No132.【内国法人と外国法人】日本支店と日本法人で「法人税納税義務」に違いは?PEの有無とは?消費税の取扱いは?
個人の所得税に関しては、「居住者」と「非居住者」の区分で所得税の課税範囲が異なります。
一方、法人の場合は、法人税に関して、「内国法人」「外国法人」の区分が非常に重要となります。
なぜなら、内国法人は「居住地国課税」、外国法人は「源泉地国課税」の課税方式となり、課税範囲が大きく異なってくるからです。
1. 内国法人・外国法人とは?
(1)内国法人・外国法人とは?
内国法人とは? | 国内に「本店または主たる事務所」がある法人 |
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外国法人とは? | 上記「内国法人」以外の法人 |
(2)具体例
内国法人 | 外国法人 |
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【イメージ 法人の場合】
個人の場合は、「住所」や「居所」で判断されましたが、法人の場合は、本店の所在地がどこにあるか?が重要となります(本店所在地主義)
2. 課税の範囲
内国法人・外国法人の「課税範囲」をまとめると、以下の通りとなります
内国法人は、国内のみでなく、外国で稼いだ所得も含めてすべて日本で課税されます(全世界所得課税)。例えば、内国法人の場合は、海外支店を通じて外国で稼いだ所得も日本で課税されます。一方で、外国法人は、日本国内において生じた所得(国内源泉所得)のみ課税されます。
内国法人 | 国内外を問わず、すべての所得に対して課税 「全世界所得課税」(無制限納税義務者) |
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外国法人 | 日本国内において生じた所得(国内源泉所得)のみ課税。 (制限納税義務者) |
ただし、内国法人は、海外現地でも外国税が課税されますので、日本と海外の二重課税となります。したがって、二重課税排除のため「外国税額控除」という制度が設けられています。
3. 外国法人の「国内源泉所得」の課税範囲
まず、海外親会社がある「日本子会社」は、法人税法上、内国法人として取り扱われます。他の日本の内国法人と法人税の確定申告と異なることはありません。一方、外国法人の日本支店は、外国法人となりますので、国内源泉所得の範囲が論点となります。
この点。外国法人の国内源泉所得の範囲は、外国法人が日本国内に恒久的施設(PE)を有しているかどうかで異なります(法法141条)。「恒久的施設」とは、物理的な事務所や支店、工場等「事業を行う一定の場所」のことです。
(1)PE(支店等)がある場合
下記の所得がある場合は、日本国内での法人税申告書の提出、納税義務が生じます。
① | 国内PEを通じて(帰属して)行う事業の所得(法法138条1項1号) |
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② | 国内PEを通じない一定の所得(国内資産の運用・保有、国内資産の譲渡、国内での人的役務の提供、国内不動産等の貸付その他 法法138条1項2号~6号) |
逆にいうと、PEに帰属しない事業所得は「課税」されません。あまりないと思いますが、例えば、外国法人の海外本店が、日本支店を通さずに、日本国内で商品を販売した場合などは課税されません。
「上記2区分」は別々の課税標準として取り扱われますので、2区分間での損益通算はできません。
(2)PEがない場合
上記のうち②だけが課税されます。つまり、PEがなければ、たとえ事業を行っていても「事業所得」に課税されることはありません。一方で、法人税には源泉徴収の制度がありませんので、②の取引がある場合は、法人税申告書を税務署に提出しなければいけないケースがあります。
(3)外国法人の国内源泉所得の課税範囲まとめ
また、「上記2区分」は別々の課税標準として取り扱われますので、2区分間での損益通算などもできません。
種類 | PE | 内容 | PEあり | PEなし |
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1号所得 | PE帰属所得 | PEに帰せられる所得 | 課税 | 非課税 |
2号所得 | PE非帰属 所得 |
国内資産の運用又は保有による所得 | 課税 | 課税 |
3号所得 | 国内資産の譲渡による所得 | 課税 | 課税 | |
4号所得 | 国内での人的役務の提供事業の所得 | 課税 | 課税 | |
5号所得 | 国内不動産の貸付による所得 | 課税 | 課税 | |
6号所得 | その他の国内源泉所得 | 課税 | 課税 |
4. 外国法人の海外取引の文書化
国内にPEを有する外国法人(外国法人日本支店等)や、国外PEを有する内国法人は、税務上、PE帰属所得を算定する根拠資料として、PE帰属取引や内部取引に係る文書化の義務があります。
5. 外国法人の消費税の納税義務
外国法人であっても、日本において、消費税納税義務の4要件を満たす場合は、日本で消費税納税義務が生じます。通常は日本支店等を設けて日本国内で事業を行っている場合が想定されますが、法令上は日本国内に支店等の有無に係わらず判定を行うこととされています。
ただし、消費税の納税義務判定(基準期間がない法人の納税義務の免除の特例)で、日本国内での登記上の資本金等で判定する特殊な規定がある点、注意が必要です。
6. (ご参考)PEの範囲
国内法においては、次の3つの形態に区分されています。
従来は、当区分に基づいて課税対象が決められていましたが、H26年「帰属主義」への改正により、課税論点上は、下記3区分の重要性はなくなりました(PEの種類や定義は、改正による変更はありません)。
種類 | 定義 | 含まれないもの | |
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(1) | 支店PE (※1) |
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(2) | 建設PE |
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(3) | 代理人PE (※2) |
非居住者のために、その事業に関し契約を結ぶ権限のある者で
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(※1)販売を伴う場合は、PEとみなされる場合が多いです。
(※2)国外製造子会社が親会社名で「販売契約」を締結した場合、代理人PEとみなされる場合もあります。
恒久的施設の有無は、形式的ではなく「機能的な側面を重視」して判定を行います。
例えば、国税庁HPでは、事業活動の拠点となっているホテルの一室は、恒久的施設に該当しますが、「単なる製品の貯蔵庫」は恒久的施設に該当しないことが例示されています。
7. 参照URL
(外国法人の消費税納税義務免除の判定)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/22/02.htm