CY088
 

 

法人が支払う「定期保険」と「第三分野保険」の税務上の取扱いが、2019年に大幅に改正され、従来認められていた損金算入限度額が大幅に減少することになりました。
今回は、そのうち、解約返戻金のある「定期保険」と「第三分野保険」の取扱いについてまとめます。

 

1. 定期保険・第三分野保険とは?

(1) 定期保険とは?

定期保険とは、人の死亡を保険事故とする生命保険の一種です。
定期保険の特徴は以下の通りです。

  • 掛け捨てのため、満期保険金がない。その代わりに、割安な保険料で手厚い保証が認められている。
  • 保障期間は一定期間で終了し、その間に支払事由に該当しなければ、保険金は支払われることなく、満期とともに保障も終了する。


 

(2) 第三分野保険とは?

第三分野保険とは、第一分野(人の生命の保障を行う生命保険)、第二分野(予期せぬ災害等の損害保険)、以外の保険全般をさします。
例えば、病気やけがをした場合の医療保険やがん保険、所得補償、介護保険などが代表例となります。


 

2. 解約返戻金がある定期保険等の税務上の取扱い
(多額の前払保険料が含まれる場合)

定期保険等でも、中途解約した際に「解約返戻金」が生じる商品の場合、将来返戻される部分については「資産性」があります。そのため、今回の改正により、支払保険料につき、その「資産性」に応じた「損金算入限度額」が設けられました。将来の「解約返戻率」に応じた「損金算入限度額」が定められています。


 

(1) 保険期間3年以上及び最高解約返戻率が50%超の商品

最高解約返戻率 資産計上期間 資産計上額 資産取崩期間
50%超70%以下(※1) 保険期間当初40%の期間経過日まで 当期分支払保険料 × 40% 保険期間当初75%の期間経過後から、保険期間終了日まで
70%超85%以下 当期分支払保険料 × 60%
85%超 下記①②のいずれか長い期間まで(※2)
① 開始日から、最高解約返戻率となる期間終了日まで
② 上記①の期間経過後、「
(当期解約返戻金相当額-前年解約返戻金相当額)/年換算保険料相当額(※4)が70%」を超える期間
開始日から、10年経過日まで 当期分支払手数料 × 最高解約返戻率の90% 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間経過後(※3)から、保険期間終了日まで
11年目以降 当期分支払保険料 × 最高解約返戻率の70%

 
(※1)最高解約返戻率が50%越70%以下のもののうち、一被保険者当たり年換算保険料相当額が30万円以下のものは、例外的に、支払時に全額損金算入が認められています。
(※2)5年未満・10年未満になった場合は、資産計上期間の例外があります。

資産計上期間
5年未満 保険期間当初から5年経過日まで
10年未満 保険期間開当初50%期間経過日まで

(※3)上記(※2)に該当する場合は、(※2)記載の資産計上期間
(※4)年換算保険料相当額 = その保険の保険料総額 ÷ 保険期間年数
 
なお、保険期間が「終身」となっている第三分野保険にかかる「計算上の保険期間」は、保険期間開始日から116歳に達する日までとなります。


 

(2) 保険期間3年未満及び最高解約返戻率が50%以下の商品

支払時に全額損金算入できます。
なお、解約返戻金のない短期払の定期保険及び第三分野保険にかかる「支払保険料」は、原則として、期間の経過に応じて損金に算入します(役員等「特定の使用人」のみを被保険者とする場合は給与)。
こちらについては、次回ご紹介します。


 

3. 具体例

  • 3月決算法人
  • 2020年4月1日に定期保険に加入(中途解約返戻金あり)
  • 保険終了期間 2040年3月31日(20年)
  • 保険料 毎月50千円(年間600千円)
  • 最高解約返戻率は、2028年3月末60%(解約返戻金288万円)


 

(1) 各年度の税務処理(満期まで解約しない場合)

(単位:千円)
決算年度 借方 貸方
2021/3 ~ 2028/3
(1~8年目) (※1) 
保険積立金(資産) 240 普通預金 600
支払保険料(経費) 360
2029/3 ~ 2035/3
(9~15年目) (※2)
支払保険料(経費) 600 普通預金 600
2036/3 ~ 2040/3
(16~20年目) (※3)
支払保険料(経費) 600 普通預金 600
支払保険料(経費) 384 保険積立金(資産) 384

(※1)保険期間20年のうち、40%経過期間(8年目)までは、年間保険料600 千円 × 40% = 240千円を「資産」で積み立てます。科目は「前払費用」でも問題ありません。
(※2)保険期間40%~75%経過期間(9~15年目)までは、支払額全額が損金になります。
(※3)保険期間75%経過後(16~20年目)は、支払額全額が損金になるだけでなく、8年目までに積立てた資産(保険積立金)を取り崩していきます。
8年目までの積立額は、240千円 × 8年 = 1,920千円。
1,920千円 ÷ 5年 = 384千円
 

(損金算入額のイメージ)

200412creabiz1


 

(2) 中途解約した場合

2028年3月末に中途解約し、解約返戻金288万円が入金されたとします。
この場合、過去に積み立てていた「資産」を取り崩し、差額は収入計上します。

(単位:千円)
借方 貸方
2028/3 普通預金 2,880 保険積立金 1,920
雑収入 960

240千円 × 8年(払込済期間の資産計上額)= 1,920千円


 

4. まとめ

定期保険等でも、解約返戻率が高い商品であれば、将来、払い込んだ保険料と同額に近い返戻金を受け取れる場合もあります。しかし、今回の制度改正により、解約返戻率が高いものほど、支払時の「損金算入限度額」が少なくなりましたので、従来ほどの課税メリットはなくなりました。
 
なお、将来の解約返戻金には課税されますので、保険支払にかかる税金へのインパクトは、節税というよりも、単に課税を繰り延べているにすぎません。
将来返戻時の出口戦略も踏まえて検討が必要な点、ご留意ください。



 

5. 参照URL

(保険料等)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm

(定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ )

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/teikihoken_FAQ/index.htm

 

<< 前の記事「解約返戻金のない医療保険等の税務処理」次の記事「養老保険のパターンと税務処理」 >>