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外国法人等が日本で得た収益については、日本国内で課税されますが、課税漏れを防ぐ観点から、支払側の国内企業に、一定額を源泉徴収することが義務付けられています。
今回は、海外にロイヤリティ(ライセンスフィー・ソフトウェア使用料等)、コンサルティングフィーを支払う場合の「源泉徴収」の可否につき解説します。

1. 源泉徴収の対象となる海外支払ロイヤリティ取引等とは?

(1) 日本で所得が発生している場合のみ

海外ロイヤリティ支払取引のすべてが「源泉徴収」の対象になるわけではありません。外国法人等に、日本で何らかの所得(国内源泉所得)が発生していると「判断された」場合に、日本の税金が発生し、源泉徴収が必要となります。
あくまで、源泉徴収額は、外国法人等が負担する税金です。

 

(2) 「国内源泉所得」発生の判断基準

外国法人等に関しては、日本の税法では、①国内で使用(使用地主義)or②国内で役務提供がある場合に「国内源泉所得」が発生するという考え方を採用しています。
例えば、特許権等の使用場所や、コンサルティング業務の人的役務提供が「日本国内」であれば、「日本国内で所得が発生」し、源泉徴収が必要となります。

「国内源泉所得」発生の判断基準

 

2. 海外への「使用料支払」にかかる源泉徴収

外国法人等へのライセンスフィー・ソフトウェア使用料のうち、①所得税上の「使用料」に該当し、②国内業務の用に使用されていれば、原則として、支払時に20.42%を源泉徴収しなければいけません。所得税法上の「使用料」は、以下の3つを指します(所161条11項・所基通161-33~35、所施令284)。

種類 具体例
● 工業所有権
● 上記以外の技術に関する権利・生産方式等(ノウハウ・デザイン等)
● 特許権、実用新案権、意匠権、商標権の工業所有権及びその実施権等
● ライセンスフィー、ロゴマーク使用料等
著作権(出版権及び著作隣接権その他) ● 著作物の複製、上演、演奏、放送、展示、上映、翻訳、編曲、脚色、映画化その他著作物の利用又は出版権の設定につき支払を受ける一切の対価
● ソフトウェア利用料(著作権使用分のみ)
機械、装置その他政令で定める用具(※) 車両運搬具、工具器具備品の使用料

(※)不動産賃貸料は、上記の「使用料」には含まれず、所得税法161条7項の「貸付」として、別途、源泉徴収の対象となります。

 

【ご参考~ロイヤリティとは?~】
一般的に「ロイヤリティ」という単語は、特許権、商標権等の知的財産、ノウハウ等の技術、ソフトウェア等の著作権を、他に使用許諾する場合に発生する「使用料」全体のことを指します、つまり、上記表中の①、②を総称して、「ロイヤリティ支払」と呼ばれます。

 

3. ソフトウェア利用料の源泉徴収の可否

(1) 著作権の使用料とは?

上記のとおり、「著作権の使用料」については「源泉徴収」が必要となりますが、「著作権の使用」に、「ソフトウェア利用料」が含まれるのか?という論点があります。
一般的に、源泉徴収の対象となる「著作権の使用料」は、著作権法に基づく「著作権」が及ぶかどうか、という観点で判断します。
著作とは、「著作」に対して、第三者に禁止される行為(著作権法21条~27 条)です。複製権、上演・演奏権、上映権、公衆送信権等、 口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻訳・翻案権に限定されています。

 

(2) 「著作権」と「著作物」

実は「著作」と「著作」は、概念が異なります。「著作」は、「著作」のうち第三者に禁止される行為であり、禁止行為以外に「著作」を使用することは自由です。「著作権」と「著作物」の関係を図示すると、以下の通りです。

「著作権」と「著作物」

上記のうち、源泉徴収の必要があるのは、「著作」の使用すべてでははなく、そのうち、「著作の使用」の対価として支払うものに限定されます。

 

(3) ソフトウェアの利用料は?

