No265 【教育訓練給付金】種類は3種類・支給要件・支給額は?失業手当との関係は? /失業中の方がもらえる「教育給付支援給付金」とは?

働きながら学校に通う場合や、再就職を目指して資格取得される場合など、一定の「職業教育訓練」を受ける方に対して、学費の一部が支給される制度があります。
教育訓練給付金(雇用保険法)という制度です。
今回は、「教育訓練給付金」の内容や支給要件、支給額、失業手当との関係等を中心にお伝えします
1. 教育訓練給付金の種類は3種類
「教育訓練給付金」は、雇用の安定や就職の促進を目的とした制度で、活用することで、自己負担を軽減しながらキャリアアップを目指すことが可能です。厚生労働大臣が指定した講座数は、およそ15,000種類もあり、通学に限らず、通信や夜間講座など、さまざまな「教育訓練」が対象となります。
大きく、①一般教育訓練②特定一般教育訓練③専門実践教育訓練の3つに区分されます。以下の通りです。
| 種類 | 内容 | 具体例 | |
|---|---|---|---|
| ① | 一般教育訓練 | 雇用の安定及び就職の促進を図るための一般的な職業訓練(下記②③以外) | MOS検定、日商簿記、TOEIC、Webクリエイター、ビジネスPCスキル、建築CAD、インテリアコーディネーター、英語・中国語検定 | 
| ② | 特定一般教育訓練 | 速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練 | 介護職員初任者研修、ケアマネージャー実務、実務者研修、基本情報技術者、宅建士、FP・調理師・大型免許 | 
| ③ | 専門実践教育訓練 | 中長期的なキャリア形成に資する専門的かつ実践的な教育訓練 | 看護師・介護福祉士・美容師・歯科衛生士・保育士養成、専門学校の職業実践課程、法科大学院、AI/データサイエンス講座 | 
2. 支給要件
(1) 支給要件
「教育訓練給付金」の支給要件は、以下の通りです。
(以下、教育訓練開始日=「基準日」と略します)
| ① | 支給対象者 | 基準日時点で、以下のいずれかに該当 ● 雇用保険上の一般被保険者又は高年齢被保険者(65歳以上の者) ● 上記以外の方で、雇用保険上の一般被保険者であった日から、1年内の方(※) | 
|---|---|---|
| ② | 基準日までの雇用保険の被保険者期間 (支給要件期間)(※) | 基準日時点で、以下に該当 (初めて利用) (過去に利用したことがある) | 
| ③ | 修了要件 | ● 教育訓練終了後、指定教育訓練実施者が発行する「証明書」を提出 | 
(※)妊娠・出産・育児・疾病・負傷その他の理由がある場合は、ハローワークへの申出により、「最大20年以内」に延長が可能。
(2) アルバイトもOK・支給要件期間は通算期間でOK
雇用保険に加入していれば、正規・非正規は問わず、アルバイトの方も支給可能です。また、「支給要件期間」の「被保険者期間」は、連続して同じ会社に勤めている必要はなく、転職した場合でも、加入期間の通算期間が3年(初めての場合は1年、2年)以上あれば要件を満たします。
ただし、「支給要件期間」については、以下の注意点があります。
● 転職の際、途中の空白期間が1年以上空く場合は、それ以前の期間についてはリセットされ、「支給要件期間」として通算できません。
● 過去に教育訓練給付金を受給したことがある場合、過去の訓練の受講開始日以前の被保険者期間は、「支給要件期間」として通算できません(=過去の受講開始日以降、3年以上必要)。
(3) 失業手当との関係は?
失業手当は制度が異なりますので、失業手当を受給している場合でも、教育訓練給付金は受給可能です(ただし、後述の「教育訓練支援給付金」は、同時支給不可)。
3. 支給額
支給額や上限額は、各教育訓練の種類によって異なります。以下のとおりです(長期専門実践教育訓練の場合は、4年のケースあり)。
(1) 原則的な支給額
それぞれの支給額は、以下の通りです。
| 一般教育訓練 | 教育訓練受講費用等 × 20% (上限10万円) | 
|---|---|
| 特定一般教育訓練 | 教育訓練受講費用等 × 40% (上限20万円) | 
| 専門実践教育訓練 | 教育訓練受講費用等 × 50% (年間上限40万円) 最大3年間 上限 120万円 | 
「教育訓練受講費用等」とは、入学料及び受講料を指しますが、受講開始前1年以内に受けたキャリアコンサルティング費用も含まれます(上限2万円)。
なお、一般教育訓練の期間が1年超の場合でも、「1年分の受講料」が対象です。
(2) 追加支給額
上記の他、「特定一般教育訓練」及び「専門実践教育訓練」については、追加要件を満たせば、「追加支給額」が認められます(一般教育訓練の追加支給はありません)。下記の額を上限に、差額が支給されます。
| 追加要件 | 上限額 | |
|---|---|---|
| 特定一般 教育訓練 | 訓練修了後、資格取得等をし、かつ、1年以内に雇用 | 教育訓練受講費用×50%まで (上限25万円) | 
| 専門実践 教育訓練 | 訓練修了後、資格取得等をし、かつ、1年以内に雇用 | 教育訓練受講費用×70%まで (年間上限56万円) (最大3年間 上限 168万円) | 
| 上記雇用後、賃金が、受講開始前と比較して5%以上上昇 | 教育訓練受講費用×80%まで (年間上限64万円) (最大3年間 上限 192万円) | 
【まとめ】
| 対象 | 状況 | 支給要件 | 支給率 | 支給上限 | 
|---|---|---|---|---|
| 一般教育訓練 | 訓練終了 | 3年以上(初回1年) | 20% | 10万円 | 
| 特定一般 教育訓練 | 訓練終了 | 3年以上(初回1年) | 40% | 20万円 | 
| +資格取得・雇用 | 50% | 25万円 | ||
| 専門実践 教育訓練 | 訓練終了 | 3年以上(初回2年) | 50% | 年間40万円 (3年総額120万円) | 
| +資格取得・雇用 | 70% | 年間56万円 (3年総額168万円) | ||
| +賃金上昇 | 80% | 年間64万円 (3年総額192万円) | 
(3) 支給対象外となる場合
一般教育訓練・特定一般教育訓練・専門実践教育訓練、いずれの場合も、合計支給額が4,000円を超えない場合又は基準日前3年内に教育訓練給付金を受けたことがあるときは、教育訓練給付金は支給されません。
4. 申請手続・申請時期
(1) 一般教育訓練
一般教育訓練の場合、事前申請は特にありません。
訓練終了後、1か月以内に以下の書類をハローワークに提出します。
【必要な書類】
● 一般教育訓練修了証明書
● 受講費用の領収書もしくはクレジット契約証明書
(2) 特定一般教育訓練・専門実践教育訓練
【訓練開始前】
● 事前に、ハローワークの「訓練対応キャリアコンサルタント」によるキャリアコンサルティングを受け、「ジョブ・カード」の交付を受けます。
● 受講開始日の2週間前までに、ハローワークで受給資格確認の手続を行います(受給資格確認票・ジョブカードの提出)。
 
