No209.確定拠出年金って?企業型DC・個人型DCの違い
確定拠出年金とは、老後の保障を目的とした年金制度の1つです。
毎月の支払額(拠出額)は決まっているが、運用・管理は個人に任されていて、運用結果に応じて、将来の給付額が変動する年金制度です。
目次
1. 確定拠出年金の特徴
(1) 特徴
将来の給付額 |
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税制優遇 |
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中途解約 | 原則、中途解約不可。年金資産は60歳まで引き出しができない(※) |
運用商品 | ①元本保証型(定期預金等)と②価格変動型(投資信託等) |
(※)60歳時点で「通算加入期間が10年未満」の場合、受給開始年齢が段階的に引き上げられます(65歳まで)
(2) 確定給付企業年金との違い
確定給付企業年金 (DB) |
確定拠出年金 (DC) |
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定義 | 将来受け取る給付額があらかじめ確定している年金制度 | 将来受け取る給付額は変動、拠出額があらかじめ確定している年金制度 |
運用主体 | 会社 | 従業員 |
将来の給付額 | 固定 | 変動 |
2. 確定拠出年金の種類は2つ(企業型DCと個人型DC)
確定拠出年金は、拠出(負担)する人が、企業か個人か?で大きく2種類に分かれます。
企業が拠出する制度は、企業型確定拠出年金(以下、「企業型DC」)、
個人が拠出する制度は、個人型確定拠出年金(以下「個人型DC」、通称iDeCo)と呼ばれます。
3. 企業型DCと個人型DCの違い
どちらも、①老後の保障的な年金制度、②運用主体は個人、という点では共通しています。
ただし、拠出者が会社、個人と異なりますので、それぞれの目的は少し異なります。
企業型DCは、従業員の福利厚生の一環とした「退職金目的」で利用されるのに対し、
個人型DCは、自分で自分の老後に備えるという「直接的な目的」で利用されます。
なお、企業型DCは、企業型DCを導入していない会社では、そもそも加入ができません。
企業型DCと個人型DCの主な違いは、以下の通りです。
企業型DC | 個人型DC | |
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運用 | 拠出した掛金の運用は、個人(自分自身)が行う | |
目的 | 福利厚生の一環(退職金支払目的) | 自分自身の老後に備えるため |
加入対象 | 企業型DC制度を採用する会社の従業員のみ (原則、全員加入) |
20歳以上60歳未満のすべての人 (自営業者等に限らず、すでにDB、DCに加入している会社員も加入可) |
掛金・納付方法 | 会社が負担・納付(※) | 個人が負担・納付 |
掛金の取扱い | ・会社のルールで拠出
・拠出金は法人の損金 |
・自分自身のルールで拠出
・拠出金は個人の所得控除 |
事務・管理費用 | 原則として会社負担(会社の規約で定める) | 個人が負担 |
受給権の発生 | 規約に基づく | 加入時から発生 |
金融機関の選択・運用商品 | 金融機関は会社が選択し、当該金融機関の商品から運用商品を選択(※) | 金融機関は自分で選択し、当該金融機関の商品から運用商品を選択 |
(※)企業型DCに加入していた従業員が転職等を行う場合、既に掛けていた年金資産を転職先の企業型DCや個人型DCに持ち出して、継続運用することも可能です。
4. 企業型DCを導入するメリット
最近は「企業型DC」を福利厚生の一環、あるいは退職金代わりとして導入する会社が増加しています。
企業型DCは、個人、企業どちらにとっても、メリットのある制度となります。
企業側 | 個人側 | |
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メリット |
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デメリット |
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5. マッチング拠出とは?
企業型DCを導入している会社では、「マッチング拠出」という制度が利用できます。
会社が拠出する掛金に加えて、従業員本人が上乗せ拠出を行い、一体運用できる制度です。
例えば、企業が負担する拠出金額が拠出限度額に満たない場合、「マッチング拠出」を活用して、限度余裕部分につき従業員本人が上乗せ拠出すれば、企業型DCを活用できる金額が多くなります。
要件 | 会社規約で「マッチング拠出」を導入していること |
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拠出限度額 | ①会社拠出掛金と同額、かつ②会社 + 従業員合計で拠出限度額まで |
メリット(個人) | 加入者による「上乗せ掛金」は全額所得控除の対象となる |
限界 | 「会社拠出掛金と同額まで」の制約があるため、会社拠出額がもともと少額の場合は、加入者による上乗せ掛金も結果的に少額になる |
強制ではない | 会社規約で「マッチング拠出」を定めても、強制されるものではない(従業員が任意に利用できる制度) |
6. 企業型DCと個人型DCの併用は?
2017年1月の法改正で、併用が可能になりました。
すなわち、「企業型DC加入者」でも「個人型DC」への加入が可能です。
(1) 併用のメリット
例えば、会社側の「企業型DC」の掛け金が少ない場合、「個人型DC」を併用することにより、確定拠出年金のメリットを最大限活かすことが可能になります。
(2) 留意事項
① 会社の規約が必要
併用するには、会社側の「企業年金規約」で企業型DCと個人型DCの併用が認められていることが必要です。
「企業年金規約」の変更は、労使の合意が必要であるため、現状では未対応の会社もあります。
② マッチング拠出を採用している場合は併用不可
企業型DCで「マッチング拠出」を採用している会社の場合は、個人型DCとの併用はできません。
とはいっても・・
そもそも「マッチング拠出」自体が個人型DCとの併用に近い制度ですので、実務上の弊害はないと思います。