マイホーム買い換え特例の具体例
目次
- 1. 買い換え特例って?
- 2. 注意事項
- 3. 買い換え時の譲渡所得の計算
- 4. 事例
- 5. 新マイホーム(買い換え資産)を将来売却した場合は?
- 6. 取得日は引き継がれる?
- 7. 主な要件
- 8. 他の特例制度との併用
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マイホーム売却の際に利益が生じた場合、税務上は、前回お伝えした「居住用財産売却時の「3000万円特別控除の特例」のほか、「買い換え特例」という制度があります。
1. 買い換え特例って?
10年以上居住するマイホームを売却&新たにマイホームを買い換えた場合、一定条件のもと、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。
(租措法36の2)
2. 注意事項
- この制度は、課税が繰延されるというだけで、将来、買い換えたマイホームを売却した時点で、まとめて税金がかかります。
- 「3000万の特別控除の特例」との併用はできません。
- 旧マイホーム売却価額>新マイホーム購入価額の場合は、一部税金がかかります。
3. 買い換え時の譲渡所得の計算
旧マイホームの売却価格と新マイホームの取得価格のどちらが大きいか?によって、繰り延べられる税金の金額が変わってきます。
(1) 旧マイホーム売却価額≦新マイホーム買い換え価額の場合
既存マイホーム売却益にかかる所得税は全額繰り延べられ、旧マイホーム売却時点では課税されません。
(2) 旧マイホーム売却価額>新マイホーム買い換え価額の場合
この場合は、課税が一部繰り延べられます(=一部税金がかかる)
売却時の譲渡所得(=税金がかかる対象)は、以下の式で計算します。
②取得費(※)=(売却した旧マイホームの取得費 + 譲渡費用)×(① ÷ 売却価額 )
③譲渡所得(税金がかかる対象)=①-②
(※)収入から差し引ける金額
4. 事例
- 簿価1,000の旧マイホームを、5,000で売却。譲渡費用はなしとする。
- (1)新マイホームを、7,000で買い換え購入した場合
- (2)新マイホームを、3,000で買い換え購入した場合
(1) (1)のケース(7,000で買い換え購入)
特例を利用しない場合 | 特例を利用した場合 | |
---|---|---|
所得 | 5,000 - 1,000 = 4,000 | 全額繰り延べられ、売却時の税金はゼロ (左記の4,000は、将来に繰延) |
(2) (2)のケース(3,000で買い換え購入)
特例を利用しない場合 | 特例を利用した場合 | |
---|---|---|
収入金額 | 5,000 | 5,000 – 3,000 = 2,000 (収入5,000のうち、3,000の収入は繰延) |
取得費 | 1,000 | 1,000 × ( 2,000 ÷ 5,000 ) = 400 (費用1,000のうち、600の費用は繰延) |
差引所得 | 4,000 (上記(1)と同じ) |
2,000 – 400 = 1,600 (所得4,000のうち、2,400の所得は繰延) |
5. 新マイホーム(買い換え資産)を将来売却した場合は?
- 将来、買い換え資産を、「再売却」した場合をシミュレーションします。
- 上記4と同じ事例で、買い換え特例を適用した資産を将来「8,000で再売却」した場合の、再売却時の所得は?
- 再売却時に、新たなマイホームの買い換えは、ないものとする(=再売却時の買い換え特例はないということ)
(1) (1)のケース(7,000で買い換え購入+8,000円で将来売却)
特例を利用していなかった場合 | 特例を利用していた場合 | |
---|---|---|
収入金額 | 8,000 | 8,000 |
取得費 | 7,000 | 1,000(旧)+ 2,000(新)(※)= 3,000 |
差引所得 | 1,000 | 8,000 - 3,000 = 5,000 (買い替え時の繰延分4,000の実現含む) |
(※)新マイホーム購入時の追加資金 7,000 - 5,000
(2) (2)のケース(3,000で買い換え購入+8,000円で将来売却)
特例を利用していなかった場合 | 特例を利用していた場合 | |
---|---|---|
収入金額 | 8,000 | 8,000(繰延分3,000の実現含む) |
取得費 | 3,000 | 1,000 × 3,000 / 5,000 = 600 (繰延費用600の実現) |
差引所得 | 5,000 | 8,000 - 600 = 7,400 (繰延分2,400の実現含む) |
(3) まとめ
買い換え特例を利用した場合は、将来売却した際に、買い換え時に繰り延べた所得に対して税金がかかりますので、課税を繰り延べているだけというのがわかります。
ただし、将来再売却時点でも、買い替え後10年超等でマイホームを買い換えるなど、「買い換え特例の要件」を満たせば、さらに繰延は可能です。
6. 取得日は引き継がれる?
- 買い換え特例を適用した場合、「旧マイホームの取得費」は買い換え資産に引き継がれますが、「取得日」は引き継がれません。
つまり、「買い換えした日=新たな取得日」となります。 - この影響は、買い換え後に、将来売却する場合に影響します。
例えば、買い換え特例適用後、10年を経過しない時点で売却する場合は、居住期間10年超の軽減税率や、新たなマイホームに買い換え特例は利用できません。
7. 主な要件
旧マイホーム |
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---|---|
新マイホーム |
|
8. 他の特例制度との併用
居住用財産に関連する「他の特例」との併用関係を、まとめておきます。
居住用財産売却時の「3,000万円特別控除の特例」 | 併用不可 |
---|---|
空き家売却時の3,000万特別控除 | 併用不可(居住の用に供していないので) (租措法36条の2みなす規定なし) |
所有期間10年超軽減税率の特例 | 併用不可 |
住宅ローン控除 | 原則併用不可(一定の年数につき) |
- 住宅ローン控除との併用は、原則併用できません(住宅ローン適用年&その前後2年ずつ(5年間)は適用不可)。
ここは、3000万特別控除と同様です(租措法41)。
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