生じた年&その後連続して確定申告書を提出


(2)損益通算・繰越控除の額

借入金残高-譲渡対価


(3)留意事項

  • 旧マイホーム売却時に各種特例(長期譲渡所得の軽減税率、居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除等)を受けている場合は×です。
  • 親子や夫婦など「特別の関係がある人」にマイホームを売却した場合は、×です。
  • 実際は、この特例を利用する方は少ないようです。
    住宅ローンには、一般的に金融機関の抵当権がついていますので、売却したくても、金融機関が「抵当権抹消」に応じてくれないケースが多いからかもしれません。

 

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