ソフトウェアに含まれるプログラムは「著作」(著作権法10条1項9号)となります。ただし、ソフトウェアを「使用する」こと自体は、著作権法21条~27条に規定される「著作権」で禁止されるものではありません。したがって、一般的なソフトウェアの使用許諾契約は、源泉徴収の対象とはならないと考えられています(=使用許諾契約に違反しても、著作権の侵害にはならない)。

 

(4) ソフトウェア関係の実務上の判断

これまでの判例等をもとに、実務上、ソフトウェア関連取引にかかる「源泉徴収可否」の判断をまとめると、以下の通りとなります。

取引 源泉徴収 区分 理由
ビジネスソフトパッケージの購入・インストール 不要 著作の利用
(=本を読む行為)
自らのPCへのインストールは権利者の許可なく行えるため、「著作権の使用料」に該当しない(物の売買⇒1号所得に該当)。
オンライン取引によるビジネスソフトのダウンロード
(有償の場合のみ)
必要 著作の利用
(=本を複写する行為)
権利者の許可を必要とする「複製行為」に該当。

経済実態としては、ビジネスソフトの購入とダウンロードは大きな違いがないものの、課税実務上は、「ダウンロード」については、源泉徴収を要する判断のようです(著作権法第47条の3第1項)。

 

4. コンサルティングフィーは?

ロイヤリティ支払と似た取引として、「コンサルティングフィー」があります。
外国法人等へのコンサルティングフィー支払のうち、①所得税上の「人的役務の提供」に該当し、②国内で役務提供を受ける部分は、原則として、支払時に20.42%を源泉徴収しなければいけません。所得税法上の「人的役務の提供」は、以下の3つを指します。
(所得税法161条6項・所基通161-19~、所施令282)

映画・演劇の俳優・音楽家・その他の芸能人or職業運動家の役務の提供 アマチュア、ノンプロ等でも、報酬を受ける場合は含まれる。
弁護士・公認会計士・建築士・その他の自由職業者の役務の提供 これらの者の事務補助者を伴った役務提供は、給与源泉報酬に該当(法第161条第1項第12号イ)
科学技術・経営管理その他の分野に関する専門的知識・特別技能等を活用した役務の提供 以下を目的とした「技術者等派遣行為」は除く
● 機械設備の販売業者当該機械設備の据付け
● 工業所有権、ノウハウ等の権利者の権利の実施

【ご参考~ロイヤリティとコンサルティングフィーの違い】
ロイヤリティ支払は、無形資産・情報の「使用料」ですが、コンサルティングフィーは、「役務(技術)提供の対価」となり、源泉徴収の根拠条文が異なります。

所得税法161条6項
六 国内において人的役務の提供を主たる内容とする事業で政令で定めるものを行う者が受ける当該人的役務の提供に係る対価

なお、ライセンスフィーと同様、日本国内で役務が提供されない場合は、原則として源泉徴収の必要はありません。例えば、海外市場調査のため、現地在住コンサルタントと、現地駐在員のミーティングは「源泉徴収対象外」です。一方、コンサルタントが来日して仕事をする場合は、源泉徴収が必要となります。

 

5. 外国法人に日本支店がある場合

外国法人の申請に基づき、税務署から「源泉徴収の免除証明書」が発行された場合は、報酬の支払者は、源泉徴収の義務が免除される例外規定があります。

 

6. 源泉徴収税率と租税条約

源泉徴収税率は、取引ごとに税率が定められています(10.21%~20.42%)。ただし、支払う相手国により、別途租税条約」で上限税率が定められている場合があります。「租税条約」は、国内法に優先されるため、租税条約の上限税率が適用されます
例えば、国内法ではロイヤリティ支払「源泉所得税率」は、20.42%と定められていますが、上限税率10%の相手先や、一律免税とする租税条約締結国もあります(アメリカ、イギリス、オランダ、スイス、スウェーデン、ドイツ、フランス)。
一方、「人的役務の提供・コンサルティングフィー」は、制限税率がかからない国もあるようです。
なお、ライセンス等の使用や、人的役務の提供が「国外」の場合、国内法では源泉徴収の対象外となりますが、「租税条約」の定めにより、例外的に源泉徴収が必要となるケースもありますのでご留意ください(インド・パキスタン等)。

 

7. 参照URL

使用料等の所得(第11号関係)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/22/04.htm

人的役務提供事業の所得(第6号関係)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/22/02.htm

著作権法 21条~27条

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048

 

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