【訓練終了後】
訓練終了後、ハローワークに支給申請します。特定一般教育訓練は、訓練終了後に申請手続を行いますが、専門実践教育訓練については、6か月ごとの単位で支給申請を行います。
 
なお、支給申請に係る期限・提出書類は教育訓練ごとにより異なります。詳細は、厚生労働HP「教育訓練給付金の支給申請手続き」をご確認ください。
5. 教育訓練支援給付金とは?
「教育訓練給付金」とは別に、「教育訓練支援給付金」という制度もあります。
失業中の方が、「専門実践教育訓練」を受給する場合に支給される支援金です。
受講期間中、基本手当(失業手当の日額)の60%相当額が支給されます。
(1) 支給要件
主な要件は、以下の通りです。
② 受講開始日に45歳未満であること。
③ 受給資格確認時に失業状態で、基本手当(失業手当)の受給資格があること。
④ 離職後1年以内(適用対象期間の延長がある場合は、最大4年以内)。
⑤ 受講する専門実践教育訓練が、通信制又は夜間制でないこと。
⑥ 過去に教育訓練給付金を受けたことがないこと。
(2) 失業手当と同時受給は不可
「失業手当」と「教育訓練支援給付金」は、同時に受給することはできません。失業手当の受給資格がある場合、まず、失業手当が優先して支給されます。失業手当の給付期間が終了した後に、「教育訓練支援給付金」が支給されます。逆に言うと、失業手当の期間終了後も、「教育訓練支援給付金」をもらいながら、教育訓練を受講することが可能、ということになります。
(3) 支給額
支給額は、以下の式で計算します。
【基本手当日額とは】
離職前6カ月間に支払われた「賃金平均」をもとに算定します。
 
【支給日数とは】
専門実践教育訓練受講日のうち、ハローワークで「失業認定」を受けた日数。2か月ごと(支給単位期間)に認定され、支給日数が確定します。
なお、原則として、出席率が「8割未満」の場合は支給されず、欠席日は支給されません(支給単位期間ごと)。
(4) 申請手続
【訓練開始前】
受講開始日の2週間前までに、ハローワークで受給資格確認の手続を行います(「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格者証」)。
 
【訓練開始後】
訓練受講開始日から2か月ごと(支給単位期間)に、ハローワークにて支給単位期間に係る「失業の認定」を受けます。支給申請書の他、「教育訓練支援給付金受講証明書」等を提出します。
6. 失業手当が早くもらえるメリットも
正当な理由のない自己都合退職による失業の場合、1~3か月間、基本手当(失業手当)を受給することができません(給付制限期間と呼ばれます)。ただし、離職後、再教育やスキルアップのために、「教育訓練」を受ける場合、7日間の待期期間終了後、すぐに「基本手当」を受け取ることが可能です(重責解雇は除く)。
つまり、教育訓練の受講は、「教育訓練給付金」だけではなく、通常よりも早く「失業手当」がもらえるメリットがある、ということになります。
7. 参照URL
教育訓練給付制度|厚生労働省
教育訓練給付金の支給申請手続きについて|厚生労働省
ハローワークインターネットサービス
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_education.html
8. Youtube







